精神保健福祉士国家試験情報第27回 精神保健福祉士国家試験 科目別分析【共通】

科目別分析【共通科目】

医学概論

 午前の第一番目の科目である医学概論は、新カリキュラム最初の科目でもあり受験者にとても興味深い内容であったと思われる。前回までの人体の構造と機能及び疾病の設問に類似した問題ではあるが、より専門的な知識が求められる設問であるため、受験対策のテキストを参考に学習を積んできた受験者にとっては解答しやすい問題ではないかと思われる。
 まず、問題1の思春期・青年期の心身の特徴については、旧カリから紹介されている内容であり、正確に理解しておくことが求められた設問であった。問題2の高齢者の薬害有害事象については、高齢者施設におけるリスクマネジメントの方法が問われているとして捉えるとともに、薬に特性を理解しておくことが求まられる問題であった。
 また、問題3の筋骨系に関する設問は人体構造のテキストにも紹介されている問題であったが、筋骨系に関しては予想しにくい設問であった。
 続いて問題4の難病に関する問題は指定難病の理解と法制度における位置づけが問われた問題であり、問題5の肺炎の問題も過去問を参考に予想した受験者は解答しやすかったと思われる。  最後に問題6の入院形態の事例問題については、近年増加している若者の精神疾患に関する事例であり、精神科の入院形態の種類と内容を正確に理解している受験生にとっては正解につながる内容であると思われるため、この問題を通じてもテキストの内容を熟読しておく必要性を強く感じた。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

心理学と心理的支援

 昨年度までの7問から、今年度より設問数が1問減って6問になった本科目であるが、例年同様、今年度の出題も全体的に基礎的な内容に対する理解を問う出題がほとんどであった。中には基本的な事項ではあるが、細かいところまでしっかりとした理解が求められる出題もあった。昨年度は出題分野の偏りが見られていたが、今年度の出題は、公表されている試験科目別出題基準の大項目の中からバランスよく多岐にわたって出題されていた。
 問題7は記憶の分類についての理解を問う出題であった。基本的な項目を押さえておけば正答を導き出せたであろう。問題8は人の行動に対する他者の影響、集団についての理論について問う出題であった。選択肢のいずれも基本的な概念であり、基本的な知識があれば正答を導き出せたと思われる。問題9はエリクソンの発達段階説についての出題である。発達階それぞれの心理社会的危機まで押さえておく必要があり、ここは迷った受験生もいたかも知れない。問題10は、心の健康についての出題であった。ストレスに関する基本的な事項を押さえておけば正答を導き出すのは容易であったと思われる。問題11はマイクロカウンセリングについての出題であった。マイクロ技法についての理解が求められており、受験生もどの選択肢にするか迷ったかも知れない。問題12は心理療法についての基礎的な出題であった。基本的な事項を押さえておけば正答が導き出せたと思われる。
 全体的には過去問について勉強するとともに、テキストを丁寧に読むことも必要であったと思われる。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

社会学と社会システム

 新カリキュラムになり、科目名が『社会学と社会システム』に変更された。昨年度まで7問の出題構成であったが、今年度は6問に減少した。出題分野や内容は例年出題される、社会集団、都市、人物と提唱した理論の組み合わせを問うもの、国民生活基礎調査を含む統計問題は引き続き出題されていたが、社会的ジレンマ、ライフサイクルに関連した出題は見られなかった。過去問題やテキストに沿って学習を続けていれば予想通りの出題内容であったと言える。
 各問題とも選択肢の内容はやや難解な印象だが、選択肢を消去法で絞り込み、正答を導き出すことは可能であったと思われる。問15では地域の過疎化が出題され、例年では都市化や人口に関連して出題されていたため、過疎に焦点を当てた出題は意外であった。しかし、国勢調査など狙われやすい統計資料の概要を把握していれば、総合的に判断して正答を導き出せたであろう。問18は災害に関する出題であったが、過去数年災害に関連した出題はなかったため、戸惑った受講生も多かったかもしれない。しかし、「災害レジリエンス」という言葉を知っていれば容易な問題でもあった。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

社会福祉の原理と政策

 全体的に旧カリキュラムの「現代社会と福祉」の内容を継承しながら、社会福祉の思想、哲学、理論、歴史とした原理的な内容が含まれた出題であった。問題19の英国におけて福祉国家から小さな政府への転換については、欧米の福祉政策を学んでいれば解ける問題だったと言える。問題20の大正期の社会事業については、日本の社会福祉の歴史的展開の過程を理解し、時代背景も加味しながら解いていけば答えが出る問題であった。問題21のノーマライゼーションの考え方に基づく支援では、社会福祉士として理解していなければならない基本的な問題であった。問題22の持続可能な開発目標(SDGs)がターゲットにしている極度の貧困の参照基準については、人間の尊厳が守られた環境で生きて行く為、必要な基準であり、専門職して理解しなければならない内容であるが、選択に悩まれた方は多かったと思われる。問題23の多文化共生社会の実現については、近年における外国人材の受け入れに伴う多文化共生に向けた課題などがあり、今後もこのような問題は出題する頻度が増えてくると予測される。問題27の間接差別については、直接ではなく間接としたことで戸惑った方が多かったのではないだろうか。ただ、差別を間接的に考えることは専門家として必要な視点と言える。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

社会保障

 社会保険制度の体系や概要などの出題がされたことは全体的には予想通りの内容だったと思われる。ただ、各制度の内容を表明上のみ理解ではなく、問題32及び問題34の事例などしっかりの制度の概要を理解しなければ、正解を導くことは難しかったと推測される。問題33の公的年金の給付は予想通りと思われるが、民間保険制度について出題が無かったことは意外であった。問題28の社会保障制度の加入に関しては、選択内容として厚生年金、雇用保険、介護保険、健康保険、国民年金など加入方法をしっかり理解しなければ、うまく解けず、悩まれた方も多かったのではないだろうか。問題35の雇用保険制度について労働側の目線から考えて、今後も出題回数は増えてくると思われる。問題36の諸外国における公的医療と公的年金の制度については、出題されることは予測できた方も多かったのではないだろうか。問題30の令和3年度社会保障費用統計による社会保障の費用等については、旧カリキュラムでも関連した問題が出題していた為、予測できた方も多かったのではないだろうか。ただし、医療、年金、福祉その他の部門別や社会支出を自分なりに整理していなければ難しかったと言える。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

権利擁護を支える法制度

 「権利擁護と成年後見制度」から「権利擁護を支える法制度」と変わり、問題数が7問から6問に減少したが、権利擁護3問、成年後見制度3問であり配分は同じ傾向といえる。
 権利擁護は、民法の1問は「親等計算」の知識であり基本事項である。障害者虐待、障害者差別に関して各1問であった。障害者の権利擁護としての虐待3法(障害者、高齢者、児童)は、その目的、通報義務等について必須知識として確認しておいてほしい。憲法、行政法関連の出題がなかったが、これまでの出題傾向から軽視すべきではない。
 成年後見制度の2問については、成年後見制度の役割を問うもの及び成年後見制度利用促進法に関連した国、都道府県、市町村の役割を問うものであり基本的知識といえる。成年被後見人の欠格条項(選挙権、会社役員等)に関する設問は、数年前の法改正に関する知識を問うものであり、やや難解であったと思われる。なお、最高裁判所の「成年後見事件の概況」や全社協の「日常生活自立支援事業」に関する統計及び成年後見制度の改正議論にもつながっている障害者権利条約や「意思決定支援」については、今年は出題されなかったが必須の項目として押さえておくべきである。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

地域福祉と包括的支援体制

 重層的支援体制整備事業や地域共生社会等、現代の地域福祉のトピックスとも言えるテーマを中心に、社会福祉協議会や地域包括支援センターの取り組む事業、地域福祉を担う方々の役割等について問われる設問が多かった。また、災害時の福祉の取り組みについて問われるものもあったが、全体を通して、地域福祉に関する基本的なことを問われている設問が多かったように思われる。事例問題についても、社会福祉士としてどのように『地域で暮らすクライエントの生活』を捉え、自立した生活が送れるように支援を行うにはどうしたらよいか、を問われる内容となっていた。途中、選択肢の中から2つを選択することを問われる設問があり、受験生の中には戸惑った方もいたかもしれないが、落ち着いて設問を読むことで正答を導き出せる設問だったように思われる。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

障害者福祉

 6問のうち、昨年同様2問が事例問題であった。新カリキュラムでの国家試験に移行し、「就労支援サービス」についても「障害者福祉」の分野に含まれ2問が出題された。
 適切なものや正しいものを1つ選ぶ問題が5問で、適切なものを2つ選ぶ問題が1問出題された。問52は統計データからの出題であり、「生活のしづらさ調査」は第34回(令和3年度)以来の問題であった。今後も最新の統計データについて押さえていく事が必要であろう。問53は「基幹相談支援センター」に関する問題であり、他の機関とのサービス内容の違いについて理解していく事が必要であった。問54は事例問題であり、「精神保健福祉法」に基づく入院形態の問題であった。基本的な事項であり、出題機会も多いことから押さえておきたい内容である。問55は「障害者差別解消法」に関する問題であり、「障害者基本法」の定義や規定について比較する問題や改正された民間事業者の合理的配慮についても出題されていた。問56は「障害者雇用促進法」からの問題であり、精神障害者に関する問題も出題されていた。問57は事例問題であり、大学での統合失調症の診断を受けた学生の相談に関する出題であった。また事例の中で就職活動への不安を訴えていることから、就労に関する分野についても問う問題であった。
 以上の出題内容から、第37回試験は基本を問う問題や、過去に出題された内容を踏まえた出題もあり、過去問を何度も繰り返し解き、理解すれば対応できる問題であった。また、精神障害に関する出題も多く出題されていた。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

刑事司法と福祉

 『更生保護制度』の科目が、今年度より『刑事司法と福祉』に改められた。受験生としては出題傾向が分からず、学習方法が分からないままの受験になったことであろう。それでも6問中3問は『更生保護制度』の時に頻出していた問題であったため、落ち着いて取り組めば解答できたであろう。
 個別の出題を見ると、問題58は犯罪の成立要件と責任能力判断からの出題、問題59は刑事手続きからの出題であり、テキストを中心に丁寧に学習を進めてきた受験生には十分に解けた問題であろう。問題60は恒例の保護観察に関する問題、問題61は更生保護に関わる人・組織に関する問題、問題62は医療観察法に関する問題であり、昨年度までの『更生保護制度』科目で頻出問題である。新科目で出題傾向が分からなくても、過去問を学習していれば容易に解けたと思われる。問題63は犯罪被害者等基本法に関する問題であり、こちらも確実に学習を進めていれば解けた問題である。いずれも、奇問・難問はなく、得点しやすい科目であったと思われる。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

ソーシャルワークの基盤と専門職

 出題傾向としては、昨年度までの『相談援助の基盤と専門職』の出題傾向と同様の範囲からの出題であった。受験生としては比較的点数の取りやすい科目ではあるが、今年度はやや考えさせられる問題があったように思われる。
 個別の出題を見ると、問題64、65は恒例の「社会福祉士及び介護福祉士法」、「ソーシャルワークのグローバル定義」からの出題であり、受験生としては期待どおりの出題であっただろう。問題66はノーマライゼーションに関する事例問題であるが、ノーマライゼーションを提唱した人物のそれぞれの概念を理解しておかなければ解答できない問題であった。問題67の事例問題ではスーパービジョンの意義を問う問題であり、ソーシャルワーカーとしての資質向上を目指す上で押さえておきたい内容である。問題68は、セツルメントの歴史を確実に理解しておく必要があった。この科目の基本を成す内容であり、そういった意味では良問であるといえよう。問題69は、ドルコフらによる倫理原則の優先順位を完全に記憶していなくても、落ち着いて設問を読めば解答できたと思われる。
 過去の出題内容と比較して、難易度が上がったというよりは引っかけ的な問題があり、戸惑う選択肢が散見された。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

ソーシャルワークの理論と方法

 今年度より本科目は9問の出題となった。そのうち事例問題は6問であった。また選択肢を2つ選ぶ問題は3問であった。事例問題に関しては、近年の傾向として、現場感覚や常識で解答を導き出せる様な出題はほとんどなくなってきており、知識がないと解けない題も少なくない。さらには、他の科目の知識を求められる場合もある。全体的に難問奇問はなく、基礎的な知識の習得を求められている出題がほとんどである。しかし基礎的な知識について正確な理解を求められている場合も少なくなく、受験生が迷うであろう出題も散見された。
 問題70は事例問題であるが、内容は他科目「刑事司法と福祉」の特別調整に関する理解が求められている。更には福祉施設の機能についても知っておく必要がる。問題71はソーシャルワークの実践モデルやアプローチについての知識を問う出題である。問題72は事例問題であるが、問題71と同様、実践モデル、アプローチについての知識がないと解けない出題である。基礎的な理解があれば容易に解答を導き出せたと思われる。問題73は若年性認知症の人の支援に関する出題であり、企業内での若年性認知症への対応についての知識が求められ、やや難しかったと思われる。問題74は地域包括支援センターにおける齢者支援についての基礎的な出題である。問題75は 実践の評価についての基礎的な出題である。問題76はコノプカのグループワークについての一般的な知識が求められており、解答に迷った受験生もいたと思われる。問題77はグループワークの準備についての出題である。こちらも用語に対する正確な知識が求められており、迷ってしまった受験生も少なくなかったであろう。全体的に実践に即した良問が多かったように思われる。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会

社会福祉調査の基礎

 昨年までは、専門科目で午後一番目の科目であったが、今年度からは共通科目でかつ、問題数も1問減り6問であった。問題79のブース(Booth,C.)ロンドン調査は、社会福祉調査の歴史において重要な事であり、問題80の調査における倫理と共に必ず学習しておくこと。
 問題81、82は事例問題で、質問紙調査にて質問文を作成方法と留意点についてから、配布と回収方法について問われているが、基礎的な内容ではあるため、しっかり対策を行っておく必要がある。問題83は短文事例で量的調査における集計と分析方法が問われた。量的調査において基本的な内容ではあったが、しっかり対策が出来ていないと回答するのは難しかったと思われる。問題84は質的調査における面接法を問われた。
 今回は社会調査における基本的事項が中心に出題された印象であり、問題数は減り今後はさらに細かい部分の出題も可能性としてはあるが、それでも近年出題傾向は変わっていないので、基礎的な学習を積み重ねていくことが大事である。

分析: 一般社団法人 千葉県社会福祉士会