介護福祉士国家試験情報第35回 介護福祉士国家試験 科目別分析【午後】

科目別分析【午後科目】

領域 介護

介護の基本

 出題数は昨年同様、10問。そのうち短文事例は昨年の3問から2問に減少している。今回の試験では、利用者主体の支援姿勢、求められる介護福祉士像、社会福祉士及び介護福祉士法、意思決定支援、ユニバーサルデザイン、認知症ケア、障害者に関するマーク、多職種の役割、チームアプローチ、介護事故予防について出題された。
 難易度としては、科目全体ではやや簡単であったと思われ、基本的な知識で解答できる問題が多かった。事例問題では認知症ケアに関する出題が多く、実践の知識を問う内容が多かった。問題70では、障害者に関するマークについての出題があり、認識がないと回答するのが困難であったと感じる。
 今回出題はなかったものの、地域密着型サービス、災害対策、感染症対策等、今後出題される可能性が高いと思われるため、併せて押さえておきたい。
 「介護の基本」は介護領域の中核を成す科目であり、自立支援や尊厳の保持、介護保険や障害者総合支援法のサービス内容、介護職員の就労環境など他の科目と重複する内容が多いため、他科目と合わせて学ぶことで重要である。

分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会

コミュニケーション技術

 本科目は例年8問の出題であったが、今回の試験では6問の出題となっている。6問のうち3問が短文事例問題であった。本科目は、すべての大項目からまんべんなく出題されている。「コミュニケーションの実際」からは質問方法についての出題であり、基本的な内容であった。「家族とのコミュニケーションの目的」では、利用者家族との信頼関係の形成についての出題であった。介護福祉職にとって信頼に基づく協力関係の構築はとても大切なことであるため理解しておくことが重要であると思われる。「障害の特性に応じたコミュニケーションの実際」では、老人性難聴・アルツハイマー型認知症のある人とのコミュニケーションについての出題であった。障害のある人とのコミュニケーションについては、例年出題されている。「障害の理解」と合わせて各障害の特徴や具体的対応について理解されていれば容易に解答できると思われる。「チームのコミュニケーションの実際」からは、報告・連絡・相談の意義と会議の留意点の問題であった。介護現場において、介護におけるチーム内の連携はとても重要であり実践で活かせるよう学ぶ必要がある。

分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会

生活支援技術

 試験科目別出題基準が変更され、本科目では、大項目は10項目から11項目へとなった。増えた項目は、「福祉用具の意義と活用」である。この項目からの問題は2問あった。しかし、本科目の問題数に変更はなく、例年通り26問であった。また、出題は、各大項目からまんべんなく出題されていた。26問のうち、イラスト事例は、1問。目の周囲を清拭する際の拭く方向を問う問題で、清潔保持の介護では基本的な技術である。短文事例は、昨年よりも1問増えて4問だった。問題の内容は、施設で生活をする利用者に対しての問いが2問。レクリエーション活動の計画を作成する際の留意すべき事についてと、もう1問は、尿失禁がみられた利用者に対して、状況に応じた対応を問う問題、他2問は、訪問介護員が利用者の状態・状況に対して、適切な判断と対応を問う問題であった。
 介護福祉職として、基本的な知識や技術の理解、利用者の疾患や身体状況に応じた留意点、自立支援の視点、高齢者が安全に生活するための支援方法を求める問題が主であった。それぞれの問題をよく読み、基本を理解していれば、容易に正解を導くことができる科目であった。

分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会

介護過程

 出題数は例年通り8問。科目全体の出題内容については、社会福祉振興・試験センターが示す出題基準と照らし合わせると、3つの大項目から満遍なく出題されていた。「1 介護過程の意義と基礎的理解」からは【問題106】介護過程の目的、【問題107】介護過程の展開プロセスにおける評価について問う問題、「2 介護過程とチームアプローチ」からは【問題108】介護サービス計画(ケアプラン)と介護過程の関係を問う問題、「3 介護過程の展開の理解」からは【問題109~113】事例問題形式で対象者の状態、状況に応じた自立に向けた介護過程の展開の実際を問う問題が5問出題された。
 今回、事例問題の出題数は8問中5問と全体の約6割を占めており、介護過程の基礎知識に加え、利用者の状態を身体面、精神面、社会面など多角的な視点で総合的に理解し、支援の方向性を導き出せるかという実践的な理解を問う傾向がみられた。また、事例対象者について、本科目ではこれまで65歳以上の高齢者の出題がほとんどであったが、今回は、65歳未満の障害者(35歳、脳性麻痺による身体障害者)に対する介護過程の展開について問う出題があった点は、新たな出題傾向といえるであろう。
 科目全体の難易度は標準的と思われ、過去問対策にしっかり取り組み受験に臨むことのできた受験生は、かなりの得点につながったものと思われる。

分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会

総合問題

 本科目は4領域(人間と社会、介護、こころとからだのしくみ、医療的ケア)の知識を総合的に問う問題が事例形式で出題された。1事例目はアルツハイマー型認知症の80歳、女性への地域包括ケアシステムにおける対応や自立支援を踏まえた内服管理について等が問われた。2事例目は脳梗塞で後遺症がある75歳、男性の事例。コミュニケーションの方法や希望に沿った支援計画について問われた。3事例目は脳梗塞で障害支援区分3、38歳、男性の事例。状態から考えられる失行や半盲のある場合の食事支援、ニーズを踏まえた障害福祉サービスについて問われた。4事例目は自閉症スペクトラム障害の男性35歳の事例。介護福祉職として利用者のストレングスを見出すことや特性を考慮した支援が問われた。また、介護・障害福祉事業所等において災害や感染症が発生した場合であっても、介護・障害福祉サービスが安定的・継続的に提供されることが重要であることから、業務継続計画(BCP)の作成が求められており、この内容についての出題は非常にタイムリーであったと言える。
 本科目は例年、65歳以上と65歳未満の利用者が各2名出題されており、この傾向は今回の国家試験でも同様であった。総合問題では、全ての科目が出題範囲となるため、事例の全体像を読み込む力が必要であり、各科目の理解度、応用力が問われた。そして、これらは介護福祉職としての知見を深めることに加え、「その人らしさを支える」ための専門性を持つことにつながる内容であると言えるだろう。

分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会