精神保健福祉士国家試験情報第16回 精神保健福祉士国家試験 科目別分析【専門】

科目別分析【専門科目】

精神疾患とその治療

精神医学について、幅広く学習していたかが問われる内容でした。
出題内容を見てみますと、精神疾患や治療法だけでなく、それらに関連する領域についても理解できているかが問われました。問題2では脳の部位とその損傷による症状について出題されましたが、これは戸惑った方も多かったかもしれません。ピック病(前頭側頭型認知症)を理解できていたかがポイントとなりました。問3では修正型電気けいれん療法について出題されました。きちんと学習していなければ正解することは難しいといえるものであり、差がつきやすい内容といえます。問7では初診時の精神科面接についての問題であり、目新しい出題傾向といえました。「精神科面接」とありますが、相談援助における面接の注意点をもとに判断できたかが問われる内容でした。問8では検査の種類と検査名について出題されましたが、これも問3と同様きちんと理解できていたかで差がつく内容であった。
一部に目新しい問題や差がつきやすい問題があるものの、全体としては基本的な学習をしっかり行っていれば対応できる問題が中心であり、難易度は例年並みであったといえます。

分析: 赤マル福祉事務局

精神保健の課題と支援

出題内容としては、精神保健および関連する領域に限らず、それ以外の領域からも出題されており、ここ数年の出題傾向を踏まえたものでした。
問題ごとに内容を概観すると、問題12では、災害や事故で突然家族を亡くした遺族について出題されました。一見、目新しい出題傾向ですが、選択肢文を一つずつ落ち着いて読み、正誤を判断できたかが問われるものでした。問題14では、犯罪被害者等基本法から出題されました。更生保護制度について深く学習していたかで差がついたものと思われます。問題15では、性同一性障害について出題されました。精神の専門科目での出題は過去になく、難しく感じた方も多かったものと思われます。問題19では法規とその内容、問題20では精神保健に関連する民間団体が出題されましたが、法令について踏み込んだ内容であったり、初めて見る用語が並び、難易度の高い問題といえます。
全体としては、オーソドックスな問題がいくつか見られ、確実に正解したい問題がある一方で、見慣れない用語や出題内容といったような過去問やテキストだけでは対応が難しい問題もあり、難易度はやや高いものと思われます。

分析: 赤マル福祉事務局

精神保健福祉相談援助の基盤

相談援助の基盤となる内容を中心に出題されました。今回の国家試験では、精神保健福祉士法や日本精神保健福祉士協会倫理綱領、ソーシャルワーク理論の人名、ソーシャルインクルージョン、権利擁護、多職種連携などが出題されました。
基礎的な問題から難問まで多彩な出題内容となっていました。中でも、問題21の精神保健福祉士法と問題22の日本精神保健福祉士協会倫理綱領の2問は、国家試験に合格する上でも確実に正解すべき内容でした。その一方で、問題27では医療機関における専門職について問われました。細かな内容について問われてはいるのですが、医師との関係性をもとに考えれられるかがポイントとなりました。
また、3問1セットの事例問題ですが、いずれも精神保健福祉士の対応だけでなく、社会資源や援助技術に関する知識などが問われました。選択肢中に見慣れない用語がいくつか出ていたのですが、これらの用語を知らないと正解することが難しい問題も含まれていました。
全体的な難易度としては、正確な理解を必要とするものや、見慣れない語句も多く出題されていたことからも、昨年と同様に難易度はやや高かったものと思われます。

分析: 赤マル福祉事務局

精神保健福祉の理論と相談援助の展開

この科目では、相談援助に関する理論やその実践を中心に出題されました。問題は全部で25問でしたが、3問1セットの事例が4セット(全12問)に加え、単文事例の形式でも何問か出題されました。
出題内容は、権利擁護活動、支援機関、ストレングス支援、グループワーク、地域ネットワーク、ケアマネジメント、ソーシャルインクルージョンなど、多岐にわたって出題されました。この科目の最初の問題36では「精神保健医療福祉の更なる改革に向けて」が出題されたこともあり、戸惑った方がいたかもしれません。
事例問題では、精神保健福祉士として適切な対応などといった実践的な内容だけでなく、援助技術に関する知識や関連用語を理解できているかが問われる問題も多く出題されました。また、問題55のニーズの把握の方法、問題59の活動を勧めた目的など、様々な角度から出題されるので注意が必要かもしれません。
この科目全体を通し、難しく感じる問題も中には含まれていますが、精神保健福祉士として相談援助業務を行う上での援助技術をきちんと理解できているかを問うものが中心といえるものでした。全体的な難易度は、昨年とほぼ同程度であったものと思われます。

分析: 赤マル福祉事務局

精神保健福祉に関する制度とサービス

精神保健福祉士として、相談援助業務を行う上で確実に理解しておくべき内容を中心に出題されました。
問題ごとに内容を概観すると、問題62では障害者の定義に関する法律上の規定が問われましたが、「障害者差別禁止法」が出題されたのは注目すべき点といえます。また、問題63では健康保険、問題64では介護保険制度の単文事例が出題されました。これらは共通科目の社会保障で出題される内容を含んでおり、面食らった人も多かったかもしれません。問題65から問題68では更生保護制度に関する問題が4問連続して出題されました。昨年は3問連続出題されていたことからも、更生保護法や医療観察法についてもしっかりと学習しておく必要があったといえます。問題69では社会調査について出題されています。苦手意識をもっている人も多いと思われる内容なので差がつく問題といえます。問題70~72の3問1セットの事例問題では、虐待について出題されました。精神保健福祉士の対応や社会資源についての理解が問われる内容でした。
全体的には、例年とは異なった出題傾向であることからも、昨年よりも難易度が上昇したものと思われます。

分析: 赤マル福祉事務局

精神障害者の生活支援システム

精神障害者の現状や就労支援、権利擁護や住居入居等支援事業など、多岐にわたる出題であり、横断的な学習をしていたかが問われる内容でした。昨年は就労支援に関する問題が8問中4問でしたが、今回の試験では1問となっており、就労支援以外についてもテキストを元に学習をしっかりと行ったかで差がついたものと思われます。  問題74ではふさわしい制度を選ぶものでしたが、問題文の情報から最も適切なものを判断する力が問われました。
問題77では社会資源についての理解が問われるものでしたが、「精神保健福祉法」を手がかりに回答できたかがポイントとなりました。
問題78~80の3問1セットの事例問題では、市の障害福祉課に勤務する精神保健福祉士について問われました。「市の障害福祉課」であることに注意し、事例文をもとに回答する必要があり、総合問題といった内容といえます。中でも、問題80の思いとどまった法的根拠を問うものは今までにない出題傾向といえるものでした。
昨年に引き続き、問題の難易度は高かったものと思われます。

分析: 赤マル福祉事務局