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第27回 介護福祉士国家試験 科目別分析【午前科目】

領域 午前科目 分析
領域I
人間と社会
人間の尊厳と自立   昨年と同様に、2問の出題となっている。昨年は、福祉関係各法における自立に関する問題と、介護職として求められる利用者の「権利擁護」に関する事例問題であった。今年の1問は、基本的人権及び生存権に関する人権の歴史を問う問題と、もう1問は、「障害者差別解消法」が出題された。最初の1問は、第25回介護福祉士国家試験にハンセン病に関する問題が出されたのと同様に、歴史的に社会問題となった人権侵害に関わる出題となっている。要点は、生活扶助支給に関して、憲法第25条の「最低生活の保障」と考えれば、解ける問題である。人権に関わる憲法及び法律は、毎年出題されており、「人間の尊厳と自立」に関する歴史的背景とともに、理解しておくべきである。次の1問は、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(平成28年4月施行予定)から出題されている。人権に関わる最近の法的な情報(動向)を知っていても具体的内容を問われると判断に迷う難問といえる。新しく制定された法律も含めて、人権に関する法律の名称とともに目的・内容がどのように規定されているか、正確に理解しておきたい。
人間関係と
コミュニケーション
 昨年と同様に、2問の出題となっている。昨年は、自己覚知に関する問題と、認知症高齢者への介護職としての言葉かけに関する事例問題であった。今年の1問は、ラポール形成の初期段階のかかわり方に関する問題と、もう1問は、昨年と同様に、障害などによってコミュニケーションに支障がある高齢者への介護職としてのかかわり方を問う事例問題が出題された。最初の1問は、人間関係を構築するうえで、利用者とのかかわり方を問う基本的な問題であり、ラポールとは何かを理解していれば解ける問題である。次の1問は、重度の加齢性難聴者への介護職としての日常のやり取りを始めるときのコミュニケーション方法から出題されている。障害の症状と利用者の状況を理解していれば解ける問題である。2問とも、「赤マル模試」にあるように、介護実践の場で活用できる知識や技術を身につけていれば、容易に解答できる問題であるといえる。事例問題としては、障害に応じた介護職の適切なかかわり方や、言葉かけを学習しておくべきであろう。
社会の理解 本科目は現代の福祉・介護を取り巻く様々な、状況、問題、福祉サービスという一連の流れを理解すると同時に、サービス提供の核となる法・制度等の幅広い知識が要求される分野である。今回の出題構成に関しても、事例問題1問を含む計12問が、出題基準内において、偏りなく出題されている。基準項目「生活と福祉」からは民生委員の委嘱、総合的保健サービスの提供に関わる保健センターの役割等、地域に密着した機関の知識が問われている。「社会保障制度」においては例年出題されてきた年金、保険等ではなく、第24回にも出題された生活保障を含めた社会福祉の基本的理念が出題された。また「介護保険制度」は例年出題数も多いが、創設の背景、目的、しくみの流れ、関係機関の役割等を整理しておけば解答を見いだせよう。次に「障害者自立支援制度」の事例問題において精神障害者の地域移行支援が出題された。過去において精神障害者に関する出題は少ないため戸惑いも考えられるが、自立に向けた地域支援を考慮することにより取り組みやすくなるかもしれない。そして「諸制度」として「障害者のシンボルマーク」についての設問は、身近によく目にすることからも解答しやすい問題であると思われる。
領域II
介護
介護の基本  出題数16問のうち、ほとんどが基本的な知識を獲得していれば解答できるものであった。 特に問題18においては、「赤マル模試」の問題19と類似しており、問題および解説をしっかりと読み込んでおけば安易に解けたのではないだろうか。その他、問題20、問題22、問題28については、昨年同様に利用者の生活の質や尊厳を優先して考えれば解答しやすい。 また問題32、「看取りにおいての介護職へのケア」についての出題は、選択肢が個人に対するものが多いが、「終末期ケア」をチームで行う中に、家族へのケアと同列に介護職へのケアが入っているということを考えていくと、答えが導き出しやすい。  問題21の短文事例については、ただICFの構成要素を覚えるだけではなく、その定義やアセスメント項目についての理解をした上で自らの答えを導き出すという、難易度の高いものが出題された。  今後も基本的知識のほかに、問題21のような知識を集約して応用する事務レベルの問題が出題されることも考えられるため、常にイメージをしながら学習されることをお勧めする。
コミュニケーション
技術
  昨年と同様に、8問の出題となっている。「介護におけるコミュニケーションの基本」から2問、「介護場面における利用者・家族とのコミュニケーション」から5問(事例問題3問)、「介護におけるチームのコミュニケーション」から1問と出題基準の大項目に沿ってバランスよく出題されている。問題38は、介護職が行う報告に関する出題であるが、実際の場面を想定して報告を具体的にどう活用するのかをイメージできないと間違いやすい問題である。総じて、今年の問題は、判断に悩むという出題はなく、「赤マル模試」にあるように、介護実践の場で活用できる知識や技術を身に着けていれば解ける問題である。利用者の状況・状態に応じたコミュニケーションの実際は、今後も出題されると思われる。様々なコミュニケーション障害の特徴・認知症や精神障害のある人への留意点を学習しておくことが大切である。また、事例問題として、今年は、苦情を題材にした問題が出題されている。今後、このような苦情を題材にした問題が出題されると思われる。介護現場での具体的な場面を想定した学習をしておくべきだろう。
生活支援技術  出題数は、昨年と変わらず20問、うち事例問題が3問であった。出題基準である大項目を網羅しており、とくに居住環境の整備(2問)、移動の介護(3問)、食事の介護(3問)、身じたくの介護(3問)、排泄の介護(2問)、家事の介護(2問)、終末期の介護(2問)からの出題が多い。 今回の試験から、図・表等を活用した出題形式がとられ、問題48では視覚障害者の歩行介助の基本姿勢を図で問う形式となっている。この科目では、今後も図・表等を活用した出題形式が出題されると予想される。 出題内容は、全般的に利用者の状況や状態に応じた対応方法・介助方法に関する基本的事項・基礎的知識を問うものが多くみられた。また、赤マル福祉模擬試験において出題された内容と類似している問題もみられ、焦らずケアレスミスをしなければ得点を積み重ねていくことができた内容であったと思う。ただし、総務省の家計調査に関する問題57については、他の問題と比べ若干難易度が高く、受験生の多くは解答に苦慮したことと思う。科目としての難易度は、前回と同様に標準的といえる。
介護過程  昨年と同様に出題数は8問であった。出題項目としては介護過程の「展開プロセス」の全般から7問出題されたが、そのうち「アセスメント」に関しては「アセスメントの基礎知識」「事例における生活課題の明確化」「主観的情報を得る方法」の3問が出題されており、比重が高かった。他、「計画の立案」に関して「介護目標」「介護計画」について2問、「実施」に関して「計画実施の場面におけるアセスメント」について1問、「評価」に関して「評価の実施に責任を持つもの」の1問が出題された。また「展開プロセス」以外では、「チームアプローチ」に関して「訪問介護員の役割」について1問出題された。今回の特徴としては、介護過程の基本的な考え方を直接問う問題は3問のみで、他は簡易な状況設定や短文事例による個別の状況下での具体的な介護過程の展開について問う方式で出題されたことであり、第25回問題と出題の傾向が類似している。総体的に、介護過程に関する基本的知識のみで解ける問題は少なく、事例における個別の状況を理解したうえで具体的な判断を求める出題が多いことから、例年より難易度がやや上がっている。

 

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