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第13回 精神保健福祉士国家試験 科目別分析【共通科目】

共通科目 分析
人体の構造と
機能及び疾病
 全体的に出題項目に沿ってまんべんなく出題された。一つひとつの選択肢からみると範囲を広げてあり一見難解な印象を受けそうであるが、正答となる選択肢はベーシックなものが選ばれており、基本的な学習ができていれば正答を導き出せる。新科目になって加わった、障害の概要やリハビリテーションの概要についての出題がなく、健康に関する概念からの出題(問題4)や疾病を運動器に括っての出題(問題5)等は新科目の特徴的な出題方法である。一方、問題6で出題された訪問看護での処置の内容については、正答を選択しやすいものの、糖尿病の低血糖症状と対応を事例で出題するといった応用問題で角度を変えての出題であった。問題7で出題されたDSM-Ⅳについての出題は、操作的基準と多軸評定のキーワードが理解されていなければ迷った受験生が多かったことであろう。
心理学理論と
心理的支援
 全体的にオーソドックな出題で、旧カリキュラムからの過去問題の解答と分析ができていれば合格点以上の点数が稼げた出題であった。適切なもの、最も適切なものといった形式での設問が6問あり、幾つかの要素に対して根拠付けをしていかなければ正答を選択しにくそうであるが、消去法の解答方法で十分対応できる。問題10の類型論については、クレッチマーやユングではなくシュプランガーの出題で戸惑った受験生も多かったのではないか。問題12では、設問にある「ストレス」というキーワードで問われているものの、選択肢は広くストレスが影響を及ぼす疾患や症状の整理が必要となる問題であった。問題13にあるカウンセリングの介入法は、心理テストによる見立てや心理療法のキーワードだけを暗記するだけでは、問われているポイントが見えにくく、臨床的な理解が求められた。
社会理論と
社会システム
 出題傾向としては、比較的オーソドックスなもので、教科書に出てくる内容を理解しておけばある程度選択肢も絞り込め、正答を導きだすことは可能だったと思われる。逆に言えば、基本的な理論と提唱者をセットで暗記しておかないと点数がとりにくい科目だ、とも言える。
 問題16のように5つの選択肢の内4つまでが、文章の読み方で正答とされかねないものもあり、混乱したのではないだろうか。ただ、その他の問題は難易度も高くなく、選択肢の文章をよく読めば解答のヒントが含まれている。あまり一つの問題に執着せず、取れる問題で確実に正解をしておくことを優先すべきである。
 時事性の高い問題は少ないので、「官僚制」「社会階層」など教科書のポイントをしっかりと押さえ、過去問の頻出問題を繰り返し解いておくことが学習のカギである。
現代社会と福祉  広い出題範囲となる現代社会と福祉において、歴史的な流れとキーワードから人物や諸国の政策を連想出来なければ正答まで導き出すことができない。新カリキュラムからの5枝択一式の問題では、現代社会と福祉のような広範な知識と高い解答トレーニングが求められる科目ではかなりの学習量が必要となった。今回の問題では昨年に増してこの傾向が強まり、各問最後の択一に迷った問題が多かったのではないか。問題29、問題30、問題31については今の政策課題に沿った問題が出題された。問題29で問われている政策評価についても、時事的な流れに沿って出題されたと考えられるが正答に迷った受験生も多かったのではないか。他科目が応用力や現場での対応能力を事例的に問われている傾向と違い、今回の出題に関しても、豊富な知識量を問う出題傾向であった。
地域福祉の
理論と方法
 社会福祉士が地域福祉を実践するにあたっては、多様な機関と連携し、住民に対して多様な方法で働きかけを行っている。この科目は、その理論と方法を歴史も踏まえたうえで理解することが求められているので、学ぶべき内容も多く、受験対策に苦労した方も多いだろう。しかし、今年の問題は、出題傾向に沿った内容で、比較的回答しやすい問題だった。過去問や模擬試験に取り組んだ受験生は、すぐ間違いだと分かる選択肢が多かったので、消去法での回答が出やすかったと思われる。出題基準の大項目からは偏りなく出題されているが、特に、「行政組織と民間組織の役割と実際」からの出題が3問と多かった。「特定非営利活動法人」、「社会福祉協議会」、「民生委員」に関する知識が求められた。「地域福祉のあり方研究会報告書」「地域包括研究会報告書」など、最近、地域福祉について出された報告書については、よく内容を理解しておく必要がある。短文事例は、2問出題された。問題38については、消去法で回答しやすかったと思われるが、問題40については、回答を得るためには、ニーズ把握方法の知識が必要だった。
福祉行財政と
福祉計画
 福祉行財政で4問、福祉計画で3問出題されている。
 第22回同様、この科目はかなり難易度の高い問題が出題されており、受験生は苦戦したのではないだろうか。
 福祉行財政からは、社会保障制度の利用者負担、福祉行政における専門組織、福祉行政における任用資格、平成20年度の地方財政状況に関する出題となった。 福祉行政における専門組織、福祉行政における任用資格に関しては、組織名と所属する専門職名を一覧表にして理解しておけば正解が得られたと思う。また、「地方財政白書」に関しては、昨年に引き続いての出題となったので、予測していた受験生も多かったのではないか。
 福祉計画については、国の通知や財源、現状における福祉計画の策定状況に関する問題が出題されており、テキストだけでは正解を導くことは困難な設問であった。受験対策としては、計画にかかわる法律の詳細な知識を身につける学習が望まれる。
なお、テキストでは比重がおかれている、福祉計画の策定方法や留意点、評価方法の理論や技術は、現状では確立されているとはいえないため、今後も出題される可能性は低いと思われる。
 科目攻略としては、知識を整理しておくと得点が稼げる、福祉行政の組織及び団体の役割、福祉行政における専門職の役割に関して確実にマスターしておくこと、福祉計画に関しては、テキストの基本的な知識と併せて新聞等を購読し、時事的な考察を深めていくことが必要であろう。
社会保障  幅広い知識が要求される設問が多かった。一夜漬け(まではいかないだろうが)でなんとなく統計資料等を眺めていただけでは解答は困難で、日々、疑問を持ち、物事を調べるという癖があった受験者は解答が導きやすいであろう。問題49では、ワークライフバランス、ディーセントワークについて、語句だけでなく内容についても理解が必要である。その語句を問い詰めていくと自然に今の日本の働き方への問いかけが生まれてくるであろう。
 問題50、問題51では、社会保障への基本的理解が必要である。過去問でも目にした内容であるので、ラッキーと感じた方も多いかもしれないが、上記と同様に疑問を持ち、調べていた受験者が得点したはずである。
 問題52から問題55までは、医療保障、介護保険、雇用保険、年金に関する出題で予測は可能で、問題文に惑わされなければ比較的平易で、各々の設問の解答は、現場で働く人はもちろん、学生であったとしても導きやすいはずである。ただし、その分野において深く掘り下げておかなければならなければ、解答を導き出せない設問がみられた。問題55の設問がそれで、障害基礎年金について配偶者加算、18歳未満の子については、理解ができていたと考えるが、加入(納付)期間や受給額となると、あやふやになってしまう受験者も多かったであろう。
低所得者に対する
支援と生活保護制度
 難易度に若干のばらつきはあるが、出題テーマは全体的にオーソドックスである。出題形式を昨年と比較すると、昨年は実質的に2題あった事例問題が、第23回は1題の出題であった。過去問を中心に学習を積み重ねていれば、ほぼ対応できたと思われる。
 問題56(我が国の公的扶助制度の沿革)は、比較的出題頻度が高いテーマで、各選択肢も過去問で対応可能である。問題57(生活保護の動向)は、今回は細かい数字を取り上げるのではなく、全体的な傾向を見る問題であった。問題58(保護の原理・原則)は、最頻出テーマであり、内容も平均的な難易度である。問題59(生活扶助)は、少し細かい問題である。丁寧な学習をしていないと正解は難しかったかもしれない。問題60(自立支援プログラム)と問題62(ホームレス対策)は、テーマ自体は手あかが付いた感があるが、特に問題60の各選択肢は、これまでとは異なる角度から出題されている。平成21年に大幅な制度改正があった生活福祉資金貸付制度について、実践的な内容を問うた問題61は、若干難易度が高いと思われる。
保健医療サービス  国民医療費に関する問題が1問、診療報酬に関する問題が3問(1問は回復期リハビリテーション病棟の対象と目的)、他3問は医療ソーシャルワーカーとチーム、インフォームドコンセント、退院支援についての出題であった。平成22年診療報酬改定もあり、問題の配分としては診療報酬にまつわる問題が目立つ。とりわけ問題65については、改定内容と基本的診療報酬のシステムについての理解が求められた。また、事例問題も2問出題されており、特に問題68については、医療ソーシャルワーカーの役割とチームの機能、専門職の職能と役割等を理解していなければ正答を導き出すのに迷ったのではないか。全体的に理解しているか否かを求められ、暗記だけでは正答に辿り着けないように作問されており、全体の難易度としては若干高めであった。
権利擁護と
成年後見制度
 「成年後見制度」「日常生活自立支援事業」に関する問題は、基本的な制度を理解していれば、回答しやすい内容だった。「相談援助活動と法(日本国憲法の基本原理、民法・行政法の理解を含む。)との関わり」に苦手意識を持つ受験生は多い。そこから、3問と多く出題された。しかし、過去問や模擬試験に取り組んだ際に、最高裁の判決文や法律の条文を照らし合わせて考えた受験生にはオーソドックスな問題だと思えただろう。問題70は、消費者契約法の中で契約を取り消すことができる3類型を理解することが必要。問題71は、朝日訴訟、堀木訴訟についての最高裁の判決内容の理解が必要。問題74は、民法819条4項に定められている。短文事例は、2問出題されたが、2問とも成年後見制度や、任意後見制度の知識を問うもので、回答しやすいものだった。今、インターネットなどで、条文や判決文は簡単に見ることができる。社会福祉士が、相談援助において、利用者の権利を擁護するために、法律の知識が武器になる。苦手意識を持たずに、回答の法律的な裏付けを確認してみて欲しい。

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