社会福祉士国家試験情報第24回 社会福祉士国家試験 科目別分析【共通】
科目別分析【共通科目】
人体の構造と機能及び疾病
試験午前の最初の科目で、落ち着いて試験をスタートできるか否かが大きく分かれる科目である。出題傾向は、前回試験とよく似た出題傾向で事例問題も前回同様1問出題された。その分動揺することなくできた受験生も多かったのではないだろうか。難易度としては昨年よりもやや難しい程度であった。
問題1、問題2に関しては、加齢に伴う身体的変化と疾病、人体の構造と機能を具体的に問う設問で、正答の絞込みも容易であった。問題3「健康づくりのための運動指針2006」は詳細までチェックしていなかった受験生も多かったのではないだろうか。問題5の事例問題では、医療機関や施設、自宅等ではなく“町内会の運動会”での集団食中毒を設問として、状況から原因菌を選択するというもので、それぞれの菌についての知識が必要とされた問題であった。
心理学理論と心理的支援
旧カリキュラムから新カリキュラムになり、心理学理論と心理的支援の出題傾向も定まりつつあると実感するような出題であった。過去問での学習からもある程度効果を発揮出来たのではないだろうか。その分、ベーシックな問題と正しいものを絞り込むのに苦慮する問題との緩急がはっきりとしている。
問題8は知覚について、問題9は記憶についてはオーソドックスな出題であったが、問題10子供の発達は感情や情動だけでなく、身体、行動もふくんでおり、さらに問題11アイデンティティ・ステイタスについての問題は「最も適切なもの」の設問になっており、絞込みに苦慮した受験生も多かったのではないだろうか。同様に、問題12、問題13、問題14とも「最も適切なもの」の選択になっているものの、難易度としては高くない問題であった。
社会理論と社会システム
出題傾向としては、昨年同様に比較的オーソドックスなものが多く出題されていた。教科書に出てくる内容を理解しておけばある程度選択肢も絞り込め、正答を導きだすことは可能だったと思われる。
問題19のように単なる人物名とキーワードを結びつけ正答を導き出す問題であるが、過去問を勉強されていれば難なく回答を導きだくことは出来たと思われる。また、その他の問題もあまり難易度は高くなく、選択肢の文章をよく読んでいけば解答にたどり着ける問題であった。共通科目問題の中で点数を着実に伸ばすことが出来た人も多かったのではないか。
時事性の高い問題は少いので、「ジェンダー」・「非営利組織(NPO)」・「地域コミュニティ」など教科書のポイントをしっかりと押さえ、過去問の頻出問題を繰り返し解いておくことや模試の活用がキーポイントである。
現代社会と福祉
昨年と同様に我が国のみならず諸外国の動向や政策なども出題され、難易度は比較的高いものと思われる。また、歴史の出題が2問あるものの中心となったのは社会福祉をはじめとする「政策」であったため、過去の問題のみでは解答がしづらいものでもあった。さらにその政策も数年前のものが中心となり、継続的に諸外国の政策動向を見ておくことが必要となった。これは新しい出題基準に準じたために起こったことであろう。故に、今回は昨年度の問題を中心に勉強した解答者には若干解答が難しかったものと思われる。
問題自体は難問というよりは、出題範囲を把握していれば解答はできると思われる。例えば問題23は比較的オーソドックスな出題であり、出題された中では解きやすい。逆に、問題28は、介護保険制度創設時に注目された準市場やバウチャーなどの設問があるため、現行制度の経緯などを学んでおかないと難易度はあがってしまう。
ただし、そのような勉強さえすれば解くことは容易なので、結論としては幅広く言葉に惑わされないだけの知識量を持ちうるかを問うという出題傾向であったと言えるだろう。
地域福祉の理論と方法
今年の地域福祉の理論と方法は、過去問や模擬試験に取り組み基本的な考え方が理解できるようになっていれば、8割程度が回答できるような内容だった。
問題32、34については、地域福祉の理念や社会福祉協議会の歴史について問うものであるが、知識がないと解けない問題であり、ここで差がついたのではないか。他の8問は回答しやすい内容だった。問題33は、権利擁護と成年後見制度においての出題ではなく、日常生活自立支援事業の実施主体として求められることをこの科目で問うということが意義深い内容だと思う。
短文事例は、問題36、38、40と3問出題されたが、地域福祉の基本的な考え方を理解していれば簡単に選択肢を絞ることができる。問題35、37、39、41は過去問に取り組んでいれば、容易に選択肢を絞ることができたと思う。
福祉行財政と福祉計画
テキスト及び過去問を深めて学習すれば正解が得られた問題が4問(問題42、45、47、48)ベーシックな学習方法では正解を得ることが困難であった問題が3問(問題43、44、46)といった出題内容であった。
問題42は法定受託事務に関する問題で、地方分権一括法によって機関委任事務が廃止された理由をしっかりと理解できていれば、正解できる。問題45は定番となっている「厚生労働白書」と「地方財政白書」からの出題であった。問題47は福祉計画策定時における必要な措置に関する問題であるが、各計画の意義を理解していれば、比較的容易に正解を導ける。問題48は昨年に引き続き、福祉計画の策定状況に関する問題で、具体的な数値を把握していなくとも、各計画の目的と社会的な背景を考慮すれば、必然的に正解を得られる。
一方、社会福祉士の国家試験問題として出題すべきか疑問がもたれる、市町村合併に関する問題43、指定管理者制度の内容を理解できていないと正解が得られない問題44、福祉計画に伴う財政のあり方といった、実際に行政職として従事していないと正解を得ることが容易ではない問題46など、受験生泣かせの問題も出題されている。この科目の受験対策としては、テキストで基本事項を学びつつ、行政職が実務を行う上で問われるであろう知識を併せて学習していくことが望まれる。
社会保障
事例問題が1問増え3問となり難易度を下げようという意図が見える。しかし、その事例問題を含め、制度の実際の面が出題の中心になっているため、今までよりも若干ではあるが深く学んでおく必要がある出題傾向であった。また最近の動向である子ども手当も出題されたが、平成22年次における出題であったため、子ども手当がどのようなものかを理解しておく必要があった。しかし、最近の与野党合意などを見れば子ども手当が児童手当、あるいは子どものための手当などのように流動的であったため、考えがまとまらないということもあるだろう。
その中で、問題51~53の事例問題がやはりこの科目においては、得点しやすい部類に入るだろう。特に問題52、53は教科書的な説明を実例に落とし込んで、さらに問題文に難しい言葉がない分、考えやすかったのではないだろうか。しかし、たとえそうであったとしても、労災保険や育児休業の事例をどのように学んできたかによって難易度はかわってしまう。全体としては社会保障の問題らしくない字面ではあるが、難易度は例年同様、難しかったと言えるだろう。
保健医療サービス
今回の試験問題は、これまでの出題内容から目立った変化がみられず、新カリキュラムになってからの出題パターン通りの出題内容であった。しかし、それぞれの問題の難易度としては、易しいものではなく各出題項目を丁寧に理解と整理していなければ自信を持って正答することが出来なかったのではないだろうか。
問題65、問題67、問題68は医療法や医師法、インフォームドコンセントを複合して問う問題が出題され、単に法律を確認している程度では迷う問題もあった。また、事例問題として問題64医療保険制度についての問題は、給付と負担の理解の知識が問われた。問題69脳卒中連携パスは前回試験の事例においても同種の分野からの出題で、準備をしていた受験生も多かったのではないだろうか。
権利擁護と成年後見制度
今年は、回答しやすい問題が多かった。短文事例は、3問出題されたが、他の問題と同じく知識を問うものであった。
問題70、72、73、74、76は、制度の基本を問う問題で、過去問や模擬試験に取り組んだ受験生は、選択肢を絞りこみやすかっただろう。問題71、75で、一歩踏み込んで理解を広げた受験生は差をつけることができたのではないか。問題71は、相続の制度の基本を理解したうえで、教科書ででてくる特別受益について理解することで解ける問題。問題75は、過去に出題された「成年後見関係事件の概況」の直近データを自分で調べて傾向を理解しておくことで解ける問題。成年後見事件の概要については、ホームページで簡単に見ることができるので、直近のデータは知っておく必要がある。