精神保健福祉士国家試験情報第27回 精神保健福祉士国家試験 科目別分析【専門】

科目別分析【専門科目】

精神医学と精神医療

 今回の国家試験では、精神疾患や治療法に関する問題だけでなく、関連する領域からの出題もいくつか見られました。「精神保健福祉制度論」の問題数が6問といったことも考慮されての問題構成になったように思います。
 出題内容について見てみますと、問題1では心理検査について問われました。問題文中の「成人の認知能力」といった語句から適切なものを選べたかがポイントとなりました。
 問題2~6の5問については基本~標準レベルの出題であり、これらの問題で確実に正解したい出題内容でした。問題3については、問題文中の「被災して3日が経過した」という箇所から正しい選択肢を選べたかが求められました。
 問題7は、精神科病院における業務従事者による精神障害者への虐待に関する出題でした。2024年4月から改正された「精神保健福祉法」の内容で、最近の動向についての出題となりましたが、しっかりと学習していたかで差がつく問題の一つとなりました。
問題8の「医療観察法」、問題9の精神医療と保健、福祉との連携については、他の科目でも出題される可能性のある内容でしたが、用語や制度について正しく理解していたかが問われました。
 この科目全体を通してみると、難易度は基本~標準的なレベルといえ、高得点が取れたという方も多かったものと思われます。

分析: 赤マル福祉事務局

現代の精神保健の課題と支援

 この科目は、旧カリキュラムの「精神保健の課題と支援」に引き続き、出題範囲が幅広く、試験対策が難しい科目の一つとなったのではないのでしょうか。
 問題10は「令和2年患者調査」から統計データについての出題となりましたが、これは確実に正解してほしい問題の一つでした。
 問題11では、精神保健活動の三つの側面における支持的精神保健について出題されました。この問題では支持的精神保健について理解できていたかが問われ、難易度が高かったものと思われます。
 問題12では症候群について出題され、戸惑った方もいらっしゃったかもしれませんが、問題文から適切なものを判断できたかが問われました。
 問題15では職場でのハラスメントについて出題されました。過去の出題実績は少ないものの、選択肢文を読み、明らかに誤っているものを減らし、正しいものを見つけられたかが問われました。
 問題16のストレスチェック制度、問題17の自殺対策活動は、過去に関連する内容からの出題があり、ここでしっかりと点数を取り、差をつけたい問題の一つとなりました。
 問題18の保健師につきましては、過去に出題実績がなく、正答率は伸び悩んだものと思われます。
 この科目全体を通してみると、旧カリキュラムの頃のような見慣れない語句からの出題、難易度の高い問題は減少したものの、点数は比較的取りにくかったものと思われます。

分析: 赤マル福祉事務局

精神保健福祉の原理

 この科目では、精神保健福祉の原理について幅広く出題されました。
 問題数は9問、問題25~27は3問1セットの事例問題でした。
 問題19では、障害者福祉を支える理念や概念について、用語の理解を問うもので、選択肢文を1つずつ読み、正しいものを選べたかが問われました。
 問題20は問題文から宇都宮病院事件、問題21では問題文中の「長年病院内で変化のない集団生活をつづけたことで気力が失われ、退院を諦めるようになった」といった記述を手がかりにできたかがポイントとなりました。
 問題22と23はこの科目ならでは、という出題内容でした。問題23の精神保健福祉士法成立の社会的背景については、他の問題と比較して正答率が伸び悩んだものと思われ、差がつきやすい出題内容となりました。
 問題24は精神保健福祉士法で規定された精神保健福祉士の義務について問われました。過去にも何度も出題されており、確実に正解したい問題の一つでした。
 3問1セットの事例問題は、ひきこもりに関する相談援助について、精神保健福祉士としての視点や考察力が問われる出題でした。
 この科目全体を通してみると、バランスの良い難易度であり、ある程度の点数が取れたものと思われます。

分析: 赤マル福祉事務局

ソーシャルワークの理論と方法(専門)

 この科目では、精神保健福祉士として相談援助活動を行うにあたり理解しておくべきソーシャルワーク理論について出題されました。
 問題数は9問、問題34~36は3問1セットの事例問題でした。
 問題28は、精神保健福祉士の実習を題材に、指導した内容について出題されました。選択肢の用語を正しく理解できていたかで差がついたものと思われます。
 問題29では「感情の反映」について出題されました。選択肢文からどの面接技法が活用されているのかが判断できたかが問われました。
 問題30のナラティブアプローチ、問題31のインターディシプリナリー・モデル、問題32のコミュニティワーク、問題33のソーシャルアクションは過去にもよく出題されたものでしたが、問題31と32は「2つ」選ぶ出題であり、正確な理解が求められました。
 3問1セットの事例問題は、精神障害者の退院支援についての出題でした。精神保健福祉士がクライエントに返す言葉や行った支援について、事例文をもとに適切なものを選ぶことができたかが問われました。
 この科目の出題内容として、単純な知識を問うだけでなく、実践の場を通し、適切な選択肢を選べたかを問うものが多かったのが特徴でした。しかしながら、難易度は決して高いとはいえず、高得点となった方も多いものと思われます。

分析: 赤マル福祉事務局

精神障害とリハビリテーション論

 この科目からは6問出題されますが、後半で3問1セットの事例問題が出題されました。
 問題37のアンソニーらによる「精神科リハビリテーションの基本原則」は、基本的な出題であり、確実に正解しておきたい内容でした。
 問題38ではパーソナルリカバリーについて出題されました。一見、見慣れない語句のように感じた方もいらっしゃるかもしれませんが、リカバリーについて理解できていたかが問われました。
 問題39は、問題文を読んで適切なプログラムを選ぶものでした。問題文中の「相手の気持ちを大切にしながら自分の意見を主張できることを目指す」プログラムが何か、というのがポイントとなりました。
 問題40~42の3問1セットの事例問題ですが、アルコール依存症に関する出題でした。事例文を元に精神保健福祉士の対応であったり、紹介されたプログラムの特徴、自助グループとして正しいものを選べたかが問われました。問題41はプログラムが何なのかを理解した上で正しいものを選ぶ必要があるため、この科目の中では、やや手ごわかった出題内容であったものと思われます。
 この科目全体を通してみると、基本的な内容をしっかりと理解できていたかが問われる出題内容で、かなりの高得点になったものと思われます。

分析: 赤マル福祉事務局

精神保健福祉制度論

 この科目の問題数は6問、後半で3問1セットの事例問題という構成でした。
 精神障害者を支援していくにあたり、制度についての出題数はもう少し多くても良いように思いましたが、確実におさえておくべき事項を中心に出題されました。
 問題43の「精神保健福祉法」に規定されている機関、問題44の精神医療審査会はいすれも確実に正解してほしい出題です。これら2問での失点は命取りとなりかねません。
 問題45では、生活保護制度について出題されました。正しいものを「2つ」選ぶ問題でしたが、それぞれの○×を正しく判断できたかで差がつく問題となりました。
 問題46~48の3問1セットの事例問題ですが、入院形態や退院後の通院医療費の負担軽減のためのサービス利用等について出題されました。問題46の入院形態、問題47のE精神保健福祉士が担っている役割、これも確実に正解したい問題でした。問題48は事例文より自立支援医療(精神通院医療)と判断し、その上で正しいものを選べたかが問われました。
 この科目全体を通してみると、基本的な出題がほとんどであり、多くの方が高得点となったものと思われます。

分析: 赤マル福祉事務局