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第24回 介護福祉士国家試験 科目別分析【午前科目】

領域 午前科目 分析
領域I
人間と社会
人間の尊厳と自立  「人間の尊厳と自立」2問の内容をみて見ると、過去によく出題されていた「さまざまな法律の理念や目的、歴史的背景や流れ」等については、今回は出題されていない。
 1問は、短文事例問題であり、介護現場における具体的な対応を問う問題となっている。介護従事者として、利用者が日常生活を送る中で、どのように尊厳を保持し、権利擁護、自立を支援していくか等、「人間の尊厳と自立」についての基本的な考え方や実践を理解していれば解ける問題である。もう1問は、介護福祉士の役割を問う問題であり、予想された問題でもある。介護福祉士の職業倫理、社会福祉士及び介護福祉士法、日本介護福祉士会倫理綱領の内容を理解していれば解ける問題である。この利用者の尊厳を保持し自立支援を行うための介護福祉士に求められる資質を問う問題は、今後も出題されるだろう。総じて、とりわけ難しい問題や引っかけ問題もないので、テキスト中心の基礎的な勉強をしておけば解ける問題である。
人間関係と
コミュニケーション
 「人間関係とコミュニケ―ション」2問の内容をみて見ると、過去によく出題されていた「共感、受容、自己覚知」等については、問題数が少なく今回は重点的には出題されていない。
 1問は、人間関係におけるコミュニケーションの基礎から出題され、コミュニケーションの基礎的な知識を理解していれば解ける問題である。もう1問は、介護現場における具体的な対応に関する短文事例問題であり、コミュニケーション能力の基盤をなす情報の受け渡しには、さまざまな方法があることを理解していれば解ける問題である。総じて、新たな概念を問うような出題もなく、テキストを中心にしながら基本的な勉強をしていれば、十分に答えられる内容であったと思われる。
社会の理解  領域「人間と社会」の中でこの科目は、家族や地域社会の機能や概念、また高齢者や障害者の生活を支える社会保障制度に関する知識を問う科目である。  今回の出題は、家族、地域社会の変容、福祉の理念、社会福祉法、社会保障、介護保険制度、障害者自立支援制度、高齢者虐待、医療法、生活保護制度が出題されており出題基準からまんべんなく出題されている。
 出題傾向としては、言葉の意味や法律の中身に関する問題、各設問の意味を理解していなければ答えられない問題、事例問題形式の問題と3種類の問題に大別でき、領域からの総問題数16問中12問が「社会の理解」から出題された。
 出題の難易度についてはまんべんなく知識を問う問題が多く、問題や各設問の言葉の理解、法律の内容、施行年度等に関し理解しかつ問題や設問の文章をよく読めば答えられるため比較的答えやすい問題が多かったといえる。
 いくつか問題を見てみると、問題13の設問の中に出ている「自立支援プログラム」は、生活保護制度で使われる言葉であり、自立支援制度では使われない。また、問題15については医療法に基づく医療提供施設に関する問題で、介護と関連領域に必要な法規から出題されており、いままであまり出題されていない問題が出ていた。
領域II
介護
介護の基本  新カリキュラムによる国家試験が初めてで、どう勉強してよいのか受験生は迷われたのかと思われます。旧カリキュラムの「介護概論」的な科目であるので、受験対策の模擬試験問題も、そのように編集しました。今回の出題内容は、介護の現状、介護福祉士法、支援のあり方・考えかた、ユニットケア、ICF、リハビリテーション、介護サービス、感染対策、安全の確保とリスクマネジメントなどで、旧カリキュラムの「介護概論」から介護過程が削除された、内容でした。
 この教科の対策としては、介護及び介護福祉士に関する法律・制度、原則などに関連する知識を広く問う問題であり、基本的な知識の習得及び言葉の理解が必要です。選択肢を問う択一問題である以上、本科目及びそれ以外の科目も含め、容易に選択できるものと、深度が深いものとの組み合わせで、最後の一つを詰めるのに苦慮されたのではないかと思いました。
コミュニケーション
技術
 「コミュニケーション技術」8問の内容をみて見ると、介護におけるコミュニケーションの基本から2題出題され、問題33の5は、対人距離と親密さが理解できていれば解ける問題である。障害の特性・状態に応じたコミュニケーション技法から2題出題され、中途失聴者、失語症(aphasia)を理解できていれば解ける問題である。また、記録による情報の共有化・報告と申し送りから2題出題され、基礎的な理解をしっかり固めておけば解ける問題である。そして短文事例問題として2題出題され、実践的な状況に応じた内容となっている。
 利用者の状況・状態に応じた介護職の接し方や、チームの一員としての介護福祉士の役割を理解できていれば解ける問題である。総じてテキストからまんべんなく出題されており、基本的な理解を問う問題である。利用者の状況・状態に応じたコミュニケーション技法は、今後も出題されると思われるので、各症状に応じた接し方を勉強しておく必要があるだろう。短文事例問題は、単に知識を暗記するだけでなく、実際の場面で考え、応用できる力をつけることが得点につながると云える。
生活支援技術  生活支援技術は、新カリキュラムの第1回目ということで、やはり基本的な出題基準に沿った20問の出題であった。「生活支援」2問、自立に向けた「居住環境の整備」3問、「身じたく」2問、「移動」3問、「食事」3問、「清潔」1問、「排泄」2問、「家事」「安眠」「終末期」が各1問と10項目が万遍なく出題されている。出題形式は適切10問、不適切5問、最も適切5問を選択する問題であった。特徴的なのは、問41、問43、問57、問60で出題された短文事例で、問題文の中に簡易な状況説明がされており、その中で問41は小項目の「生活支援の考え方」、問43では「利用者の安全な心地よい生活の場」、問57は「利用者の状態・状況に応じた介助」、問60は「終末期における介護」等の知識があれば解ける問題である。生活支援技術の問題は総じて、難易度は高いとは言えず、過去問題やテキストを確実に学習し、基本的なものが理解できていれば解ける問題が多かった。
利用者にとって一番身近な支援をする立場にある介護福祉士に、適切な知識、技術を身につけてほしいという期待が込められている。
介護過程  介護過程に関する基本的な考え方を問う問題が6問、短文事例問題が2問、合計8問出題された。出題形式は7問が適切・不適切を選択する正誤問題、1問は優先度が低いものを選択する問題であった。難易度としては、基本的知識があれば解ける問題であると言える。
 基本的な考え方を問う問題では、「介護過程の意義・目的」、「展開プロセス」(「アセスメント」と「計画の立案」が中心)、「介護過程とチームアプローチ」について出題された。介護過程に関する重要基本項目が全般的に出題されたことが1つの特徴と言える
 2つ目の特徴として、問題文に簡易な状況説明が含まれた短文事例問題の問題が2問出題されたことである。内容は、特定の状況下における「アセスメントの視点」と「目標を達成するために把握すべき内容」を問うものであり、「展開プロセス」全体の十分な理解と具体的な介護過程展開能力が求められる出題方法である。
 3つめの特徴として、「展開プロセス」に関する問いが多いことである。特に「アセスメント」については「情報収集」「情報の解釈・関連づけ・統合化」「課題の明確化」について、考え方や手法および留意点が重要視されている。また、「展開プロセス」の各プロセスに関する問いと、各プロセスの関連性から考えて答えを導くものがあり、「展開プロセス」の意義や手法を十分に理解しておくことが求められる。

 

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