社会福祉士国家試験情報第38回(令和7年度)社会福祉士国家試験 科目別分析【専門】

科目別分析【専門科目】

高齢者福祉

第38回試験の高齢者福祉は、認知症理解・高齢者を取り巻く社会状況・介護保険制度・終末期支援などを軸に、制度知識だけでなく実践的な判断力を問う構成であった。
単なる用語知識ではなく、事例を通して理解の深さを確認する設問が多かった点が特徴といえる。
特に、認知症の理解や生活状況の読み取り、介護予防・日常生活支援総合事業、ACP(人生の最終段階における医療・ケアの意思決定プロセス)など、近年の高齢者施策と現場実践を意識したテーマが目立った。今年の高齢者福祉は、制度と実践を結びつけて理解しているかが問われた試験だったといえる。
一方で、高齢者を取り巻く社会状況、専門職の役割、介護保険制度の基本事項といった定番領域も押さえられており、過去問を中心に基礎を整理してきた受験生にとっては対応可能な内容であった。ただし、選択肢の細かな表現差で正誤が分かれる問題も多く、知識の「正確さ」が得点を左右する構成であった。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

児童・家庭福祉

 昨年度に引き続き、6問中事例問題が3問を占め、苦手とする受験者を苦しめたのではないか。
 事例の出題内容も、問題93では前提となるアセスメント情報(そもそもの措置理由、母親の養育能力、児童相談所と確認している支援方針等)が不足しており、実践現場を知っていても回答困難だったのではないか。また、問題95は手も足も出ないと感じた受験者も多かったのではないか。以前の試験委員が「求められるソーシャルワーカー像を試験問題で示した」とコメントしていたが、社会福祉の実践現場で求められる水準への到達度を測る試験問題としてはやや不適切と言わざるを得ない。なお、問題92は就学義務、外国籍児童と家庭への支援、個人情報保護等の総合的な知識を必要とする良問と言えるが、要素が多い分やや難易度は高かった。
 事例以外の問題については、例えば問題91の「少年法」といったキーワードに惑わされず丁寧に読み解けば消去法で正答を導き出せるものが多く、落ち着いて取り組めば科目0点は回避できたのではないだろうか。
 昨年も記述したが児童・家庭福祉分野については大きな制度改正が続いており、出題者にとっては選択肢の豊富な、受験者にとっては学習深度を問われる状況が続くと考えられる。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

貧困に対する支援

 設問6問のうち3問が事例問題というのはここ数年の傾向として定着している。この科目においては実践の場面での判断がいかに重要かを示している、と感じる。
 今回は、設問の内容に特徴があった。生活保護制度のことを直接尋ねる設問は事例問題1問のみであり、貧困問題の歴史についての問題が1問、生活福祉資金貸付制度についての問題が1問、残りの3問は生活困窮者自立支援制度についての問題で、うち2問が相談員の対応を問う事例問題であった。毎年傾向が違うので断言できるものではないが、実践現場での生活困窮者自立支援制度の重要性の高まりが反映されてきていると考えてよいだろう。
 各問題とも、難易度はそれほど高くないという印象を受けた。事例問題以外は「読めば分かる」ような問題ではないが、基本的な学習を行っていれば答えられる問題である。社会人の受験生の中には「この科目は経験値で答えられる」と踏んで、基礎学習を後回しにした方もいたかもしれない。改めて概念や歴史を学ぶことの重要性を感じた。逆に、事例問題は現場での経験が豊富な受験生にとっては難易度は低かったのではないだろうか。制度の原則を知っておく必要もあるが、それ以上に「支援者の姿勢」が問われる問題であった。
 6問を通じて、知識と実践のバランスが取れた問題配分だった。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

保健医療と福祉

 今回の出題は、新カリキュラムになってから設問範囲が拡大した内容であり、従来からの基礎知識を問う設問に加えて、幅広い知識と情報を必要する内容になっていた。  問題103は近年死亡率のトップである悪性新生物に関する動向についての問題であるが、単なる死亡率に加えて年齢調整死亡率や粗死亡率、粗罹患率などについての詳細な理解が求められる設問であることから理解しにくい受験者もいたと思われる。  また、問題104は保健所や市町村保健センターの根拠法令である地域保健法の理解が問われている問題であり、問題105も事例を通じて健康保険法の内容を問う問題で、法制度を正確に確認した受験者は解答できたと思う。  続いて問題106の臓器移植に関する設問に関しては、社会的に注目されている内容に関する設問であり、受験者は社会の動向を注視していることが問われているが、問題107の事例も少子化に伴う母子福祉の設問に関しても、社会福祉士の支援の対象の拡大についての理解することができていた受験者にとっては想定できた設問であった。  最後に問題108の診療報酬の問題についても出来高払いから包括払いに移行する目的が、近年の少子高齢化に伴う医療制度の改革や給付費の効率化が求められていることについての根本的な知識を正確に理解しておくことが求められた。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

ソーシャルワークの基盤と専門職(専門)

 テキストを中心に丁寧に学習を進め、ソーシャルワークの基礎を抑えてきた受験生であれば、解答できる問題であったと思われる。
 個別の出題で見ると、問題109はバートレットが提唱したソーシャルワーク実践の共通基盤についての出題である。バートレットの時代が、医学モデルから生活モデルへの転換の時代であったという背景を理解していれば、更に解答しやすかったであろう。問題110は事例問題ではあるが、恒例の行政が設置する機関の内容を理解していれば解ける問題である。問題111は、メゾレベルでの実践の展開について選択する問題であった。ミクロ・メゾ・マクロのレベルの意味と相互関係を理解していれば解けたであろう。問題112、113は事例問題である。問題112はクライアントの気持ちを優先的に考えること、問題113は家族関係が上手く機能するためにはどのような方法があるかと実践的に考えれば、自ずと解答は導き出せたと思われる。問題114は、ジェネラリストソーシャルワークの特徴を学んでいれば解答できたであろう。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

ソーシャルワークの理論と方法(専門)

 全9問中6問が事例問題であり、昨年度より1問事例問題は減っている。また、その他の問題も特に難問というものはなく、基礎的な理解があれば正答を導き出せる設問がほとんどであった。公表されている試験科目別出題基準の大項目に照らし合わせてみると、「ソーシャルワークにおける総合的かつ包括的な支援の実際」から3問、「ソーシャルワークにおける援助関係の形成」から2問、それ以外は「ソーシャルワークにおける社会資源の活用・調整・開発」「ソーシャルワークに関連する方法」「事例分析」から1問ずつ出題されており、また「ソーシャルワークの理論と方法  共通科目」の中の「ソーシャルワークの実践モデルとアプローチ」から1問出題されていた。科目を超えた横断的な知識も必要になると思われる。また農福連携、災害ソーシャルワークなど幅広い分野の出題が目立つ。
 問題115は契約に関する知識を問う出題である。意表を突いた出題であるが、選択肢をよく読めば正答は導きだせたものと思われる。問題116はソーシャルワーカーの役割についての事例問題である。やや難しかったかも知れないが、設問を良く読めば正答を導き出すことは可能であろう。問題117は単一事例実験計画法についての基礎的知識を問う出題である。基礎的な出題ではあるものの、いくつかの選択肢の間で迷ってしまう受験生もいたのではないだろうか。問題118は資源開発についての理解を問う出題である。基本的な理解があれば迷うことなく正解は導き出せたであろう。問題119は家族が抱える課題についてのアセスメントに関する出題である。システム論についての知識も求められる少々難しい出題かも知れない。また問題120も農福連携、地域課題についての出題である。やや難しい出題であり、迷ってしまった受験生も一定数いたのではないだろうか。問題121は災害派遣福祉チーム(DWAT)に関する出題である。基礎的な出題であり、選択肢をよく読めば正答は導き出せたであろう。問題122はソーシャルワークのアプローチに関する基本的な出題である。それぞれのアプローチに関する基礎的な知識が問われている。問題123はアウトリーチに関する出題である。アウトリーチの定義を理解していれば正答は導き出せたと思われる。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

福祉サービスの組織と経営

今年度も6問出題された。問題124は社会福祉事業関連の法人設立運営に関すること、問題126は組織における心理的安全性、問題127は決算書類、問題129は人材育成の評価。このあたりは例年通り基本的知識を問う出題だったと思われる。一方問題125は組織改善、改革に関する事例問題だった。社会福祉士は福祉サービスの質の向上と業務改善のために専門職として所属組織を理解し、職場環境を改善することが結果的に福祉サービスの質の向上につながる。複合的課題を抱える方への支援や多問題解決に向けて自職場が出来ることを経営視点から見ていくことも社会福祉士に求められていることだと思われる。
問題128は福祉サービスの経営理論についての出題で、ここ最近ではあまり出題されてこなかったと思われる。所属組織にて福祉サービスにおける倫理と経営のマネジメントを理解し、事業を推進するためには戦略的に関わっていくこともあり、そこに社会福祉士としての専門性を発揮するために所属組織における立ち位置も重要だと考える。
全体として所属組織のことと人材育成に関連することが多く問われた内容であったと思われるが、社会福祉士として組織と経営を理解することは非常に重要であることを認識して今後も更に学び続けてほしい。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会