専門科目 |
分析 |
社会調査の基礎 |
出題傾向としては、特に目新しいものではなかったが、言葉ひとつひとつを正確に理解していなければ正答を導き出すことが困難であった。午後一番の科目としては、問題を読み解くだけでも時間を要し、かなりの集中力を必要としたのではないか。全体的に難問が多く、迷わせるような設問が多数あった。特徴的であったのは「正しいものを2つ選びなさい」というもの。社会調査法ではこのような形式が7問中2問出題されている。
問題84、問題87、問題90は基本問題。聴き慣れない言葉があったとしても、消去法でなんとか正答を導き出せたはずである。
問題85は、標本調査における長所と短所を正確に理解することが求められるが、確率抽出法という言葉は聞き慣れないものであった。問題89についても同様に、グラフの特徴について押さえておくことで正答できるはずだ。
問題86。尺度についてはこれまでにも何度か出題されているが、正確な理解が難しく、今一度整理して学習する必要がある。
最後に問題88。「分散」「散布度」「標準偏差」などという用語が出てくると、どうしても苦手意識を持ってしまう受験者も少なくないが、丁寧に読み解いていくことで正答に近づくことができる。
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相談援助の
基盤と専門職 |
出題の範囲は、科目全体からまんべんなく出されているが、全体的な難易度はそれほど高いものではなく、選択肢をしっかりと読めば正答が導き出される問題が多い。
問93のソーシャルワークの概念、問95,96の専門職倫理と倫理的ジレンマからの出題は、ソーシャルワークの視点をもって取り組めば解答することは難しくないはずである。問92の相談援助の形成過程からの出題については、毎回のことであるが内容を確認しておくことが必要である。
事例は2題出題されており、内容としては社会福祉士の視点から解答すれば難しくはない問題である。しかし、今回は問91のように「適切なものを『2つ』選びなさい」という出題のされ方が見られる。これを見落としてしまうと、得点できる問題を落としてしまうことになりかねない。今後も、こういった出題の仕方があることを十分に意識しておく必要があるだろう。
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相談援助の
理論と方法 |
この科目でも問112と116において、適切な選択肢を『2つ』選ぶという設問がある。このことを見落としてしまうと、2つある正答の内どちらを選ぶかと考えている時間を無駄にしてしまう。解答する際のチェックを怠らないようにしたい。
出題傾向として、全体的に難易度はこれまでに比べ上がっているように思われる。事例問題においても、問106のようにあくまでも理想的なソーシャルワーカーとして解答すべき問題、問107のように『最も』適切な解答をする問題や、問108のように選択肢を読み込むことで正答を導き出す傾向が見えてくる問題など、例年通りの出題傾向ではあるが慌てずに解答したい。ただ、やはり事例問題はしっかりと読めば十分に答えられる内容であるので、落ち着いていれば得点を積み重ねることが期待できる。
相談援助の理論からの出題においても平易な問題もあるが、問101のように人名と理論を結びつける問題などは学習が必要とされており、バランスが取れている。出題には世相が反映されているため、普段から時事問題にアンテナを立てておくことが重要である。
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福祉サービスの
組織と経営 |
この科目における今年の難易度は、例年と比較し比較的取り組みやすい問題が多かったといえる。頻出の社会福祉法人に関する出(問題119)では、社会福祉事業が主たる地位を占める必要性があること、公益事業の余剰金の処理、収益事業、物件に対する所有権の有無等、実務上必須の知識が問われた。過去に出題されてきた、理事や役員等の設立時の基本的な知識を問う出題は今後皆無となり、このような日々の実務に於いて必要な設問が増えてくるのではないだろうか。問題120は組織構造と環境に関する出題であった。コンティンジェンシーアプローチの意味と官僚制を理解できていれば、他の設問はすぐに消去することができる。一方、問題121の組織学習論に関する出題には、受験生は苦労したと思われる。ヘドバーグのアンラーニングの意味とアージリスのシングルループ学習及びダブルループ学習を知らなければ、正解を導くことは困難であったと思う。問題122のソーシャルマーケティングに関する出題は、正解となる1以外の設問が読み込むと明らかに矛盾していることに気づけば、得点できたのではないだろうか。問題123も今までの傾向からは、想定しにくい日本の寄付の実態に関する出題であったが、社会福祉法人の所得控除を知っていれば正解を導ける。引っかけ問題として、認定NPO法人の収益事業に関する設問が用意されているが、こちらを選んでしまった受験生も多かったのではないだろうか。
「働きやすい労働環境の整備」からの出題は、キャリアパスや職場研修のシステムが定番であったが、問題124は男女雇用機会均等法、育児休業法、問題125は労働契約と就業規則に関する出題となった。共に労務管理に関する基本的な出題であったため、正解を得られた受験生は多かったと思われる。
本科目は、よく出題予想が難しいといわれているが、実は作成委員の主たる研究テーマを確認しておくと、かなりの確率で的を絞りこむことができる。過去問に終始するのみの学習法ではなく、出題者の特性を踏まえた取り組みをすることが、科目攻略のポイントとなる。
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高齢者に対する
支援と介護保険制度 |
今回の内容をみる限り、基本ラインを抑えたバランスの良い出題である。高齢者を支援するために必要な、基本的な知識、適切な対応のための基本的な事項が出題されている。専門職である社会福祉士としての核となる根本的な知識力や対応力を測りたいという出題者の意図が読み取れる。志を抱いて、着実に学習した皆さんには難易度はそれほど高くなく、すんなりと回答が導き出せる問題になったのではないか。
出題内容をみると、高齢者の現状理解・把握(問126)から始まり、介護予防(問127)、サービス提供責任者(問128)、住環境整備(問129)、介護報酬改定(問130)、介護保険制度の組織・団体(問131)、介護保険制度の専門職・人材(問132)、担当者会議(問133)、地域包括センターのSWの役割(問134)、「高齢者の居住の安定確保に関する法律」(問135)となっている。さまざまな組織に配属されたとしても、専門職として社会福祉士が活躍するためには、実務以前の基本知識は必須である。
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児童や家庭に対する
支援と児童・家庭
福祉制度 |
出題数、方法ともに例年と変わらず、他の科目に比べればオーソドックスな出題であったが、難易度は例年よりも高く、現場にいたとしても知識がなければ消去法で絞り込むことも難しかったのではないか。
問題136は見た瞬間にこの科目への意欲を削ぐ設問であるが、1~19歳の死因は「不慮の事故」で最も多いことを知っていれば即回答できる。逆に言えば、それを知らなければ相当迷わされる。
問題139は今回この科目最大の難問ではなかったか。社会保障の得意な受験生であれば恤救規則が13歳以下の孤児を対象にしていたことを覚えていたかもしれないが、他の法律に関しては細部まで覚えるどころか目にしたことのない受験生も多かったのではないか。
事例の2問は、落ち着いて取り組めば自ずと正解に辿り着けたと思われる。但し問題138の選択肢に挙げられた制度は、正解も含めどの自治体においても準備されているものではなく、本来であれば当該自治体においては全て制度化されている旨の注記を付すべきではなかっただろうか。
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就労支援サービス |
就労支援サービスについては4問しかないが、今年初めて、解答を2つ選べという問題が出題された。問題1つ1つを見ると特段困難な問題はなく、事例問題においては4問しかない科目群すべてにおいて得点するというところはまずはクリアできたのではないかと思われる。
問題143の労働基準法についての問題は法律の幅広い知識を蓄えて活用するのではなく、労働者の権利について言及したもの。昨今、どの対象者においても権利擁護が叫ばれる中、押さえておきたいところではある。
問題144については選択肢を2つ選ぶということと、紛らわしい選択肢が多かったことで迷うところだったと思われる。計画においてはとかく数値目標が取りざたされることが多い。障害者雇用の場の拡大という現在の潮流を踏まえ、本当に必要な数値目標は何かを冷静に見極めればある程度選択肢は絞れたのではないかと思われる。
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更生保護制度 |
今回は全体的に基本的内容を問う問題が多く,難易度は高くなかった。更生保護法の基本となる条文を読み込むことで解答が導き出させる。
問147は,指導監督の内容について法律の条文からそのまま出題されている。問147も保護司についての基本的な事項である。問149は少年司法制度についてであるが,消去法により答えることができる。問150の保護観察所が連携する機関として,最近の新しく創設された施設を問う問題であった。しかし,テキスト等を学習すること以外にも,日々の事件や犯罪についてのニュース等から,更生保護という視点をもって考察することで,知識が増えることもある。
更生保護の分野で基本となることは,更生保護法である。実際の保護観察官,保護司等の業務についても,更生保護法を根拠法として行動し,業務にあたることになる。それほど多い条文ではないため,条文を読むことで基本に忠実になる。
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