社会福祉士国家試験情報第37回 社会福祉士国家試験 科目別分析【専門】

科目別分析【専門科目】

高齢者福祉

 出題頻度の高い、問85の「高齢社会白書」、問86の「日本の高齢者福祉制度の発展過程」は今年も出題されており、押さえていた受験生も多いのではないでしょうか。また、問87の介護保険制度の介護報酬についての設問は、基本的な内容の問いかけであり基礎をしっかりと学んであれば回答できたのではと思われます。今年度も昨年度に続き、事例問題は問88、問89、問90の3題が出題されました。医療や介護、福祉事業所で働く社会福祉士ではなく企業で働き、介護離職防止等に資する社会福祉士としての役割が問われ、幅広い知識を有することが必要であることを問われました。問89は、各専門職の職務内容や役割を問われた問題、問90は「基本チェックリスト」という存在から「介護予防・生活支援サービス事業」について問われました。複雑な仕組みに見える地域支援事業はこれから地域の多様な主体を活用して高齢者を支援していく施策、高齢者自身も支え手側に回ることも期待されている現状を踏まえるとしっかりと抑えておきたい分野と思われます。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

児童・家庭福祉

 新カリキュラムに移行し出題数が一問減ったが、事例問題も選択肢を2つ選ぶ設問もそれぞれ3問(重複あり)出題されており、難易度としてはむしろ厳しくなっている印象。
 出題内容についても、令和6年4月から施行した困難な問題を抱える女性への支援に関する法律(女性支援新法)から2問、児童福祉法に新設された意見表明等支援事業、及び令和5年4月に施行したこども基本法から各1問出題。反面、従来頻出していた母子保健制度や統計問題、ひとり親家庭への支援や手当等は出題されておらず、児童福祉の現場で働いていたとしても新たな知識を身に着けていなければ正解にたどり着けなかったのではないか。出題範囲にはやや偏りがあったと言わざるを得ない。
 ただし、事例問題は教科書レベルの知識から消去法で正答を導き出せるものが多く、専門外であっても苦手意識を持たず落ち着いて取り組むことで得点を重ねられたのではないだろうか。児童・家庭福祉分野については大きな制度改正が続いており、出題者にとっては選択肢の豊富な、受験者にとっては学習深度を問われる状況が続くと考えられる。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

貧困に対する支援

 設問6問のうち、事例問題が3問であった。内容としては、生活保護に関する問題が3問、生活困窮者自立支援制度に関する問題が2問、生活福祉資金に関する問題が1問であり、概念や歴史を問う問題がなかった。6問という限られた枠の中では、より実践に即した問題が選ばれたということだと思われる。しかし、それは決して概念や歴史に関して学ばなくてよいということではない。むしろ歴史の上に成り立った概念を理解していればこそ解ける問題があったという印象である。
 各問題についての印象としては、難易度がこれまでよりも上がっていると感じた。ともに生活保護に関する事例問題の問98は「読めば分かる」問題であるが、問102は正答が2つあり、選択肢を一読して迷った受験者もいただろう。問97、99、100は、それぞれの制度の内容である扶助の種類や資金の種類を覚えておく必要があった。問101は生活困窮者自立相談支援事業を理解していないと選択肢を絞り込んだところで迷うだろう。
 問題数が少なくなった分、具体的な制度の内容の理解度を求める問題が増えた。経験や印象だけに頼らず、制度の構成を理解しておく必要がある。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

保健医療と福祉

 今回の出題は、医療ソーシャルワーカーに求められる基礎知識を問う設問で、各種制度の理解に加えて事例を通じて実践的な内容に関する問題になっていた。
 まず、問題103は難病に関する医療保険制度の仕組みについての理解を問う問題であるが、制度の内容を詳細に理解しておくことで解答できる設問である。また、問題104は健康保険法、問題105は診療報酬の基礎知識に関する問題で過去問を参考に確認した受験生は迷わず解答できたと思われる。続いて問題106の医療倫理に関する問題は、社会福祉士の倫理綱領の内容を熟知しておくことで2つを選べる問題であり、問題107の治療と仕事の両立支援は近年の傾向を理解しておくことで予想できる問題である。このような問題はソーシャルワーカーの役割の拡大について理解を促していると思われる。最後に問題108の事例については、クライエントが抱えている問題の根本を正確に理解し問題解決につなげることを問われており、近年の医療の動向と福祉の制度についての基本的な知識を正確に理解しておくことが求められた。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

ソーシャルワークの基盤と専門職(専門)

 全体を通してソーシャルワークの共通基盤(知識、技術、価値)について問う設問が中心であったと思われる。社会福祉士が、どのような価値観で支援を展開するのか、どのような領域で活躍しているのか、認定社会福祉士制度について等、社会福祉士という資格を持ってソーシャルワークを展開していくことの意味を再確認するような内容であった。
 バークレイ報告、ミクロ・メゾ・マクロの視点、アドボカシー等、基礎的な知識を問われる内容であったものの、名称を知っているだけでなく、至った経緯や意義、その技術を用いてどう支援を展開していくのかという点まで学習が深められているかを確認するものもあった。そのため、受験生の皆様にとっては、回答しやすい科目だったとは思うが、熟考する設問もあったのではないか。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

ソーシャルワークの理論と方法(専門)

 今年度より本科目は9問の出題となった。そのうち事例問題は7問であった。また選択肢を2つ選ぶ問題は6問であった。全体的に難問奇問はなく、基礎的な知識の習得を求められている出題がほとんどである。しかし基礎的な知識について正確な理解を求められている場合も少なくなく、受験生が迷うであろう出題も散見された。また、公表されている試験科目別出題基準の大項目の中からバランスよく多岐にわたって出題されており、他科目の知識も求められる出題が少なくない。問題115はバイスティックの7原則についての基礎的な知識を問う出題である。問題116はソーシャルワークの技法についての基礎知識を問う事例問題である。アウトリーチやスクリーニング、ソーシャルアクションなどの基礎的用語の理解があれば正答を導き出せたと思われる。問題117は面接技法についての基礎的な知識を問う出題である。問題118は事例検討会についての事例問題である。内容としては、認知症の方へのパーソンセンタードケアについての理解も必要となっている。事例検討のあり方についての出題は次の問題119である。こちらも基礎的な知識があれば対応可能であったと思われる。問題120は異文化共生をテーマにした事例問題である。別科目「地域福祉と包括的支援体制」の多文化共生についての知識が求められている。問題121も事例問題であるが、内容としては多問題家族についての出題であり、重層的支援体制整備事業についての事例である。基礎的な出題ではあるが、幅広い知識が求められている。問題122はコミュニティ・ワークに関する基礎的な出題である。問題123は「保健医療と福祉」にも関わる、医療ソーシャルワーカーの実践についての出題であり、基礎的な知識があれば回答を導き出せたと思われる。全体的には昨今の社会福祉士の実践に即した、良問が多かったように思われる。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

福祉サービスの組織と経営

 昨年同様専門分野ではあるが、問題数が1問減り6問になり、午後最後の出題となった。問題124は事例から特定非営利活動法人の取り組みについて、問題125は社会福祉法人が努めなければならないこと、問題126はリーダーシップ理論、問題127は外部への苦情申し立て、問題128は個人情報保護法、問題129は社会福祉法人の財務に関することは、法人の特性の理解が必要な内容である。全体として、基本的知識を問う内容であったと言える。よって出題範囲に沿って丁寧に学習が進められていれば回答は容易だったと言える。だが出題範囲はそれなりにある中で出題数が多くはない。今後も出題範囲に沿って基本的知識を中心に学習をしていくことが必要である。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会