社会福祉士国家試験情報第34回 社会福祉士国家試験 科目別分析【共通】

科目別分析【共通科目】

人体の構造と機能及び疾病

 午前の共通科目第一番目の科目である人体の構造と機能及び疾病であるが、今回は人体や疾病に関する基礎的な設問が多いため、過去問に加えて基礎的な学習を積んだ受験生にとっては解答しやすい内容であったのではないか。
 まず、問題1の加齢による身体の変化については、標準テキストの中でも紹介されている内容であり、特に高齢者福祉に携わる者にとっては基本的な知識といえる。また、問題2のICFについては何度か繰り返し出題されていることから、言葉の暗記にとどまらず内容の理解を深めていることが求められた。問題3の感染症に関しては時節柄何らかの形で設問されることが予想されたが、各感染症の特徴については興味を深く取り組んだ受験生は比較的分かりやすい内容であった。続いて問題4の骨・関節疾患の問題については、問題1と同様に超高齢者社会を迎えた現在において高齢期特有の特性と合わせての理解が必要であり、問題5,6の精神疾患についても近年急速に増加していることから専門的知識が求められていることからの設問と理解できる。
 最後に問題7のリハビリテーションについても数回にわたり設問されていることから、過去問と共に全体的に各問題とも近年の動向を理解して準備した受験生にとっては正解につながる内容であったのではないかと思われる。

分析:一般社団法人 千葉県社会福祉士会

心理学理論と心理的支援

 『心理学理論と心理的支援』においては、例年通り出題項目から安定して問題が出題され、特徴的な問題やトピック的な問題もなく、受験生の皆さんも落ち着いて解答することが出来たのではないでしょうか。
 全体を通して、基礎的な知識の習得状況を問う設問が多い印象を受けました。また、「最も適切なものを1つ選ぶ」という形式であることから、心理学の基礎知識が習得出来ている受験生は、正答を導きやすかったように思います。  中項目で見ていくと31回試験より、3年連続で出題されていた『感覚・知覚・認知』や2年連続で出題されていた『欲求・動機づけ』からは出題されることがありませんでしたが、例年頻出の中項目(『学習・記憶・思考』、『発達の概念』『ストレス』や『心理検査、心理療法』)からの出題であり、事前に知識として習得していれば、回答しやすかったように思います。また、同一の中項目(『学習・記憶・思考』、『発達の概念』)より、2問ずつ出題されていると言うこともあり、今回の出題傾向については、受験生の皆さんも驚かれたのではないでしょうか。
 設問文の内容としては、かねてからの傾向として、該当する研究者が唱えた理論や検査、療法の名称や内容を正しく理解しているかだけでなく、クライエントや我々の日常生活と関連した形…いかに理論や知識を実践現場と関連づけて理解していることが出来ているかを問われるものが多いように思います。今回も例年の傾向と同様に、知識の詰め込み型ではなく、今後のソーシャルワーク実践に活かされるような知識習得状況か否かを確認する出題であったように思います。

分析:一般社団法人 千葉県社会福祉士会

社会理論と社会システム

 第32・33回で各1問ずつ出題されていた統計からの設問が2問に増えていたが、内容自体は一般的なテキストレベルのものであり、落ち着いて考えれば統計そのものを目にしていなくとも正解できたのではないか。また国勢調査の内容については令和2年度調査の人口速報集計も令和3年6月に公表されていたが、就業状況と合わせて平成27年度調査のものが用いられていた。調査結果の傾向に大きな変化はないものの、過去の統計資料で学習していた受験生にとっては戸惑いが少なかったのではないだろうか。
 それ以外の出題については、研究者と理論を結びつける問題が4問出題されていた。単に理論や用語の意味を問われていた第33回試験よりはやや難度を上げており、また頻出であった社会的ジレンマ、社会集団、地域が出題されず、事前学習を外された受験生もいたかもしれないが、難問や奇問に類する出題はなく、主要な研究者と理論のキーワードをセットで憶えられていれば、消去法でも正解にたどり着いたと思われる。

分析:一般社団法人 千葉県社会福祉士会

現代社会と福祉

 幅広く出題され、聞きなれない言葉もあり、受験生として苦労した科目ではあったと思われる。例年通り10問が出題され、選択肢から適切なものを2つ選ぶ問題も1問出されている。
 問22の「新経済社会7か年計画」は初めて聞いた受験生も多かったのではないでしょうか。問25の戦前の社会事業や問29の福祉政策と市場の関係など、学習が難しい内容であり、難易度が高いと思われる。一方で、問23のノーマライゼーションや問26のイギリスにおける貧困の問題などは、過去にも複数回出題されており、確実に正解したい問である。問24の福祉政策の学説や問26など、主要な人物からの問題であったと思われ、理論・年代・人物などを一体に理解していたら、正答できると思われる。近年連続して国連や国際の動向の問題が出ており、今年度も問28や問30今年度も福祉政策と課題として出題された。日本の福祉政策と関連して、国際条約や国連の報告書などを理解していると、正答できたと思われる。問31の教育政策は、過去に不登校の問があったが、それ以外の出題はなく、驚いた受験生もいたと思われる。
 総じて受験生を悩ます科目で、選択肢を絞り切れなかった人が多かったと思う。正答までは、他科目など幅広い知識から、文章の誤りを探すことで、正答を導き出す必要があったと思われる。

分析:一般社団法人 千葉県社会福祉士会

地域福祉の理論と方法

 中項目の出題傾向が例年決まっており、個々の問題の難易度が高めな『地域福祉の理論と方法』であり、今年も問題32地域福祉の発展過程、問題33と問題35は社会福祉法の内容、問題36民生委員の規定、問題37地域住民の役割、問題38地域福祉の概念、問題39地域福祉の調査方法、事例が2問と例年の出題範囲であったが、問題34住宅の維持確保に困難な人への支援の施策が地域福祉の理論の分野で出題されるのは予想外であった。全問を通して、各設問の選択肢は消去法で「どちらかが正解」に絞り込めるが、確実に正解を選ぶにはより詳細な知識が必要であり難易度はやや高めであった。出題内容について、昨年は「制度の概要を問うもの」で構成されていたが、今年は「地域住民とどのようにケアシステムを構築するか?」といった支援者視点で構成されており、一昨年までの出題内容に回帰している問題内容が目立ち、良問であった。

分析:一般社団法人 千葉県社会福祉士会

福祉行財政と福祉計画

 科目名の通り、今年も「行政(福祉行政の実施体制)」「財政(福祉行財政の動向)」「福祉計画(主体と方法及び計画の実際)」の3分野から、出題基準に沿ってバランスよく出題されていた。総じて、基礎的な問題が出題された。問42・問43・問44・問46のキーワードは、国(厚労省・内閣府)都道府県・市町村の所管と業務を正確に理解されているか、試された問題であり、答えは一目瞭然である。そういう意味では受験生には容易に解答できる問題であったといえる。 問題42は、ズバリ原文のとおりである。問43・問44・問46もわかりやすい問題である。問題45も基本的で昨年に引き続き出された問題で、国家予算の歳入と歳出と並んで、都道府県と市町村の目的別、性質別歳出の構成の違いをイメージできれば、自ずと解答できる。
 問47も福祉計画をそのままに出題された問題であった。問48は最も適切なものであることから、悩ましい設問であるが、理解していれば決し難しい問題ではない。受験生にとっては、昨年と似たような傾向でやや有利であった科目とも云える。

分析:一般社団法人 千葉県社会福祉士会

社会保障

 今回は、社会保障の歴史的展開の試験問題から始まり、社会保障の費用統計や費用負担、雇用及び公的年金や社会保障と公的扶助の違いなどバランスを考えている内容となっていた。更に問題49では医療保険制度と介護保険制度などの歴史に焦点を絞り、出題されていたことは、介護と医療との関係性を重視している内容であったと言える。
 問題55の公的年金の被保険者に関する出題は国民年金や厚生年金等の学習をしていた方であれば解ける内容である。問題50の社会保障給付費用等に関することは、社会保障費用統計をしっかり数字として確認していなければ難しかったと思われる。
 今回の試験問題は、事例として問題54のひとり親世帯などの身近に起こり得る内容や問題53などの育児休業、失業等給付や雇用保険等などの問題が注目するところだが、全体的には標準的なテキストや過去問を活用し、学習していれば解ける内容であったと言える。

分析:一般社団法人 千葉県社会福祉士会

障害者に対する支援と障害者自立支援制度

 「生活のしづらさなどに関する調査」については前回も出題されており、この科目の統計調査として代表的な調査のため、安定して出題されるものだと言える。今後もこの調査は手帳所持者を中心に抑えておく必要があろう。
 事例問題は医療的ケア児への支援が注目されている昨今の時代背景を映している。また意思決定支援についても選択肢として挙げられているが、いまさらながら自己選択と自己決定を改めて事例問題では押さえておくことを考える必要がある。   問題62は就労関係に関する2つの法律から出題した問題だった。選択肢を読んでまずどの法律からの問題なのか?それぞれの法律の趣旨と目的をしっかりと抑えていないと獲得できない難易度の高い問題だったと言える。
 障害者総合支援法に関する問題は難易度が低く、総合的には奇をてらった問題はなく、テキストレベルで対応できる内容であったと言える。

分析:一般社団法人 千葉県社会福祉士会

低所得者に対する支援と生活保護制度

 本年も出題傾向に変化はなく、難易度も標準からやや易しいといった内容であった。事例問題も2問であり例年通りである。
 難問・奇問と言われるような出題もなく、生活保護法を中心にしっかり学習した受験生にとっては、合格に向けた大きな得点源となったのではないかと思われる。特に、赤マル福祉の模擬試験を経験し、その解説及び関連項目の学習をした受験生は7問全問正解できた者もいたのではないか。
 問63、生活保護法第3条、7条、8条、9条、10条が理解できていれば解ける。
 問64、1つずつ〇×を正答するのは難しいかもしれないが、最も適切なものを1つ選ぶことは容易な問題である。
 問65、生活保護法第57条~63条、特に63条が理解できていれば解ける。
 問66、生活保護法第38条が理解できていれば解ける。  問67、今回当該科目において、最も難易度が高かったと思われる。学習したことを基にして、生活保護現業員の職務をイメージできた受験生は正答できたのではないか。
 問68、生活保護法第26条が理解できていれば解ける。
 問69、生活福祉資金貸付制度について学習を怠った者は難しく感じたであろう。しかし、それでも、正しいものを1つ選ぶことは比較的容易であったのではないか。
 最後に、例年出題頻度の高い、被保護者調査からの出題が今回はなかった。せっかく学習したのにと思う受験生もいるかと思うが、合格後も、けっして無駄になることのない知識を習得できたものと思っていただきたい。

分析:一般社団法人 千葉県社会福祉士会

保健医療サービス

 今回の出題は、医療ソーシャルワーカーに求められる知識を問う問題が多く、単なる制度の理解に加えて実践的な内容の設問になっていた印象があった。また国民医療費の概要や医療法改正などの基本的な内容について、確実に確認をしていた受験生にとっては解答しやすい内容であった。
 まず、問題70は医療保険制度の仕組みについて事例に合わせて理解する内容であるが、制度の内容を熟知していれば事例の内容に惑わされることなく解答できる設問であった。  問題71は国民医療費について初歩的な内容を問いており、医療費総額や国民所得との比較、財源、種類別、各年齢層の割合等の確認をした受験生は迷わず解答できたと思われる。    また、問題72の災害拠点病院の内容や問題73の医療法改正の内容等については、近年の社会の傾向を理解し医療の動向と結びつけていく知識が問われており、理解の不十分な受験生にとっては難易度の高い設問であったと思われる。
 続いて問題74の用語の設問や問題75の他職種に関する問題については、カタカナ語や類似語の羅列で混乱も考えられるが、基本的な問題であるため冷静に考えることができれば解答しやすい設問である。
 最後に問題76の事例問題に関しては、医療ソーシャルワーカーの役割を理解し、経済的問題の解決につながる様々な制度を承知しておくことができた受験生にとっては比較的平易な出題であったが、今後もこれらの内容については理解を深めておく必要があると考えられる。

分析:一般社団法人 千葉県社会福祉士会

権利擁護と成年後見制度

 今年の特徴は、成年後見制度に関する基本的な内容を問う問題が非常に多く、例年出題されていた確実に得点を狙える成年後見事件の概況は選択肢の中にとどまり問題としては出題されなかったが、不法行為や最高裁判例を問う非常に難易度が高い問題も出題されず、消費者契約法や虐待に関する出題もなかったため、難易度は低めで、基本をおさえていれば正答を選べたのではないか。問題77行政行為の効力を問う内容は知識がなければ解けないものの、事例問題では問題80任意後見契約、問題82日常生活自立支援事業の2問であり、その2問とも消去法で選択肢を絞り込みやすい内容であり難易度は低め。任意後見制度や日常生活自立支援事業は法定後見制度と同時に学習する範囲であり、地道に勉強をしてきた学生にとっては解きやすかったと思われる。

分析:一般社団法人 千葉県社会福祉士会