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第26回 介護福祉士国家試験 科目別分析【午前科目】

領域 午前科目 分析
領域I
人間と社会
人間の尊厳と自立   昨年と同様2問の出題で、法律に規定された自立支援から1問、介護職の支援のあり方に関する事例問題から1問出題されている。法律に関する問題では、昨年の介護福祉士の業務を明示した法律から、今年は、自立に関する法律で、「児童福祉法」「社会福祉法第3条」「老人福祉法」「障害者総合支援法」「ホームレス自立支援法」から、出題されている。「人間の尊厳と自立」に関する各法律の目的、内容について理解していれば十分解ける問題である。事例問題では、昨年は、「ハンセン病」の人権に関し、知識を問う問題であった。今年は、利用者の金銭トラブルに関する訪問介護員の初期の関わり方を問う問題となっている。成年後見制度、民生委員、地域包括支援センター等の用語が出ているが、知識のみではなく、どういう場合にどのような制度を利用できるのか、実務レベルでの判断が求められる。総じて、今年の問題は、正答の根拠が明確な出題であったと言える。目新しいところで、「ホームレス自立支援法」が出題されており、日頃から人権侵害に関わる諸問題に関心を示しておくことも大切である。
人間関係と
コミュニケーション
  昨年と同様2問の出題で、「人間関係の形成」から1問、「コミュニケーションの基礎」から介護職と利用者の関わり方に関する事例問題として、1問出題されている。昨年は、対人援助の基本姿勢を問う問題であったが、今年は、「自己覚知」の項目から1問出題されており、「自己覚知のために最も重視するもの」という形式の出題となっている。設問3として、「自分中心ではなく、他者中心に考える」というように、考えさせられるような出題となっており、自己覚知について良く理解していないと判断に時間を要する設問と言える。事例問題では、認知症の利用者と介護職の関わり方に関する出題で、介護職の忙しい時間帯での条件設定となっている。介護職が、実際の場面で具体的にとるべき行動や対応をイメージ学習できていれば、解ける問題である。総じて、今年の問題は、正答の根拠が明確な出題であったと言える。学習としては、各基礎的な用語に関して、単なる暗記ではなく、本質的な理解をしておくことが大切である。
社会の理解  生活と福祉3問、社会保障4問、介護保険制度3問、障害者総合支援法1問、介護実践に関連する諸制度1問と今年度も各分野から出題されていた。昨年と比べ社会保障の出題数が2問から4問に増え、介護実践に関連する諸制度が3問から1問に減った。生活と福祉から今年も、育児・介護休業法が事例形式で出題されており、法律の概要を知らないと解きにくい問題であった。生活と福祉、社会保障制度の設問は、用語の理解、年代ごとの制度の成立や出来事を知らないと解けないような、広く知識を確認するような出題傾向であった。平成24年度改正された介護保険制度関連では、地域包括ケアシステムから地域ケア会議に関しての設問があった。介護実践に関する諸制度からは、平成24年10月より施行された「障害者虐待防止法」からの出題がみられた。虐待の類型は「高齢者虐待防止法」と同様だが、使用者による障害者虐待防止を含む点や就学する障害者、保育所等に通う障害者、医療機関を利用する障害者に対する虐待について、それぞれ長や管理者に対し虐待の防止を義務付けている点など、「高齢者虐待防止法」との相違を把握していなくては解けない問題であった。
領域II
介護
介護の基本  出題範囲は昨年とほぼ同様で、今年度は「リスクマネジメント」や「マッピング技法」、「腰痛予防」等も出題された。
 「正しいもの」「最も適切なもの」を問う問題が多かったが、問題17に関しては「最も多かったもの」と統計の結果を問う出題、また問題30では統計の結果だけではなく、その予防を考えるという、応用を必要とするものがあった。
 基本的な知識で解ける問題が多かったが、その項目の定義だけではなく、幅広い知識を必要とされる問題もあった(問題18、21、27)。例えば、「社会福祉士及び介護福祉士法」の問題では、秘密保持義務の罰則が信用失墜のものになっており、「地域包括支援センター」の問題では、センターの多様な役割についてしっかり理解している必要があった。  短文事例が2問あったが、どちらも生活の質や尊厳を優先して考えれば容易に解けるものであった。
 得点に繋げるには、しっかりと参考書等を読み込んで、広範囲の知識を積むことが重要である。
コミュニケーション
技術
昨年と同様8問の出題となっている。「利用者の状況・状態に応じたコミュニケーション」では、昨年同様に、今年も3問、また、「利用者・家族とのコミュニケーション」では、昨年の3問から、今年は事例問題として2問の出題となっている。そして、「介護におけるチームのコミュニケーション」では、昨年の2問から、今年は3問の出題となっている。昨年と同様、出題基準からバランスよく出題されている。問題34について、ICTという用語が使われているが、基本的には個人情報の保護に関する問題であり、日頃の重要性を理解していれば解ける問題である。問題35では、「ヒヤリ・ハット」事例を共有する問題であるが、共有の意義を理解できていれば解ける問題である。総じて、今年の問題は、赤マル模擬問題を学習されていれば、十分解ける問題であり、正答の根拠が明確な出題であったと言える。今後に向けて、コミュニケーション障害の分類やその状態の理解を深めること、また、利用者・家族とのコミュニケーション或いはチームにおけるコミュニケーションでは、実際の場面を想定して、各種技法を具体的にどう実践活用するのかを学習しておくことが大切である。
生活支援技術  本科目は新カリキュラムになり高齢者の生活全般を支える広範囲からの出題であり、出題数も20問と多いが、あまり難易度は高くなく、赤マル福祉模擬問題でも意識していた内容が取り込まれており、比較的点数がとりやすい科目となっていたと思われる
 出題の形式で昨年と変わっていた点では、固有名詞などの単語的な選択肢がなく、本年度は全ての問題において簡単明瞭な短文選択肢であり、問いや援助の内容について理解しやすく、正誤が捉えやすかったのではないだろうか。また、昨年同様、短文事例の問題は4問出題されている。
 出題の内容を項目別にみると、「生活支援」、自立に向けた「身じたく」「睡眠」「排泄」「居住環境の整備」から1問、「入浴・清潔保持」「食事」「移動」「終末期」から2問、「家庭生活」から3問出題されている。特徴としては、介護の基本的事項は勿論だが、高齢者の特性や疾病に対する援助内容の本質や根拠をしっかり理解することの重要性、さらに問題55のクーリング・オフに関する問題からは、悪質商法など高齢者を取り巻く現代社会の時事問題への関心も重要であり、流動的な援助内容も生じてくることを示唆しているようにも思える。
 全問題を通じ、昨年同様ご利用者の生活全般を支えるための実践的な内容の問題であった。
介護過程  昨年と同様に出題数は8問で、介護過程の展開プロセスの全般から万遍なく出題された。介護過程の基本的な考え方を直接問う問題として、「介護過程の意義・目的」「情報収集」「生活上の課題」「計画の立案」「介護記録」「介護計画の評価」に関する内容から6問出題された。他2問は事例問題であり、1事例より「情報の解釈」「介護目標に対する支援方法の記述」について出題された。前半の6問は、基本的な概念や理論を問う内容が中心であるが、介護過程を実際に展開する際に必要とされる知識および具体的方法論を問う傾向にあり、昨年のような簡易な状況設定や短文事例による出題とは異なっているものの、事例問題同様に実践力に結び付く知識の習得が求められているといえる。
 質問の形式はいずれも「適切なもの」や「もっとも適切」なものを選択するものであった。出題難易度としては、昨年同様に基本的知識があれば解ける問題であるが、介護過程の各プロセスにおける具体的な理論と方法を習得し、実際に展開できる能力が求められる出題となっている。

 

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