介護福祉士国家試験情報第34回 介護福祉士国家試験 科目別分析【午前】

科目別分析【午前科目】

領域I 人間と社会

人間の尊厳と自立

 昨年と同様2問の出題であった。各大項目より1問ずつ出題されている。「人間の尊厳と自立」から、ミルトン・メイヤロフ(Mayeroff,M.)の著書である『ケアの本質―生きることの意味』についての出題があった。以前にも第28回の糸賀一雄「この子らを世の光に」や、第31回のフランクル「夜と霧」「死と愛」というように思想を問う問題が定期的に出題されており、正答を導くためには人間の尊厳や自立及び人権、福祉に関わった人たちとその著書について幅広く勉強しておくことが必要である。
 もう一問は、「介護における尊厳の保持・自立支援」の項目より権利擁護について問う問題であった。具体的には高齢者虐待と思われる状況を発見した訪問介護員の対応に関する短文事例問題であり、この問題については高齢者虐待防止法の通報義務について理解していれば、解答できる問題であった。過去にも第31回一人暮らしを続けることへの不安に対する訪問介護員の対応や、第32回延命治療を選択する意思決定の計画書への迷いに対する訪問介護サービス提供責任者の対応等が出題されており、尊厳の保持、権利擁護について、介護福祉職が実際の場面で具体的に取るべき行動をイメージしておくことが重要であると思われる。

分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会

人間関係とコミュニケーション

 昨年同様2問の出題となっている。第34回介護福祉士国家試験では、「人間関係の形成」についての基本的事項について出題された。
 問題3は短文事例で、「認知症の母を介護しているBさんから介護がうまくいかない、疲れたと相談されたときの介護福祉職の対応」を問われた設問である。利用者や家族との良好な関係を形成するために、不可欠な受容的・共感的態度について理解していれば、容易に解答が得られた問題である。
 問題4は、「介護福祉職が行う自己開示の目的」について問われた設問である。こちらも自己開示について理解されていれば、解答が得られた問題である。
 近年、「人間関係の形成」についての基本的事項についての出題が多くみられている。テキストを中心に介護福祉職が実際の場面でどのように対応すべきか、学習しておくことが大切である。また、障害のある利用者への関わり方を問う問題も過去に出題されており「コミュニケーション技術」や「障害の理解」と合わせて学習しておくことが大切である。

分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会

社会の理解

 出題数は、従来どおり事例問題を含む12問。社会の状況を鑑みた出題傾向が目立った。難易度に関しては、全体的に幅広い知識を問う中程度とも見受けられるが、正答となった選択肢は基礎的なものが多く、社会情勢等に対し敏感にアンテナを張って準備を行ってきた受験生にとっては、迷わずに正解を導き出せたのではないだろうか。
 詳細としては、地域共生社会、世帯数、社会変化に伴う生活状況関連からの出題(問題5、6、7,11)、社会福祉法等改正に伴う変更点(問題8)、介護保険制度、障害者総合支援制度における介護福祉士としての支援に要する知識(問題9、10、12、13)、権利擁護場面における専門職の活動状況(問題14)、そして感染症対策の中核をなす機関(保健所)の役割(問題15)等であった。
 やはり全体を通し、変化する生活場面での介護福祉士としての知識、理解力を確認する出題傾向であったと示唆できる。今後も社会生活に紐づくエッセンシャルワーカーである福祉専門職としてのあり方等が問われる方向性は推察され、単なる基礎的な知識の理解だけではなく、日々変わり続ける社会情勢下において、出題ポイントを柔軟に見極める洞察力も必要であると考えられる。

分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会

領域II 介護

介護の基本

 出題数は昨年同様、10問。そのうち短文事例は昨年の1問から3問に増加している。今回の試験では、性同一性障害での施設入所に対し不安を感じている利用者への支援、利用者主体の支援姿勢、自立支援、ICFの理解、ヤングケアラーと思われる介護者からの相談に関する事例、サービス担当者会議、社会資源(フォーマルサービス)の理解、介護福祉士の職業倫理、個人情報保護、訪問介護員が利用者等からハラスメントを受けた際の対応について出題された。難易度としては、科目全体では標準的であり、基本的な知識で解答できる問題が多かったが、性同一性障害者やヤングケアラーなど昨今の社会問題を反映させる内容が多かったように感じる。
 性同一性障害に対する理解やヤングケアラーの実態、ご利用者からのハラスメントへの対応など新たな出題傾向がある一方でその他の問題については例年通りの内容になっていたように感じる。今回出題はなかったものの、地域密着型サービス、災害対策、感染症対策等、今後出題される可能性が高いと思われるため、併せて押さえておきたい。
 「介護の基本」は介護領域の中核を成す科目であり、介護保険制度や認知症ケア、介護職員の就労環境など他の科目と重複する内容が多いため、他科目と合わせて学ぶ必要がある。

分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会

コミュニケーション技術

 例年通り8問の出題となっている。「コミュニケーションの基本」からは2問、「利用者・家族とのコミュニケーションの実際」から2問、「利用者の状況・状態に応じたコミュニケーション」から2問、「会議」「報告」からはそれぞれ1問の出題となっている。
 「コミュニケーションの基本」からは、それぞれ基本的態度についての設問であった。  短文事例問題から4問出題されている。「利用者・家族とのコミュニケーションの実際」では、過去にも出題されている「利用者本人と家族の意向の調整を図る技法」ついて出題されていた。テキストを確認し学習することは大切である。また今回は先天性の全盲に利用者の設問であった。「コミュニケーション技術」「障害の理解」と合わせて各障害の特徴や具体的な対応、留意点を整理して学習することが大切である。
 「報告」の留意点については、チームのコミュニケーションにおいては不可欠であるためしっかりと学習することが大切です。また、今回出題はありませんでしたが「記録」についても過去に出題されており介護福祉職において不可欠であるため学習する必要がある。

分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会

生活支援技術

 本科目は、第29回から26問の出題数となっている。出題基準の10の項目から、まんべんなく出題されていた。イラスト事例は、ここ数年2問であったが、今回は1問であった。短文事例となっており、自宅の浴槽で使用する福祉用具の選択を問う問題であった。利用者の身体状況を理解し、自立支援の視点を視野に入れ取り組むと、正解が導き出される問題内容となっていた。この他、短文事例は3問。問題の内容は、片麻痺のある利用者への着脱支援について、嚥下障害のある利用者を介護している家族への訪問介護員の助言内容について、看取り時に必要な情報とは何かを問う問題であった。利用者の疾病や身体状況を理解し、介護福祉職として、状況に応じた対応が求められる問題であった。事例問題文の意図を読み取り、基本を理解していれば、正解を導き出す事が出来る問題である。その他、基本や技術の理解、疾病に対する理解、高齢者が安全に暮らしていくための対応についての問題であった。今回は、今までにない問題が1問あった。施設職員が夜勤業務に従事するにあたっての問題であり、介護福祉職の生活習慣にも目を向けている。

分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会

介護過程

 出題数は例年通り8問。うち事例問題は3問であり、事例問題の出題数は昨年の国家試験より1問少なかった。
 出題内容は、社会福祉振興・試験センターが示す出題基準と照らし合わせると、4つの大項目から満遍なく出題されていた。「1 介護過程の意義」からは1問、「2 介護過程の展開」からは介護過程のプロセスにおける情報収集及びアセスメント、計画の立案に関する基本的な知識を問う問題が4問、「3 介護過程の実践的展開」を問う問題として事例問題が3問、「4 介護過程とチームアプローチ」からは1問(事例問題の中の1問が該当)出題された。
 科目全体の難易度としては、介護過程に関する基本的な知識があれば解答できる問題が多かったと思われる。ただし、事例問題については、介護過程の基礎知識に加え、利用者の状態を身体面、精神面、社会面など多角的な視点で総合的に理解し、支援の方向性を導き出せるよう実践的な学習をすることが必要である。

分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会