介護福祉士国家試験情報第36回 介護福祉士国家試験 科目別分析【午前】

科目別分析【午前科目】

領域 人間と社会

人間の尊厳と自立

 昨年と同様2問の出題であった。1問目は大項目1より「人間の尊厳と人権・福祉理念」に関しての短文事例であった。過去、第33回と第34回には福祉や人権に影響を与えた人物について問う問題であったが第35回からは介護福祉職としての利用者への対応について問われる問題になった。今回は変形性膝関節症と診断され、同時期に友人の入院により、楽しみにしていた麻雀が出来なくなってしまった事で、今後の生活に不安を感じている利用者に対する対応を問う問題であった。介護福祉職として利用者の思いに寄り添うにはどのような対応であると良いのか、また介護福祉職は、利用者主体で生活を支えていく事を考える必要性を理解しておくと良いだろう。  
 2問目は大項目2より「自立の概念」から自立の考え方に関しての問題であった。自立の持つ意味や現代の社会で自立がどうとらえられているのか、自立の概念の多様性を理解していれば、容易に解答できる問題であった。

分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会

人間関係とコミュニケーション

 昨年度、問題数が2問から4問に変わった本科目は、今年度も4問の出題であった。4問中3問の問題文が4行以上と長文であったため、しっかりと問題文の内容を読み取る力が求められた。出題基準の大項目に照らして見ると、【問題3、4】は「人間関係の形成とコミュニケーションの基礎」、【問題5、6】は「チームマネジメント」の項目から出題された。これは昨年度と同様であった。
 【問題3】は集団内における情報共有について、社会心理学の理論にからめて出題された。集団規範、集団凝集性、内集団バイアスなど、これまでの国家試験ではあまり見ることのなかった用語が出てきたため、難しく感じた受験生もいたかもしれない。【問題4】は準言語に関する問題であったが、問題文中に出てくる登場人物の状況を正しく理解できれば、正解に行きつくことができたであろう。【問題5】はストレスマネジメント、【問題6】は組織運営に関する出題であった。【問題3】同様に、これまでの国家試験ではあまり出たことがない問題であったため、悩んだ受験生もいたであろう。
 昨年度から、問題数のみならず問題の傾向にも変化がみられ、やや難易度が上がっているように感じられる。

分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会

社会の理解

 出題を出題基準に照らし見てみると、出題基準から満遍なく出題された。内容は12問中「介護実践に関する諸制度」より5問出題(問題11,15,16,17,18)され、消費者保護、災害時に関する制度、感染症対策など近年の社会情勢を反映した出題と思われる。例年に比べ、制度に関する問題が少なかった。
 詳細を見ていくと、問題7、8は既出問題である。問題9のセツルメントは隣保活動として既出問題ではあるが、セツルメントと隣保活動が結び付けば解答できたであろう。問題10の社会福祉基礎構造改革の地域福祉権利擁護事業が問われたのは初見であり、難解な問題であった。問題11は、これまで後期高齢者医療制度が問われたことはないが事例をよく読み、制度を理解していれば解ける問題である。問題12~14の問題も既出問題である。問題15は「社会の理解」では出題されていないが生活支援技術等で既出の出題である。問題16の「災害対策基本法」の「福祉避難所」は初見の問題であり難解な問題であった。問題17は「感染症法」としての出題は無いが、「保健所」の役割については既出の問題である。問題18は問題文をよく読み、生活保護に結び付ければ解ける問題であった。問題全体通して基本的な内容が問われており、問題10,16を除き過去の問題を丁寧に解いていれば解答できる問題であった。

分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会

領域 こころとからだのしくみ

こころとからだのしくみ

 例年通り10問の出題。問題19はマズローの基礎知識、問題20は交感神経と副交感神経の作用、問題21は骨粗鬆症予防について、問題22は耳の部位、問題23は爪について、問題24は誤嚥のメカニズム、問題25は窒息について、問題26は入浴の作用について、問題27は尿路感染症について、問題28は眠りを浅くする原因について、問題29は外日リズム睡眠障害について、問題30はモルヒネの副作用についての問い。このうち短文事例問題は2題でいずれもわかりやすい内容であり、その他の問題も一般的な知識が問われており、難問奇問はなかった。中耳、外耳、内耳の細かな部位を暗記しておく必要はあったが、日頃の学習の成果が実を結んで高得点できた受験生が多かったと思われる。

分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会

発達と老化の理解

 例年通り8問の出題。悩ましい問題の多かった昨年よりも解きやすかった印象である。問題31は人の発達についてスキャモンの発達曲線からの問い。問題32は砂場でお団子作りを日課にしている広汎性発達障害の男児の問い。問題33は生理的老化について、問題34はエイジズムについて、問題35は冷や汗や胸痛という生活上で生じた身体の異変から考えられる疾患の予測。問題36は健康寿命について、問題37は前立腺肥大症、問題38は筋骨格系の疾患に関する問題であった。このうち短文事例問題は、問題32、35で広汎性発達障害と心筋梗塞についての基礎的な知識があれば解けた。またエイジズムは第31回、健康寿命は第34回、前立腺肥大症については昨年の第35回と、過去の本試験にも出題された内容で言葉の意味や病気の特徴を学んでいれば容易に解けた。全体的に平易で赤マル福祉の過去問を中心とした学習で満点を取れた受験生もいたと思われる。

分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会

認知症の理解

 短文事例3問を含む10問の出題。【問題39】は認知症に関する行政の方針と施策からの出題。このような問題を出題する背景には、介護福祉士は常に最新の情報をキャッチしておくことが求められているからである。認知症を取り巻く施策はめまぐるしく変わっているため、今後も施策に関する最新情報をキャッチしてほしい。例年多く問われる「医学的側面から見た認知症の基礎」からは【問題42】レビー小体型認知症にみられる歩行障害【問題43】は若年性認知症の特徴が問われ、今回問われなかったものも含め、各認知症の症状と特徴まで理解しておく必要がある。短文事例問題は、日々皆さんが一度は直面した場面があったと思われる。特に【問題47】は日々介護する上で一番大事な視点であり、正答してほしい問題である。【問題48】は必要と思われるサービスをアドバイスするためには、各サービス種別の特徴について理解しておく必要がある。今回「連携と協働」からの出題はなかったが、地域におけるサポート体制や多職種連携と協働に関しても、丁寧に学習しておく必要がある。

分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会

障害の理解

 問題数は例年通り10問で、その内、短文事例は3問であった。問題49は、ノーマライゼーションの成り立ちについて理解ができていれば、選択肢を絞ることは簡単であったのではないか。問題51の障害受容については、過去の試験でも頻出されているところであり、過去問を解いていれば正解を答えることが難しくない問題であったと思われる。問題52、53、54は、それぞれ障害の特性、難病の症状を理解できているかによって難易度が変わる問題であったと考えられる。問題50、55、56、57は、法制度や支援事業について問われている問題であったが、基礎的な内容から少し踏み込んだ理解が必要であったかと感じるところもあり、本科目の中では難しい部分であったと思われる。問題58は家族支援についてであるが、問題文と選択肢から消去法で解答を絞ることが難しくない問題であったのではないか。
 全体としては、昨年と比べると少し難易度は上がっているのではないかと感じられた。基礎的な内容を理解していれば解くことのできる問題もあるが、法制度など深く理解していることで点数を伸ばすことのできる科目であったのではないかと考える。

分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会

領域 医療的ケア

医療的ケア

 問題数は例年通り5問にて、短文事例1問であった。出題範囲も例年と同様に出題基準の大項目を網羅している。「医療的ケア実施の基礎」から喀痰吸引等制度に関する問題が1問、「呼吸のしくみとはたらき」から成人の呼吸状態に関する問題が1問、「喀痰吸引の基礎知識・実施手順」から喀痰吸引実施前の準備に関する問題が1問、「胃ろうによる経管栄養に関する問題」は短文事例を含む2問であり、1問は経管栄養実施時の誤った対応によるトラブルについてであった。短文事例は経管栄養中に生じた症状への対応についてであった。 
   出題傾向としては喀痰吸引及び経管栄養の実施に関する問題は実践的な内容になっており、基本的な知識は必要であり、知識を基に解答を選ばないと正答を選びにくい内容になっている。よって難易度も昨年より難しくなっていた。喀痰吸引,経管栄養はリスクが高いケアになるため、実施上の規則・手順・観察事項等,誤ることが許されない技術と知識が多い。知識を基に正しい手順の理由まで丁寧に確認しながら学習する必要がある。

分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会