共通科目 |
分析 |
人体の構造と
機能及び疾病 |
前回までの出題どおり、7問の出題のうち短文事例問題が1問出題された。発達に関する問題、加齢に伴う退行性変化、人体の構造と機能、ICF、認知症、脳血管疾患による後遺障害、DSM-Ⅳといった分野が出題項目で、過去問題や模試である程度の出題範囲に対して学習していれば正答が選択できる出題であった。
問題6で出題された事例は、詳細に失語の状態が明示されており、指示された言葉は理解しているが、伝えようとしている言葉が発語できず、さらに嚥下障害がない、といった症状に対して選択をすることが求められており、最も適切なもの一つ選択に迷った方も多かったかと想像される。「赤マル福祉」の模試において出題した項目と類似しており、基本を確実に掴んでおくことを実感するような出題であった。
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心理学理論と
心理的支援 |
出題傾向としては、やや難易度の高い傾向であった。ストレス障害やPTSD、心理療法、集団の社会心理等はある程度予想できた分野からの出題があった反面、問題9心理的効果、問題12臨界期は一定の学習レベルがなければ正答が得られにくく、とりわけ問題12については“最も適切なもの”としての選択であり迷った受験生も多かったのではないか。
また、問題11思春期・青年期の発達は、用語の定義や様相に関する知識に関する理解を求められているが、各教科書だけでの思春期・青年期理解では難易度が高かったのではないか。
全体的に正答となる設問を見つけることが出来れば容易に解答できるが、理解が曖昧であった場合は絞り込みにくい問題になっている。
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社会理論と
社会システム |
例年同様、7問の出題がなされ、内容としては過去の問題との比較では解きやすい問題が出題されたと思われる。問題19・問題20については、過去にも数多く出題された内容で、人名や基本的な知識を問う問題であった。問題15~18については、現代社会の特徴を鑑みて、それに見合う社会学の知識を問う出題であった。問21のみ自然環境を織り交ぜた点が奇をてらっており選択肢も難しい言い回しに終始しているので解答も自然と難しくなると予想される。
対策としては、教科書の知識を、いかに現代社会の諸問題に照らし合わせられるかがキーとなる傾向だ。換言すれば現代社会の諸問題を、社会学の知識をもってどのように考えるかを問う傾向が強いということになる。教科書で学ぶだけでなく、今の社会を社会学の知識をつかってひも解くという考え方を身につけることが求められる。
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現代社会と福祉 |
10問の出題すべてにおいて、過去の問題にはあまり見受けられない文言や選択肢が含められていた。また社会福祉原論からの発展としてこの科目をとらえているよりは、現代社会の問題を中心とした出題であった。社会福祉学の問題ではあるものの、傾向としては社会学の色彩が強く出たものと思われる。
今回の特徴としては諸外国の動向や歴史に関する問題が2問出題されている。問題24は例年と同じ傾向だが、問題27は、特に韓国の金大中などに代表されるように近現代史における福祉施策の動向が解答者を惑わせただろう。また問題22のように1970年代の報告書も範疇に入れるなど通常の対策ではまとめきれない部分もあった。
対策としては、キーワードを定めて、その歴史や諸外国の動向を押し並べて知識を蓄えることが求められると考えられる。いずれにしても、解きにくい出題であったことは確実である。
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地域福祉の
理論と方法 |
今年の問題は、過去に行われた国家試験問題の傾向にならい、民生委員、福祉活動専門員、地域ケアシステムと、押さえておくべき問題の他、障害者の地域移行、災害ボランティアセンター、社会資源の活用といった、近年よく取りあげられているテーマに関する出題であったため、出題範囲を予想しやすかった内容であり、基本的な概要を勉強しておけば難易度も高くはない内容であった。事例問題は2問出題されたが、解答方法について、例年は「最も適切なもの1つ選ぶ」形式に対して、「より適切なものを2つ選ぶ」形式となり、資格取得後の活動を意識した実践的な考え方を問うものではないかと考えられる。
問題34は地域社会の仕組みに関する問題で、知識が無いと解けない問題であり、難題であった。問題38の事例問題は日常生活自立事業の専門員の取り組みに関することだが、権利擁護と成年後見制度ではなく、地域福祉の理論と方法の科目で出題されたことについて、もはや特別な事例に対する制度ではなく、地域福祉を担う基本的な社会資源と位置付けられている印象を受け、今後の試験問題においても同様の出題がされていくのではないかと考えられる問題であった。
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福祉行財政と
福祉計画 |
例年、難易度が高く受験生泣かせの科目であったが、今年度は新カリになってから、最もポピュラーな出題であった。過去の細かい数字を把握しておかなければならない出題から、実際の福祉行政において実務レベルで理解しておくべきことに重点を置いた形式へとシフトしたことが、今年度の特徴といえよう。
出題頻度が高かった福祉行財政に関する出題は、問題45のみで、定番の地方財政白書と社会保障関係費に目を通しておけば正解を得ることができたと思う。一方、「福祉計画の意義と目的」「福祉計画の策定方法と留意点」から3問が出題された。内容的にはオーソドックスな問題で、地道にテキストを中心に学習してきた受験生は得点できたと思われる。問題46は、各計画の内容を理解していれば正解を得られる。問題47は、老人福祉計画、都道府県障害福祉計画、地域福祉支援計画、都道府県介護保険事業支援計画、市町村行動計画における策定、変更を問う設問であったが、テキストを読み込んでいれば正解が5であると迷わずに選択できたはずである。問題48は、各種福祉計画算定における、相互連携に関する各福祉法の規定に関する設問であった。福祉計画が市町村と都道府県でそれぞれ策定されている意味合いと、各種計画における関連性の必然性が理解できていれば、正解を導くことは容易であったと思われる。問題42は社会福祉施設等の設備・人員配置等の運営基準に関して、地方公共団体の条例で定めることができるものを問う設問であったが、各施設における、サービスの質を担保することを前提として考えれば正解できる。問題43は民間助成に関する設問であるが、独立行政法人福祉医療機構の役割が理解できていれば迷わずに解答できたと思われる。問題44は制度改正に伴う設問であったが、これもテキストで十分対応できるものであった。
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社会保障 |
社会保障の大枠(雇用と労働環境・社会保障の歴史・社会保障給付と負担)で3問、年金1問、雇用保険1問、事例問題(社会保険・医療保険)のが2問の出題内容であった。
問題49は、現状を白書などでみたというだけでは解答が困難である。問題50は、各法の成立年号にて解答は導きやすい。問題51の給付と負担については予想可能な出題であり得点源。問題52は、年金制度の大枠の理解で解答が可能。問題53、問題55の事例問題は、難解な事例ではなく、難しい表現もない。問題54は、基本手当の細かな内容を問うているが参考書等の範囲内で解答が可能であった。
全体的に難易度は下がっていると考えられるが、直近の社会保障分野での具体的数値と実際の場面でのソーシャルワークのあり方、運用の力量を求めているので、難しいと感じた人もいるかも知れない。地道に学びを深めた人は確実に得点ができたと考えられる。
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障害者に対する支援と
障害者自立支援制度 |
「障害者に対する支援と障害者自立支援制度」が共通科目に移ったことによる初めての試験であった。今年度、障害者福祉分野意においてトピックスとされるテーマは「相談支援」と「障害者虐待防止法」について。やはりこの問題については両方とも出題された。また事例問題についても実践的な相談支援の問題が出題されていたことも特徴的だった。相談支援については流れやフロー図をしっかりと理解していれば困難な問題ではない、また事例問題についても同様である。
児童福祉法に関わる問題も出題されていたが、これは障害福祉と児童福祉の線引きを取り上げたものと思われる。これも今年度の大きな制度の変化であるから容易に答えられたのではないだろうか。
平成24年10月に施行された障害者虐待防止法についても出題された。しかしこの問題62については虐待者の種類について決めきれない選択肢があったのではないだろうか。法律に明記されていない虐待者をどうとらえるか。実践においては障害者の方が権利侵害されている現状があれば、救済することが絶対に必要である。
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低所得者に対する
支援と生活保護制度 |
今回は、出題テーマに傾向の変化がみられる。これまでの国家試験で繰り返し出題されていた「生活保護の原理原則」、「生活保護の動向」に関する出題が姿を消している。最頻出ともいえるこの2大テーマの出題がなかったことが、今回の試験問題の最大の特徴である。あえて言えば、問題65の選択肢4が、唯一、生活保護の動向に関連する内容である。肩透かしを食った受験者も多かったのではないかと思われる。
昨年の旧生活保護法について問う問題に続き、今回は問題64で戦前の低所得・貧困者救済について問う問題が出されている。実践力の高い社会福祉士養成への対応のために行われた試験制度改革という側面からは、出題数が7問に減った中で、このような過去の制度の知識のみを問う出題が続くことに対して、いささか懸念を感じる。
他の6問については、オーソドックスなテーマである。問題67のように生活保護における不服申立てについて、1問を割いて出題されるのは久しぶりであるが、内容は平均的なレベルである。一部に細かい部分を問う内容を含んでいるが、総じて難問と言うレベルではない。
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保健医療サービス |
7問の出題のうち、2問が短文事例の出題であった。出題の傾向として明らかに平成24年4月の診療報酬改定、本年に予定されている第6次医療法改正、在宅医療の推進といった流れを存分に意識させられる出題である。どの問題も難易度は高いレベルで、より多くの模擬試験や対策講座を解答・受講していなければ自信を持って正答一つに絞り込むことが出来なかったのではないか。
問題70の事例では、団塊の世代後期の多くが体験する被用者保険加入者が退職した後の取り扱いが出題され、まさに時代を意識した出題である。また問題74では、在宅療養支援診療所のシステムと地域医療支援病院の役割を理解した上で、紹介と逆紹介に関する理解をしていなければ正答が導き出せず、在宅医療に関する総合理解が求められた。この出題傾向は今後数年継続される可能性を示唆している。
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権利擁護と
成年後見制度 |
全体を通して、消費者被害、民法、行政法、成年後見制度、虐待といった、昨今の社会情勢を踏まえているものの、ほぼ傾向通りの問題構成であり、比較的出題内容は絞りやすかったが、解答を選ぶ際に詳細な知識が必要とされる問題が目立ち、消去法で解答を導き出すことが難しく、全体の難易度は高いものと思われる。
問題79は「正しいものを2つ選ぶ」形式で出題され、設問内容一つ一つについて、なぜ誤りなのかを理解していなければ解答が出せず、難易度をあげている。問題81の扶養義務に関しては、ニュースや新聞でも話題になることが多かったため、関心を持っていれば解答しやすい問題であった。問題82は事例の概要は複雑にされているが、問われている内容は専門職の倫理感を問う問題であり、解答を導き易い問題である。問題83の障害者虐待の防止についても同様に、平成24年度から新しく始まった制度であり、基本的な部分を押さえていれば易しい問題であった。
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