介護福祉士国家試験情報第37回 介護福祉士国家試験 科目別分析【午前】

科目別分析【午前科目】

領域 人間と社会

人間の尊厳と自立

 昨年と同様、2問の出題であった。各大項目から1問ずつ出題されている。1問目は、大項目2の「自立の概念」より、アドボカシーの視点から行う介護福祉職の対応方法について問われた。アドボカシーとは、利用者の意思を代弁することを表す用語である。福祉に関する用語を学習し、意味を理解していれば、解答は導き出せる問題である。アドボカシーに関する問いは、過去にも第32回では、用語の意味について出題されている。権利擁護やアドボカシーに関する設問は、介護福祉職の対応として以前から多く出題されており、頻度が高いため、重点的な学習が求められる。
 2問目は、介護老人福祉施設で生活をしている、脳梗塞の後遺症で左片麻痺のある女性に関する事例問題であった。この問題は、利用者主体に合わせた支援方法だけでなく、実習生への指導という観点から指導者としての資質も問われる内容である。具体的には、利用者の言葉や行動から気持ちや体調の変化を察知し適切に対応する力、そして、実習生が介護の専門職として自立できるよう支援する力が求められている。介護現場で必要なリーダーシップやコミュニケーション技術の学習も合わせて進めると良いだろう。

分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会

人間関係とコミュニケーション

 2年前の試験(第35回)で問題数が2問から4問に増えた本科目は、今回の試験(第37回)でも4問出題された。出題基準の大項目に照らしてみると、【問題3、4】は「人間関係の形成とコミュニケーション」、【問題5、6】は「チームマネジメント」の項目から出題されており、過去2年と同様であった。
 【問題3】は人間関係と心理に関する問題であったが、「自己同一性」、「自己愛」、「自我」など、これまでの試験では見られなかった用語が出てきたため、悩んだ受験生もいたかもしれない。【問題4】はコミュニケーションに関する事例問題であった。文中の「一方的な働きかけにならないように」という言葉に着目できれば正解にたどり着けたであろう。【問題5】はキャリアパス、【問題6】はフォロワーシップに関する問題であり、【問題3】同様にこれまであまり出てきたことがない用語を含まれていた。組織で働く上で理解しておくべき知識と実践力が問われる内容であった。
 2年前に問題数及び出題基準が変わった後、幅広い知識が求められる科目になってきている。過去問題だけでなく、教科書内のキーワードを正しく理解しておく必要がある。

分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会

社会の理解

 今年度も例年通り12問出題された。問題7は社会福祉法、問題8は介護保険サービス、問題9は生活保護、問題10は保健所、問題11は地域包括支援センター、問題12は介護保険総合事業サービス、問題13は介護保険保険料と負担、問題14は障害者雇用、問題15は障害者総合支援法のサービス、問題16は障害児支援、問題17はサービス付き高齢者住宅、問題18は医療保険と出題基準から幅広く出題された。
 ただし内容は各法制度に関する基本的事項を問われる内容が多かったため、各制度に関する対策が出来ていた受験生は、回答は比較的容易だったと思われる。一方で問題12の総合事業は久々の出題で、問題16の障害児支援は近年あまり出題がなかったので、戸惑った受験生もいたかもしれない。また近年出題されていた地域共生社会に関連する出題は見られなかった。出題範囲が幅広いため、過去問だけでなく、各制度全般まで広く知識を問われる内容であったと言える。

分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会

領域 こころとからだのしくみ

こころとからだのしくみ

 例年通り10問が出題され、全体的に難易度が高い内容であった。主なテーマとして、脳の機能局在、顔の感覚に関与する脳神経、嚥下機能の低下、皮膚の役割、湯船の温度と自律神経の関係、死亡診断の3要素などが挙げられる。特に、近年頻出の脳の機能局在に関する設問が2問出題され、部位ごとの細かな役割や関連性を正確に理解していないと対応が難しく、深い知識と応用力が必要とされた。
 今年度の試験では、臓器や器官の名称や役割、疾患の特徴に関して細部まで正確に覚える必要があった。曖昧な知識では対応が難しい設問が目立ち、選択肢の中には紛らわしいものも多く、受験生にとって難易度の高い科目であったと思われる。

分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会

発達と老化の理解

 本年度も例年通り8問の出題が行われた。全体的に過去の出題内容を踏襲しており、難易度は標準的であった。問題31は乳幼児の発達に関する内容で、人見知りについて正しい理解が求められた。問題32では発達にともなう精神障害の一つである神経性無食欲症が取り上げられた。問題33は老化に伴う男性の心理的変化をテーマとし、ライチャードの知識が問われた。問題34は頻出項目である結晶性知能に関する内容であった。問題35は加齢に伴う感覚機能の変化を扱い、明暗順応に関する知識が求められた。問題36および問題37は、老性自覚や悲嘆、エイジズム、サクセスフル・エイジングといった専門用語の理解を問うものであった。問題38は老年症候群についての設問が出題された。
 出題内容のバランスや傾向はこれまでと同様であり、乳幼児の発達や加齢にともなう知識、心身の変化に関する基礎的な知識を理解していることで正解できる問題が多かった。特に、専門用語の正確な理解が求められる問題が多く、試験対策として引き続き重要な分野であるといえる。

分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会

認知症の理解

 出題数は昨年と同じ10問、短文事例は2問であった。【問題39】認知症施策推進大網の設問は、昨年同様に「1認知症を取り巻く状況」からの出題。行政の方針や施策は抑えておく必要がある。【問題41】せん妄、【問題42】認知症の特徴、【問題43】リスク要因、【問題44】認知機能検査と、例年出題の多い「2認知症の医学的・心理的側面基礎的理解」からの設問。【問題46】回想法は「3認知症に伴う生活への影響と認知症のケア」からの出題であったが、これらの問題については、認知症の基礎的知識を学んでいれば十分に解答を導き出せる設問だったと思われる。【問題45】は「意思決定支援ガイドライン」からの出題、【問題47】認知症疾患医療センターは、昨年出題されなかった「4連動と協働」からの出題。【問題48】の短文事例は認知症初期集中チームの設問であったが、【問題39】同様に、認知症に関わる制度や行政、地域との関係性については今後もしっかり理解しておく必要がある。この科目は他の科目との関連性もあり、幅広い知識の習得が重要である。

分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会

障害の理解

 問題数は例年通り10問。その内、短文事例は2問であった。科目全体としては、基礎的な知識が定着されていれば、解くことのできる問題が多かったのではないかと考える。中でも、問題49のICFの社会レベルについて、問題50の障害者のエンパワメントについて、問題58のレスパイトケアについての問いは、過去の試験等でも頻出されているところであるため、過去問を解いていれば正解を絞ることは難しくなかったのではないか。
 問題52は遂行機能障害、問題53は視覚障害、問題54はパーキンソン病についての短文事例、問題55は聴覚障害についての問いであったが、それぞれ障害の特徴と支援方法について基本的な部分が押さえられていれば解くことのできる問題であったと思われる。問題56の短文事例と問題57は障害者に関する制度、法律についての知識が問われる問題であった。問題51のクローン病についての出題は、ここ数年では出題例がなかったため、難しかったところではないか。
 今回の本科目での得点を伸ばすためには、基本的な知識を広く持つことが必要であったと考える。

分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会

領域 医療的ケア

医療的ケア

 問題数は例年通り5問にて、短文事例1問であった、出題範囲も例年と同様に出題基準の大項目を網羅している。「医療的ケア実施の基礎」から救急蘇生法に関する問題が1問、「呼吸のしくみと働き」から呼吸器官の機能と名称に関する問題が1問、「喀痰吸引の基礎知識・実施手順」から喀痰吸引実施の手順に関する問題が1問、「経管栄養の基礎的知識・実施手順」から消化器症状に関する問題が1問であった。短文事例は経鼻経管栄養利用者からの訴えに関する対応についてであった。
 出題傾向としては呼吸器や消化器の機能や役割といった基礎知識を求める内容と経管栄養や救急蘇生法は実践的な知識を求める内容となっていた。短文事例は経管栄養の実施時の留意点と利用者の心理を組み合わせた応用的な内容となっており、知識を基に解答を選ばないと正答を選びにくい内容になっている。よって難易度も昨年同様からやや難しくなっていた。医療的ケアはリスクが高いため、継続的な知識、技術の向上が求められ、繰り返し学習する必要がある。

分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会