社会福祉士国家試験情報第35回 社会福祉士国家試験 科目別分析【専門】

科目別分析【専門科目】

社会調査の基礎

 問題84と問題89は、社会調査の分析や国勢調査の対象者、参与観察などは主に過去問及び模擬問題、主要テキストを繰り返すことで解ける内容であった。問題85は、統計法に関する内容を理解することも大事だが、行政機関や個人情報の機密漏洩などの対応をわかっていないと解くのにやや苦労した方もいたのではないかと思われる。問題86については一般的な標本調査と何かをしっかり理解していれば解ける内容となっていた。問題87は、尺度に関する理解がわかっていなければ混乱していた方もいたと思われる。問題88は、質問紙の作成の留意点として、そもそも誰あてに質問紙を作成するか、更に 回答者の立場にいるかを考えて解く方が正解に近かったと思われる。問題90はKJ法を理解していていれば、それほど難しくはなかった。
 全体的には、社会調査の具体的な内容や標本調査及び統計法、質問法、測定と尺度などを学習していた方が正解を導くことができたと考えられる。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

相談援助の基盤と専門職

 出題傾向としては、例年同様の範囲からの出題であった。しかし、ここ数年は受験生一般の平均的な学習習熟度で解答できる問題が多かったのだが、今年はやや踏み込んだ内容の問題であった。特に、第1、2問目で戸惑った受験生も多かったのではないだろうか。
 個別の出題を見ると、問題91は例年であれば社会福祉士法の規定からの出題であったが、今回は社会福祉士に関する広範な設問となっている。問題92は恒例の「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」からの出題だが、定義内容を熟知していないと解答できなかっただろう。しかし、ソーシャルワーカーとして抑えておきたい定義であるので、内容にまで踏み込んだ選択肢は良問であるといえよう。問題97は事例問題であるが、チェンジ・エージェント・システムの意味を理解していなければ解答できなかったであろう。事例問題でありながらシステムの内容を問う問題でもあり、ミクロ、メゾ、マクロを意識したソーシャルワークの視点を捉えた問題と思われる。
 過去3年の出題内容と比較して、今回は難易度がやや上がったと思われる。確実に学習を進めてきた受験生でも、戸惑う選択肢が散見されたように思われる。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

相談援助の理論と方法

 今年度最も特徴的であった点として、例年2問ずつは出題されていたシステム理論に関する出題が(家族システム論を除いて)されていなかった事が挙げられる。その分、面接技術に関する出題は例年3問であったところ5問に増えていた。それ以外の分野に関してはアプローチ2問、過程3問、援助関係2問、アウトリーチ、社会資源、ネットワーキング、スーパービジョンから各1問、グループワーク及び自助グループ、記録から各2問と大きな変化はなかったものの、出題内容はより現場実践に則したものが多かった。
 出題方法として、記録の文書を事例として掲載し文体を選ばせた問題115はこれまでにない新しいものであった。それぞれの文体の特徴を全て覚えていなくとも、断片的にでも覚えていれば消去法で正解にたどり着いたであろう。
 事例問題については、例年必ずしも適切とは言えない(逆に必ずしも不適切と言えない)選択肢が散見されるが、今回の問題117及び問題118が受験生を悩ませたのではないか。「頑張っている」という言葉が精神的に追い詰められているクライエントに対して必ずしも適切か、避難の意思が明確になっていないクライエントに一足飛びにシェルター(しかも自機関で利用を確約できない行政委託)を具体的な選択肢として示すことが適切か。実践現場を考えると深みにはまってしまいかねない。言葉尻にとらわれず原則論で割り切り、クライエントを承認し、選択肢を提示し自己決定を支援する、とシンプルに考えることが、試験の解答法としては適切なのだろう。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

福祉サービスの組織と経営

 今回「福祉サービスの組織と経営」は、例年同様の出題分野であったが、最近連続で出題されていた財務諸表の問題はなく、差が出る項目なので、得意としていた受験生は残念であったかもしれない。難易度は普通と思われる。
 問119、120、121の福祉サービスに係る組織や団体に関する問題であり、毎年出ている「社会福祉法人」や頻出の「特定非営利活動法人」や「医療法人など」であり、暗記出来ていたら解ける問題であった。問122のコンフリクトや問123のCSRやバランス・スコアカードなど、難しい言葉ではあるが、過去の試験にも出てきている。学習していた受験生も多いと思うが、他にも同様の言葉が並んでおり、選択肢から一つに絞ることが難しかったのではないだろうか。問124の人材の確保や育成、問125の第三者評価も頻出しており、正答にたどりつけた受験生は多かったと思われる。
 総じて、多くの人が予想されていた問題傾向であった。正答以外の選択肢にも、経営の専門用語が多く、正確に覚えていたかが、得点の有無に繋がったのではないだろうか。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

高齢者に対する支援と介護保険制度

 全体的に実践場面で理解しておかなくてはならない問題が多かった。特に事例では、問題129の生活相談員としての介護老人福祉施設及び問題135のソーシャルワーカーとしての病院のケースなど実際に関わることを想定した内容が出題されていた。直接的な介護に関することは問題128のボディメカニクスの基本原理はあったもののほとんどが介護保険制度に直結した内容が多く、高齢者が個々に対応困難になったときに在宅及び施設の支援を行う際、どう対処するのかといった内容であり、即実践力を期待されている問題内容となっていたと思われる。問題126の高齢者白書と問題134の老人福祉法は、出題率が非常に高く、定番に定着している感じである。問題127は、日本の高齢者保健福祉施策をしっかり理解している方が正解を見つけることができたと思われる。問題131及び問題132、問題133は介護保険制度の基本的な内容であり、特に介護支援専門員との関わりは重要といえる。問題130は、高齢者の浴室内での住環境に配慮した内容であり、社会福祉士として一般的な高齢者の身体構造と住環境の基礎をしっかり学んでいれば解ける内容と言える。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度

 毎年のように出題傾向が変わり、過去問学習があまり功を奏さないこの科目。  近年の傾向として児童虐待防止や社会的養護に関連する出題が中心となっていた点は今回も変わらないが、家庭に関する統計からの出題をせずに事例問題を3問。その事例の中でも子どもの権利やDV、母子保健と周辺領域の基礎知識を問う問題となっていた。事例を除く問題のうち2問は児童虐待防止法と児相(所長)の権限に関するものであったがこれも基礎的な内容であり、残り2問も関連職種(保育士)と制度(手当)と、現場実践で求められる知識に即した偏りのない実践的な出題と評価できる。
 この分野を得意としていない受験生であったとしても、テキストに記載されている内容を学習していれば、手も足も出ないという事態は避けられたのではないか。半面、こどもの貧困やヤングケアラーといった近年注目されている社会的課題や子ども・子育て支援新制度のような新たな法制度については出題されておらず、ヤマを外した受験生もいたかもしれない。
来年度以降の試験に向けては今回同様の普遍的な出題を望むが、令和4年は児童福祉法の大きな改正があり、また出題傾向の予想しにくい状況は続くと思われる。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

就労支援サービス

 障害福祉施策における就労支援の問題は一切出題されなかった。一方労働法規の問題は馴染みのない法律から出題され、多くの受験者が頭を悩ませたのではないかと思う。働き方改革や労働形態の多様性など現在の普遍的な働き方の世相を問題にしたように感じた。
 問題143、144や難易度の高い問題が続いたが、その後は確実に押さえられる問題ではなかっただろうか。障害者雇用促進法に関する問題は非常にベーシックな問題だったし、事例問題についても権利擁護を意識していれば間違いなく回答できる問題である。4問の構成ではあるが前半・後半と難易度の高さが激変する出題内容だった。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

更生保護制度

 例年、「更生保護制度の概要」からの出題が圧倒的に多いが、今年は全体から満遍なく出題されていた。出題が定番化していた保護観察官と保護司の業務に関する問題が見られず、制度の内容を問う問題が2題されていた。出題傾向を、更生保護制度を中心としなかったのは、第37回からの新カリキュラムによる試験において「刑事司法と福祉」という科目に変更となることを視野に入れての出題だろうか。そのせいか、昨年よりは難易度がやや上がっているように見受けられた。
 個別の問題としては、問題148では、一般遵守事項と特別遵守事項の内容を学習していれば、迷うことなく解答を導き出せたであろう。問題149は就労支援に関する問題であり、過去3年で出題は見られていない。保護観察所と公共職業安定所(ハローワーク)の連携についての問題である。更生保護における公共職業安定所(ハローワーク)の業務内容を理解しておく必要があった。問題150は医療観察制度に関する問題である。いずれも、奇問・難問ではなく、出題傾向や過去の問題にとらわれずに学習を進めてきた受験生であれば解答できたはずである。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会