社会福祉士国家試験情報第34回 社会福祉士国家試験 科目別分析【専門】
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科目別分析【専門科目】
社会調査の基礎
今回は、基礎的な学習を積み重ね、しっかりと記述問題を読み込めば確実に正答を選択できる内容となっている。
問題84の社会調査の倫理と個人情報では、近年各所で情報の流失防止が求められているが、調査を行う上でも個人情報との関連性は重要であり、今後も同じような試験問題が予測される。問題85と問題86は過去にも何度も出題されており、しっかり学習していれば解ける内容である。問題87の調査票の回収方法としての手続きの注意点を理解していれば正答を得ることは可能である。問題89の郵送法と問題90の面談法については、調査手法や用語を理解できている上で、記述内容を注意深く落ち着いて解けば正答にたどり着く。しかし、問題88の集計結果に関する内容が事例として出たことは、正直驚き戸惑った受講生は多かったのではないだろうか。
ただし、全体的には、横断調査と縦断調査や質問紙調査、調査回収及び観察法、面談法などは過去にも何度も出題されており、基礎をしっかり理解していれば、高得点を得ることは可能となっている。
相談援助の基盤と専門職
例年、比較的得点しやすい科目の1つであるが、今年は一部の問題において難化したようで、受験生にとっては多少苦労されたかも知れない。しかしながら、しっかりと学習をすすめて試験に臨んだ受験生であれば正解の選択肢を選ぶことができたであろう。
個別の問題を見ると、問題91で社会福祉士法の規定、問題92でソーシャルワークの形成過程に寄与した人物が出題されており、定番の主題と言って良いだろう。問題93では、意思決定支援におけるガイドラインからの出題となっており、ガイドラインに目をとおしていなかった受験生は慌てたかも知れないが、ソーシャルワークの視点をもって取り組めば解答することができると思われる。問題94の専門職の成立条件は未出題のテーマであり、ここで正当を選ぶのに苦労されたのではないだろうか。問題95は、ミクロ、メゾ、マクロの実践を理解していれば容易に解答できただろう。多職種チームに必要なことを設問とした問題96は、近年の社会情勢を受け、今後一層重視される項目となっていくと思われる。問題97の事例問題は、制度を理解していなければ解けないと思われそうだが、現段階における対応として落ち着いて考えていけば、おのずと2、4の選択肢を導き出せただろう。
相談援助の理論と方法
例年同様に出題基準全体を偏りなく網羅しており、2年続けて出題されていた家族システム論や近年頻出しているアウトリーチ、倫理綱領及び今年度改定された社会福祉士の行動規範に関する出題はなかった。難易度もほぼ例年通りであったが、問100ではナラティブアプローチとストレングスモデルをあえて混同するような出題をしており、より正確な理解を求められていた。
グループワークに関する出題は近年2問ずつが定着しており、来年度以降も必須の内容と思われる。スーパービジョン及び記録についても、範囲は狭いものの毎年出題されており、今後もこの傾向は継続すると思われる。
事例問題の長文化は今年度も続いている。事例にリアリティを持たせるためにある程度やむを得ないとは考えるが、試験において解答はあまり状況に惑わされず、あくまで原則論で導くものと考えると出題側ももう少し割り切っても良かったのではないか。いずれにせよ、来年度以降も受験生側は長文を読みこなし必要な情報を得る練習、また過去問や模擬試験から全体の時間配分を身に着けることも必要になる。
福祉サービスの組織と経営
例年通り7問が出題され、出題基準から満遍なく出題されていた。難しい言葉も少なく、受験生は解きやすい科目だったのではないでしょうか。
問119は、社会福祉法人や特定非営利活動法人など、毎年出題されている内容であり確実に正答したい問である。問120や問121は、過去にも同様の問題が出題されているが、学習したテキストにおいては、選択肢の言葉が出ておらず、初めての言葉もあるかもしれない。他の選択肢からの誤りなどから、正答を導き出す必要があったと思われる。問122や問124、問125は、就業している受験生は、自身の組織内で行われている仕組みも多く、バーンアウト、目標管理、リスクマネジメント、パワーハラスメント、ストレスチェックなど、聞きなれた言葉で、選択肢を選びやすいと思われる。一方で、学生の受験生は、イメージできず、就労の有無や労働環境により正答への明暗が分かれる問であったと思われる。
例年難しいと思われている財務管理や会計の問は、今年度は選択肢のクラウドファンディングという言葉を知っていたら、他の選択肢が理解できずとも正答できたと思われる。
高齢者に対する支援と介護保険制度
出題全体として今年は例年と比べて難しくも易しくもない問題ではあるが、どの問題にも共通して言えるのは問われている内容について正しく知識を持っておかないと解けない問題であった。特に問題130の「終末期ケア」、問131の「介護保険の都道府県の役割」、問題132の「訪問介護事業所」はここ数年出題されていなかったので、幅広く学習をしていないと選択に悩むところである。今回の試験の特徴として2つ挙げられる。1つ目は新しい視点で高齢者をとらえているところではないだろうか。問題126は例年出題されている高齢社会白書について問われているが、「新型コロナウイルス感染症」にも触れているし、問題130では「アドバンス・ケア・プランニング」のような新しい考え方も取り入れている。過去問題だけでは解けない幅広い社会情勢も必要な知識となっていた。日ごろからニュースなどで情報収集ができていれば取捨選択をすることで解答に結び付けることができる問題ともいえる。
2つ目は事例問題が4問出題されたことである。昨年は1問、それ以前はだいたい2問であった。介護保険法、介護過程などが事例という形で問題となっている。過去3年間を振り返っても事例という形での出題がなかったので、戸惑う受験生も多かったと思うが、利用者の利益や保護になるものを選ぶことができれば解答することができただろう。
介護保険の法改正については触れられていないので、来年度は改正の部分も押さえる必要が出てくると予想される。
児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度
過去問学習があまり功を奏さないこの科目。
冒頭の問136からヤングケアラー問題に対するスクールソーシャルワーカーとしての支援事例、問139では特定妊婦への子育て世代包括支援センターでの支援、問140から142はいずれも一時保護及び措置児童に関する児童相談所の支援と、統計問題である問138も含めてほぼ全面的に要保護・要支援児童並びに特定妊婦への支援に関する問題であった。
子育て世代への一般的な支援であるこども・子育て支援新制度については問137で少し触れる程度であり、手当等に関する出題もなし。出題の半数近くが児童相談所に関するやや踏み込んだ内容であったことも含め、偏りのある出題と言わざるを得ない。元々児童分野で働いている等の理由で得意科目としている受験生を除き、用語の紛らわしさも含め苦労したのではないだろうか。スクールソーシャルワーカーの就業形態や業務内容が自治体によって異なる点も含め、国家試験問題としてはもっと普遍的な知識を問うべきと考える。
また、事例問題は例年2問であったところを3問に増やし、問137に関しては選択肢のうち3つが障害児通所支援を採り上げており(但しいずれも正解ではなかったが)、この点も例年の傾向とは異なるものであった。
就労支援サービス
まず、問題143の日本国憲法から問いかけられた問題は誰もが驚いたのではないだろうか?労働基準法からの問題ではなかったため、両方の法律をしっかりと把握していないと回答困難な問題だったと思われる。この科目はおおむね第1問目に難易度の高い問題が置かれ、受験者を悩ませていると感じる。
しかしその後の問題144については難易度が控えめで、これは障害者自立支援制度を勉強していれば難なく回答できる範囲である。
出題頻度の高い障害者雇用促進法と法定雇用率、障害者就業・生活支援センターに関する問題は今回なかった。構成が4問と限られた問題数しかないため出題はなかったが、今回の求職者支援に関する問題や生活保護制度の事例問題は現在の時代背景をとらえて考えられた問題だったと言える。
更生保護制度
例年この科目については「更生保護制度の概要」からの出題が圧倒的に多く、今年も4問中3問が出題されており、その傾向は踏襲されていた。そのため、「更生保護の担い手」「関係機関・団体との連携」や「近年の動向と課題」からの出題はなかった。しかし、問題149の選択肢には保護観察を、問題150の選択肢には保護司を入れることで、全体のバランスを取ったものと考えられる。
個別の問題としては、問題147は更生保護法第1条の内容を問うものであった。更生保護法の基本となる条文は読み込んでおく必要があろう。問題148は生活環境の調整と問題149の仮釈放の手続きについては、しっかりと学習を進めていた受験生であれば容易に解けた問題だったと思われる。問題150は社会復帰調整官の業務を理解していれば、容易に解答できたはずである。社会復帰調整官に関する問題も比較的頻出している。特に、今回の事例問題は第30回の事例問題に酷似しており、過去問を解いていた受験生にとっては安易に答えが導き出せただろう。
全体的に「教科書どおり」の問題であり、難易度はそれほど高いものではなく、例え分からない問題であっても、選択肢をしっかりと読めば正当が導き出せたのではないだろうか。
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