介護福祉士国家試験情報第36回 介護福祉士国家試験 科目別分析【午後】

科目別分析【午後科目】

領域 介護

介護の基本

 出題数は、昨年同様全10問。出題内容は、感染症対策、介護を取り巻く社会的状況や多様性、地域福祉、個人情報の保護、介護福祉士の職業倫理、災害時対応、短文事例は2問であった。
 科目全体の難易度は、落ち着いて取り組めば正解が導き出せる問題が多いと感じた。介護・障害福祉施設の業務継続計画(BCP)の策定が2024年度より義務化されることもあり、問題71では、洪水・内水氾濫に関するマークについての出題があり、タイムリーな内容であった。
 事例問題では2問とも在宅介護からの出題となっており、相談事例から利用するサービス計画の作成、サービスの適正化について問われている。全体的に介護福祉士の具体的な役割や対応について問う内容が多かった。介護福祉士の倫理綱領と行動規範を理解していることが重要である。
 「介護の基本」は、自立支援や尊厳の保持、介護保険や障害者総合支援法のサービス内容、介護職の倫理、災害時対応など多岐に渡るため、介護の中核をなす重要な領域であり、具体的な試験内容は年度ごとに異なる可能性が高い領域と考える。

分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会

コミュニケーション技術

 昨年の試験と同様6問の出題であった。「介護を必要とする人とのコミュニケーション」からは、コミュニケーションの手段についての出題であった。言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーションについて理解があれば、容易に解答できると思われる。「介護現場における家族とのコミュニケーション」からは家族との信頼関係の構築を目的としたコミュニケーションについての出題となっている。昨年も同様な出題がされており、介護福祉職にとって家族との信頼関係の構築はとても大切なことであるため理解しておくことが重要である。「障害の特性に応じたコミュニケーション」からは3問出題されている。脳梗塞後遺症で言語障害のある人・抑うつ状態の人・網膜色素変性症による夜盲のある人とのコミュニケーションについての出題であった。「障害の理解」の科目と重複する部分が多くあり、障害の特徴やそれぞれの具体的な対応と留意点が整理され理解していくことが求められている。「介護におけるチームのコミュニケーション」からは事例検討の目的についての出題であった。介護業務を円滑に行うために、必要な知識として理解を深め、実践に活かしていくことが大切である。

分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会

生活支援技術

 昨年より試験科目別出題基準が変更になり、本科目の大項目は「福祉用具の意義と活用」が増え、11項目となっている。出題数は、例年通り、26問あり、すべての大項目からまんべんなく出題されていた。問題内容は、イラスト問題が1問。握力の低下がある利用者が使用する杖として、イラストの杖から適切な解答を導き出すのだが、正しい福祉用具の活用について理解していれば解答できる問題であった。短文事例は4問だった。尿路感染症を予防する介護として最も適切な方法を問われる問題、家族の困りごとに対する訪問介護員の発言についての問題、睡眠中のいびきでよく寝られていない利用者に対する収集すべき情報を問われる問題、誤嚥性肺炎を繰り返している終末期の利用者の確認すべき事項を問われる問題であった。
 全体的に基本的な知識や技術の理解が問われる問題が多かったが、その他、介護福祉職としての立場で疾病や後遺症に対する対応や助言、他職種の役割を理解していれば、解答出来る問題などがみられた。問題をよく読み、落ち着いて考えれば、正解を導き出せる問題は多かったのではないかと考える。今回、最も優先度の高いものを5択から選ぶとう問題が21問あったが、この科目においては、この数年なかった問われ方である。

分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会

介護過程

 出題数は例年通り8問。科目全体の出題内容については、社会福祉振興・試験センターが示す出題基準と照らし合わせると、3つの大項目から満遍なく出題されていた。「1 介護過程の意義と基礎的理解」からは【問題106】介護過程の展開プロセスにおける情報収集の留意点、【問題107】介護過程の展開プロセスにおける評価について問う問題、「2 介護過程とチームアプローチ」からは【問題108】多職種連携における介護福祉職の役割、「3 介護過程の展開の理解」からは【問題109~112】事例問題形式で対象者の状態、状況に応じた自立に向けた介護過程の展開の実際を問う問題が4問、【問題113】事例研究において遵守すべき倫理的配慮が出題された。
 事例問題の対象者は、65歳以上の高齢者と、65歳未満の障害者(50歳、脳梗塞による左片麻痺、高次脳機能障害)であった。この点は、前回(第35回)国家試験と同様の出題傾向といえる。  事例問題については、介護過程の基礎知識に加え、利用者の状態を身体面、精神面、社会面など多角的な視点で理解したうえで適切な支援を提供する介護福祉士の実践力が問われるため、他の科目と共に複合的に学ぶ必要がある。
 科目全体の難易度としては、介護過程に関する基本的な知識があれば解答できる問題が多く、過去問対策にしっかり取り組み受験に臨むことのできた受験生は、高得点がとれると思われる。

分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会

総合問題

 本科目は4領域(人間と社会、介護、こころとからだのしくみ、医療的ケア)の知識・技術について、横断的に問う問題が事例形式で出題された。1事例目は前頭側頭型認知症の59歳、男性の行動から考えられる状態や介護保険制度等が問われた。2事例目は脊髄損傷の70歳、男性の事例。居宅介護住宅改修費の限度額等、在宅復帰に向けた支援の内容について問われた。3事例目は障害支援区分3、34歳、女性の事例。アテトーゼ型の脳性麻痺の状態から予測される二次的障害やサービス等について問われた。4事例目は自閉症スペクトラム障害と重度の知的障害、自傷行為が見られる20歳の男性の事例で、状態から考えられる障害や障害者支援サービス等が問われた。また、4事例目は、昨今の課題とされている「ヤングケアラー」であった介護者への対応について問われ、利用者はもとより、介護者の気持ちにも寄り添うように支援することが介護福祉職として大切であるという提言ともとらえられる。
 本科目は例年、65歳以上と65歳未満の利用者が各2名ずつ出題されていたが、今回の試験問題では65歳未満が3名と65歳以上が1名であった点が傾向と異なった。総合問題では、事例の全体像を読み込むことと、利用者の状態に合った障害福祉サービスや介護保険制度等、各科目をまんべんなく理解しておく必要がある。そして、介護福祉職として、今ある状態のみに目を向けるのではなく、「予測できること」や「自立支援」につなげる視点を備えていることが、総合問題を解くためにはより重要であったと言えよう。

分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会