領域 |
午前科目 |
分析 |
領域I
人間と社会 |
人間の尊厳と自立 |
「人間の尊厳と自立」は、昨年と同様、2問の出題で、1問は、短文事例問題であり、昨年のように生活全体を視野に入れた支援のあり方を問う問題ではなく、権利擁護(advocacy)と人権尊重に関する出題で、事例からどのような感染症かを問う問題となっている。もう1問は、介護福祉士が業務を行うことを明示した法律に関する出題で、「社会福祉士及び介護福祉士法」第44条の2(誠実義務)に明記されており、昨年と同様に「社会福祉士及び介護福祉士法」の基本の理解に関する出題となっている。「社会福祉士及び介護福祉士法」の内容を理解していれば解ける問題である。
総じて、昨年のような実務レベルでの出題ではなく、知識を問う問題となっていると言える。毎日の生活の中で、「人間の尊厳と自立」に関する話題に興味を持って勉強していれば解ける問題である。
|
人間関係と
コミュニケーション |
「人間関係とコミュニケ―ション」2問の内容を見ると、昨年のように対人援助の基本姿勢を問う問題ではなく、出題基準の中項目「コミュニケーションの技法」から出題されている。1問は、コミュニケーションを促す場面づくりに関する出題で、コミュニケーションを促進する方法を理解していれば解ける問題である。もう1問は、介護実践の場における具体的な対応に関する短文事例問題であり、「感情の反射」に関する出題となっている。「コミュニケーションの技法と実際」に関する各種技法を理解していれば解ける問題である。
総じて、新たな概念を問うような出題もなく、介護実践の場で活用できる応用的な問題といえる。テキストを中心に、介護福祉士が実際の場面で具体的に取るべき行動や対応をイメージしながら勉強をしていれば、十分に答えられる内容である。
|
社会の理解 |
問題数は昨年と同様の12問であり、生活と福祉から2問、社会保障制度から2問、介護保険と障害者自立支援制度から5問、日常生活自立支援事業、権利擁護、精神保健福祉法などを問う問題が1問ずつ出題されていた。昨年と比較すると、生活と福祉からの出題数は同じだが、社会福祉に関する問題がなく介護保険に関する問題が1問から3問に増え、文章を読ませる問題が2問から1問へ減っていた。
傾向として、言葉の意味や生活と社会福祉の関係、社会保障、福祉関連法に関する幅広い知識が求められる。問題14の日常生活自立支援事業の実施主体は主に都道府県社会福祉協議会や指定都市社会福祉協議会だが、一部事業を市区町村社会福祉協議会に委託し実施しているという細かなところ問うているが、選択肢を見れば容易に解ける問題である。
|
領域II
介護 |
介護の基本 |
介護の歴史、社会福祉士及び介護福祉士法、自立支援・個別ケア、ICF、リハビリテーション、高齢者のくらし、介護保険のサービス、労働安全、地域連携、介護サービス、身体拘束、感染対策等の出題であった。また、問題文すべてが、「正しいもの」・「適切なもの」・「最も適切なもの」を選びなさいであり、近年減少傾向になっていたが、「誤っているもの」を選ぶ問題は出題されなかった。
問題の内容:全体的に知識を問う問題が中心であり、その知識も応用的なものではなく基本を問うレベルと言える。例としてICFの問題では、「背景因子」を選ぶ問題であり、基本的な知識を持っていることで、十分択一できた。この傾向は他の問題も同様であり、科目特徴上範囲が広範であるため、難易度は決して高くないが、幅広い知識が求められた試験であった。また、3問短文事例問題があり、「最も適切なもの」を選択する問題であった。考え方としては、基本的な知識があれば、5つの選択肢の3つがほとんど消去される問題であり、その後、再度事例情報を統合することで、最終的には択一できたと思う。
|
コミュニケーション
技術 |
「コミュニケーション技術」8問の内容を見ると、昨年出題されなかった「利用者・家族との関係づくり」から1問、及び「利用者・家族とのコミュニケーションの実際」から2問出題された。また、昨年3問出題された「利用者の状況・状態に応じたコミュニケーションの技法と実際」から3問、及び昨年3問出題された「介護におけるチームのコミュニケーション」から2問の出題となっており、出題基準からバランスよく出題されている。設問として、間違えやすい記述があるが(問題40)、その他の問題は、テキストを理解していれば解ける問題である。特に、「利用者の状況・状態に応じたコミュニケーションの技法と実際」は、障がいの特性・状態に応じたコミュニケーション技法をよく勉強しておく必要がある。
総じて、今年から出題形式が「適切なものはどれか」という正しいものを選択する形式に統一されており、間違えやすい表現が多くなっていると言える。昨年より難しくなっており、落ち着いて、文章を読み込む基礎学力を身につけ、基本的な勉強及び応用できる力をつけておくことが得点につながると言える。
|
生活支援技術 |
本科目は、旧カリキュラムの「介護技術」「形態別介護技術」「介護概論」「家政学概論」「レクリエーション活動援助法」という主な科目等を踏襲している。広範囲にわたる科目を出題数20問でおさめており、介護における基本的事項が理解できていれば、それほど難易ではなかったと思われる。
前回同様、短文事例の問題が4問出題されている。出題内容を項目別にみると、「生活支援」、自立に向けた「身じたく」「家事」「睡眠」が1問、「居住環境の整備」「移動」「食事」「終末期」が2問、「排泄」が3問、「入浴・清潔保持」が5問となっており、出題基準10項目すべてが網羅されている。
問題内容の特徴としては、利用者個々の状態・状況に合わせた介護の重要性や介護・介助の基本的知識を問うている。総合的には、各問題に提供されている選択肢からICFの視点にもとづくアセスメントを理解し、新カリキュラムの生活支援技術のねらいである尊厳の保持・個別性・自立支援・安全性を念頭におくことで、権利擁護(身体拘束の廃止など)やプライバシーの保護など幅広い視野で本科目を理解していく必要性を伝えている。全問題を通じ、日常のより実践的な内容になっている。
|
介護過程 |
昨年と同様に、介護過程の展開プロセスの全般から、8問出題された。一方、昨年と異なる点は、介護過程の基本的な考え方を直接問う問題は4問で、他の4問は、簡易な状況設定や短文事例による個別の状況下での具体的な介護過程の展開について問う方式で出題されたことである。
基本的な考え方を問う問題では、「介護過程の展開」「モニタリング」「評価」「チームアプローチ」について問われた。簡易な状況設定下での問題では、「食事事例でのアセスメント」と「排泄事例での介護目標の記述」について問われた。短文事例問題では、「客観的情報の記録」と「長期目標・短期目標に応じた支援内容・方法」について問われた。質問の形式はいずれも「適切なもの」や「もっとも適切」なものを選択するものであった。出題難易度としては、昨年同様に基本的知識があれば解ける問題ではあるが、昨年にも増して、個別の状況に応じた介護過程を具体的に展開する能力が求められる出題となっている。
|