社会福祉士国家試験情報第35回 社会福祉士国家試験 科目別分析【共通】

科目別分析【共通科目】

人体の構造と機能及び疾病

 午前の共通科目第一番目の科目である人体の構造と機能及び疾病であるが、今回も人体や疾病に関する基礎的な設問が多いため、過去問を参考に学習を積んでいたことで解答しやすかった受験者もいたではないかと思われる。
 まず、問題1の成長・発達に関する問題については、思春期の心身の変化を各テキストで確認した受験者には、男女の違いや第二次性徴の解説も記憶に残る内容であったのではないだろうか。また、問題2のICFについては過去にも繰り返し設問されているが、今回も前回同様に言葉の暗記にとどまらず内容の理解を深めていることが求められた。問題3の疾病の予防に関しては、クラークとリーベルが提唱した疾病予防の理解が求めた設問であり「健康のとらえ方」の歴史と内容を確認することが必要であることを感じさせられた。続いて問題4のがん(悪性新生物)の問題については、問題5のパーキンソン病の設問と同様に近年増加する疾病に関する知識を問うものであり、予想した受験者は解答しやすかったと思われる。
 最後に問題6・7の障害の理解については、身体・知的・精神障害の特徴に加えて、近年の傾向として発達障害に関して理解を深める準備した受験生にとっては正解につながる内容であった。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

心理学理論と心理的支援

 例年通り、基礎的な知識の習得状況を問う出題傾向でした。「最も適切なものを1つ選ぶ」という形式であったこともあり、心理学の基礎的な知識があれば、5つある選択肢を絞ることが容易であったように思われます。一部、設問では選択肢を絞った後に、判断に悩まれる選択肢もあった印象ですが、難易度はそこまで高くなかったと思われます。
 中項目では、34回に2問出題されていた「学習・記憶・思考」からの出題はありませんでしたが、例年頻出の「欲求・動機付けと行動」、「人格・性格」、「集団」、「発達の概念」、「コーピング」、「心理検査の概要」、「心理療法の概要と実際」の項目からの出題だったため、過去問を用いて準備をされた受験生は、落ち着いて解くことができたのではないでしょうか。
 いずれの中項目も基本的な知識を習得されていることで、選択肢を絞ることが容易だったと思いますが、「内発的動機づけ」と「子供の発達」に問われた問題については、選択肢の表現やキーワードに悩まれた方もいたかもしれません。特に問題11の「子供の発達」について問われていた設問においては、テキストレベルの学習では出てこないキーワードも選択肢に記載されていたことから、試験中に戸惑われた方もいらっしゃったかもしれません。
 全体的に言葉や用語の理解を単純に問うのではなく、日常生活と紐づけた理解がなされているか、理論や知識を実践現場と関連付けて理解していることができているかを問うものであったように思われ、例年の傾向と同様に、知識の詰込み型ではなく、実践に活かされる知識の習得状況が出来ているのかを問う出題であったように思われます。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

社会理論と社会システム

 出題分野、順序、内容いずれも例年同様。むしろ内容的には基本に立ち返ったものであり、キーワードと説明文の組み合わせを入れ替えた(消去法で対応しやすい)選択肢も多く、難易度は昨年度よりも低めであったと言える。テキストと過去問で一通り学習していれば得点源にできたのではないか。この科目に限らず、奇をてらった出題や高難易度の設問は国家試験としては不要であり、今回のような内容が適切と言えるのではないか。
 とは言え、問題17の統計出題に関しては、消去法でも選択肢を絞り切れない受験生も多かったかもしれない。この問題に関しても、日頃から報道等を通じて社会情勢に目を向けていれば正解にたどり着けるものであり、この種の出題は社会福祉士として理論だけではなく実社会に関心を持ち続け実態を把握することを求められているとも考えられる。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

現代社会と福祉

 今回「現代社会と福祉」の出題は、例年同様の出題分野であり、基本的な内容が多く、難問や奇問は無かったと思われ、難易度は低かったと言える。
 問22の「地域共生社会」よく耳にする言葉から始まり、問23の思想や運動、問25の人名、問27の福祉のニーズの問題は、受験生にとっては、毎年出題される、なじみの問題であり、一般的な知識を理解していれば解ける問題である。問26の福祉六法や問28の生活困窮者自立支援法は、選択肢の文章半分はあっているが、一部間違っている選択肢があり、しっかりと読まないと選択を間違ってしまう。問29~31は、深い知識がなくとも文章を読み、正答を導き出せた人も多かったと思う。問29は、人口動向では、日本の人口の減少割合や時期を把握していれば正答できる。問30は、福祉サービスの利用について、問31は、男女雇用機会均等における、福祉関係の事業所で就労している人にとっては、簡単に正答にたどりつけたと思われるが、学生にとっては難しく感じる人もいたと思われる。
 総じて、過去問や基本的なテキストに出てきた、人名・法律・統計を繰り返し学習してきた受験生にとっては、点数が取れる科目になったのではないだろうか。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

地域福祉の理論と方法

 中項目の出題傾向が例年決まっており、個々の問題の難易度が高めな『地域福祉の理論と方法』だが今年度は出題傾向が大きく変わったことが第一印象である。地域福祉の理念や概念、社会福祉法、共同募金の出題は例年通りだが、民生委員や社会福祉協議会の問題が出なかった。その代わりに、地域共生社会や重層的支援体制整備事業といった地域福祉のトレンドが設問や選択肢に多く見られた。問題41は意思決定支援に関する設問だが、一見、権利擁護の分野では?と感じるが、地域とともに解決を目指す意図で出題されたのであれば、次年度以降は地域ケア会議や地域共生社会が出題されやすいと考えられるだろう。全問を通して、各設問の選択肢は消去法で絞り込めず、確実に正解を選ぶにはより詳細な知識が必要であり難易度はやや高めであった。制度の内容を問う設問、「地域住民とどのようにケアシステムを構築するか?」といった支援者視点の設問で構成され、全体的に良問であった。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

福祉行財政と福祉計画

 行財政に関連する設問を除いては、諸官庁と法定計画や審議会等に関連する問題で占められた。問題42では、厚生労働省に設置されている機関として、子ども・子育て会議や孤独・孤立対策推進会議の設置などの情報を意識して取得している方は解けたのではないだろうか。問題43、問題46、問題48での都道府県知事として役割や都道府県地域福祉支援計画や法律上の福祉計画の記述では、行政機関として社会福祉法上の国や市町村の役割も理解しなければ戸惑う内容となっている。問題44では、令和4年版地方財政白書に示された民生費の項目を把握していれば問題はないが、選択する際に迷われた方もいたと思われる。問題45は、社会福祉に係る法定の機関・施設はどこに設置しなければならないかを理解していれば正解を導ける内容となっていた。問題47は、市町村に策定が義務付けられている福祉に関する問題であり、市町村の計画内容を把握していれば解ける基本的な内容であった。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

社会保障

 問題49の初めから社会保障の歴史に関することが出題されることは予想していた方も多かったのではないだろうか?戦後の社会保障制度の成り立ちを学習してきた方はうまく解けたと思われる。問題50と問題54では日本の社会保障制度の内容が出題された。基本的に健康保険、雇用保険及び介護保険、生活保護や労働者災害補償保険など一般的な知識を理解していれば解ける問題ではあるが、しっかり読んで理解した上で解かないと正しい選択を間違えしまう可能性がある為、注意が必要であったと思われる。問題51は、社会保障制度の加入に関する事例をよく読み込み、各保険の加入年齢を把握していれば、解ける問題であった。問題52は、公的医療保険の被保険者の負担の全体的な内容を理解できれば解けるはずだが、深く考えすぎると間違えてしまう方もいたと思われる。問題53の労働災害補償保険制度などの業務災害や通勤災害及び問題55の公的年金保険などの老後の年金問題は近年クローズアップされており、今後も出題頻度が多くなっていくと考えられる。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

障害者に対する支援と障害者自立支援制度

 まず奇をてらった問題はなく全般的に問題の難易度が低く設定されているように感じた。テキストと過去問を行っていれば十分に回答できる問題だったと言える。生活のしづらさに関する調査、障害福祉計画は見直しの時期に突入していることから今回はやはり出題されなかったが、次回は出題される可能性が非常に高くなったと思われる。法律に関する問題は身体障害者福祉法など、この科目の柱となる法律から出題されていたため、非常に回答しやすかったのではないだろうか。
 事例問題に関しては障害福祉サービスのメニューと内容を把握していなければ回答できない内容だったが、今後障害福祉の実務に就くことを想定すると、押さえておいてほしい内容である。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

低所得者に対する支援と生活保護制度

 本科目は例年通りの出題傾向であり、過去問題を疎かにせず、普通に学習した受験生であれば、5問以上は正答できたのではないか。難易度も標準からやや易しい、あるいは、『やや』を付けずに『易しい』といってもいいような内容であった。事例問題に関しては、2問出題されることが多い科目であるが、今回は1問のみであった。
 問題63は、生活保護の被保護者調査からの出題。昨年(第34回)は珍しく出題されなかったが、今回は復活した。非常に易しい問題であり、確実に正答したい問題である。
 問題64は、生活保護の目的と基本原理・原則を理解していれば正答できる。
 問題65は、生活保護における扶助の種類(生活保護法第12条~第18条)を理解しているだけで簡単に正答できる。
 問題66は、生活扶助基準の設定方式に関する問題。過去に何度も出題されてきた基本的な用語が各選択肢に並んでおり、その内容をおさえているだけで正答できる。
 問題67は、生活困窮者自立支援法に関する問題。本科目の中では一番正答率が低かったのではないか。文言が学習してきたテキスト等と違いがあり、これでいいの?違うの?と迷った受験生もいたのではないか。
 問題68は、生活福祉資金貸付制度に関する問題。選択肢ごとに1つずつ〇×を正答するのは難しい、そんな多少勉強不足の受験生でも、正答の選択肢をピンポイントで「これは知ってる!」と正答できた人も多いのではないか。
 問題69は、本年唯一の事例問題。難しいと感じた受験生もいたであろう。しかし、適切なものを2つ選ぶというより、適切でないものを3つ選び残った2つが正答である、と考えれば難しくはない。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

保健医療サービス

 今回の出題も、医療ソーシャルワーカーに求められる知識を問う問題が多く、制度の理解に加えて事例を通じて実践的な内容に関する設問になっていた。また医療保険制度の内容や国民医療費の概要などについて、確実に確認をしていた受験生にとっては解答しやすい内容であったと思われる。まず、問題70は医療保険制度の仕組みについての理解を問う問題であるが、制度の内容を熟知しておくことで解答できる設問であり、問題71は繰り返し設問される国民医療費の内容を問いており、過去問を参考に年齢別、診療種類別、都道府県別、制度区分別、診療医療費などの比較を確認した受験生は迷わず解答できたと思われる。
 また、問題72の診療報酬と問題73の医療提供体制の内容については、冒頭に記述した通り医療ソーシャルワーカーに求められる知識に関する設問で近年の傾向を理解し医療の動向と結びつけていく知識が問われたため、医療制度の理解が不十分な受験生にとっては難易度の高い設問であったと思われる。続いて問題74の後期高齢者医療制度については、保険者・被保険者・保険料・財源について基本的な問題を正確に理解しておくことが求められた。
 最後に問題75の事例問題については、医療ソーシャルワーカーの多面的支援の役割を理解し、問題の解決につながる様々な制度を確認しておくことができた受験生にとっては解答しやすい設問であったと思われるが、問題75にあるチームアプローチのモデルについても、近年の支援は多職種連携を重視するために理解を深めておく必要があることを問われたものであった。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

権利擁護と成年後見制度

 今年の特徴は、成年後見制度に関する基本的な内容を問う問題が多く、例年出題されていた確実に得点を狙える成年後見事件の概況は出題されなかったが、不法行為や行政行為の効力を問う非常に難易度が高い問題も出題されなかった。問題80は補助類型の基本的な内容を問うもの。問題82は家庭裁判所に関する問題は知識がなければ正答が導けない難問。事例問題が3問出題されたが、明らかに違うと判断できる選択肢も多く、消去法で解答にたどり着いた受験者は多かったのではないか。全体的な難易度は低めで、基本をおさえていれば正答を選べるため、地道に勉強をしてきた受験生にとっては解きやすかったと思われる。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会