介護福祉士国家試験情報第34回 介護福祉士国家試験 科目別分析【午後】

科目別分析【午後科目】

領域III こころとからだのしくみ

発達と老化の理解

 問題69「ストレンジ・シチュエーション法」は、介護福祉士国家試験初登場。しかし今年度の赤マル模試で、これを予想し的中。難問奇問の多い午後最初の問題から慌てずに良いスタートが切れたであろう。問題70「乳幼児期の発達」は、直近3年の間に2度出題された内容と同様だった。問題71「寿命と死因」は頻出問題。消去法で問いた受験生もいたのではないだろうか。問題72「適応機制」も頻出問題、「退行」の意味を正しく理解できていたかどうか。問題73「記憶」も頻出、「意味記憶」の特徴がわかっていれば易しい。問題74「感覚機能や認知機能」も頻出、老化に伴う聴覚の変化が理解できていれば解けた。問題75「睡眠」も頻出、睡眠を促すメラトニンの特徴がわかっていたかどうか。問題76「肺炎」も頻出かつ容易な設問だった。総じて今年度は、頻出かつ平易な設問が多く、過去問中心の勉強に加え、赤マル模擬試験の受験で力をつけていれば満点も狙えた科目であった。

分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会

認知症の理解

 出題数は昨年同様10問、その内事例問題は2問であった。【問題77】のひもときシートに関する問題は、シートの内容を把握してないと、やや難しかったのではないかと思われる。様々なツールを使用する際にツールの目的・内容・特徴を理解したうえで、適切なものを選定することが介護福祉士に求められるスキルであると考える。【問題78】はレビー小体型認知症の幻視の特徴、【問題79】は軽度認知障害、【問題80】は若年性認知症、【問題81】は行動・心理症状に対する薬物療法でよく見られる副作用について問われ、これらは毎年多数出題される大項目「2.医学的側面から見た認知症の基礎」の知識を問うものであり、今回、出題されなかった認知症の名称と特徴についても正しく理解しておく必要がある。【問題82】は中核症状における見当識障害に対して、コミュニケーションを用いたケアについて問われ、【問題85】は認知症ケアにおける環境支援も介護福祉士の専門性として、認知症の人に配慮した施設の生活環境への視点が問われた。【問題86】は新オレンジプランに基づく「認知症初期集中支援チーム」に関する知識が問われた。科目全般としては、基礎的な知識を問うものから認知症ケアの実践場面における介護福祉士の対応まで幅広く問う内容であった。

分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会

障害の理解

 問題87では、障害者の法的定義が問われており、それぞれ定義と基盤となる法律についての知識を関連づけて把握している必要があったといえる。問題88では、半側空間無視についての出題であったが、障害の特徴を理解していれば、選択肢の中から適切なものを選ぶことは可能であったのではないかと思われる。問題90、92は難病に関する出題であったが、過去問題等でも頻出である為、選択肢を絞り込むことが可能であったのではないか。事例問題は、問題89、91、96と3問で、いずれも介護福祉職の関わり方に関する出題であった。問題93では、アセスメントツールに関する知識が問われており、マッピング技法の種類と区別を理解していることで解くことのできる問題であった。問題94、95では、地域支援機関及び事業所といったチームアプローチについての知識が問われていた。
 問題全体としては、基礎的な知識で解くことのできる問題と、選択肢の消去法から解くことのできる問題に加えて、介護福祉職の関わり方や地域支援機関、事業所といったチームアプローチについて理解できているかによって得点を伸ばすことができた科目であったと思われる。

分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会

こころとからだのしくみ

 短文事例問題が12問中5問と全体の約42%を占め、単に知識を問うというよりは実践的な理解を問う傾向が見られた。出題基準の大項目に照らして見てみると、「1.こころのしくみ」では、これまで頻出の記憶や性格類型に関する問題ではなく、【問題97】アルツハイマー型認知症の症状が問われ、「2.からだのしくみ」では【問題98】体温上昇の原因、【問題99】老化に伴う視覚機能の変化、【問題102】ボディメカニクスの原理が問われた。「3.身じたく」では【問題100】言葉の発音が不明瞭になる原因として、口腔の構造と機能に関する知識、「4.移動」では【問題101】骨に関する知識、「5.食事」では【問題103】昨年に続き、栄養素に関する知識、【問題104】糖尿病の高血糖時にみられる症状が問われ、「6.入浴、清潔の保持」では、【問題105】入浴が及ぼす身体への負担に関する知識、「7.排泄」では【問題106】ブリストル便形状スケールの理解、「8.睡眠」では【問題107】良質な睡眠に影響する日常生活に関する知識、「9.死にゆく人のこころとからだのしくみ」では【問題108】「死」の捉え方の知識が問われた。
 科目全体の難易度は標準的と思われ、出題基準に沿ってまんべんなく勉強していた受験者や「赤マル福祉:過去問トレーニング/Web模擬試験」の問題解説で知識を深めた受験者にとっては、かなりの得点につながったのではないかと思われる。いずれにしても、介護職チームにおいて中核的な役割を担うことが求められている介護福祉士には、多様化・複雑化する介護ニーズに対応できる的確な知識と実践力が求められている。

分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会

領域IV 医療的ケア

医療的ケア

 問題数は昨年同様5問であったが、短文事例は出題されなかった。出題範囲は出題基準の大項目を網羅している。「医療的ケア実施の基礎」から社会福祉士及び介護福祉士法から医行為に関する問題が1問、「喀痰吸引(基礎知識・実施手順)」から喀痰吸引実施時の留意点に関する問題が1問、呼吸器の仕組みと働きに関する問題が1問、「経管栄養(基礎知識・実施手順)」経管栄養の実施時の手技や機材に関する問題が2問出題された。
 全体的に例年通りの標準的な難易度に変わらないが、医療的ケアは生命に直結する分野にて、実施上の目的や意義を正しく認識する必要がある。一つ一つの手技の根拠や目的を正しく理解しなければ、判断に迷う問題も増えつつあるので、単純に手順や技術を学習するに留めず、各種疾患と呼吸器・循環器との関連性、喀痰吸引・経管栄養の実施上想定される危険性等、リスク管理を含めた深い理解が大切となる。

分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会

総合問題

 本科目は事例形式であり、4領域(人間と社会、介護、こころとからだのしくみ、医療的ケア)の知識・技術を横断的・総合的に問う科目である。1事例目は「アルツハイマー型認知症である独居の女性、83歳」の事例。ケアプランに基づいた訪問介護計画書の目標設定や、認知症の症状に関する内容、介護保険で対応可能な支援に関する知識が問われた。
 2事例目は「統合失調症で医療保護入院中の男性、70歳」の事例。医療保護入院制度や事例の全体像を捉えたうえでの生活場所の選択、介護福祉職のコミュニケーション技術の知識が問われた。
 3事例目は「筋萎縮性側索硬化症と診断された男性、35歳」の事例。疾患の症状や適切なコミュニケーションツールの選択、本人と家族の希望に沿うサービスに関する内容が問われた。
 4事例目では「アテトーゼ型の脳性麻痺の女性、50歳」の事例。アテトーゼ型の脳性麻痺の特徴や、将来の生活を考慮したうえでの短期目標の選定、利用できる福祉制度の知識が問われた。
 本科目は例年、65歳以上と65歳未満の利用者が各2名出題されており、この傾向は今回の国家試験でも同様であった。利用者の様々な障害やその特徴、福祉制度等を幅広く理解し、多様なニーズを持つ利用者に寄り添うことができる介護福祉士となるべく、その資質が求められる内容と言える。

分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会