介護福祉士国家試験情報第37回 介護福祉士国家試験 科目別分析【午後】
科目別分析【午後科目】
領域 介護
介護の基本
出題数は昨年同様10問。そのうち短文事例は昨年同様2問であった。今回の試験では、社会福祉に関する法律、社会福祉士及び介護福祉士法、ユニット型介護老人福祉施設での認知症ケア、ICF、訪問介護員のサービス内容、介護従事者を守る法制度、施設で日本語理解が難しい方への自立支援、チームアプローチ、防災対策、感染症対策(結核予防)について出題された。
難易度としては、科目全体では普通からやや簡単であったと思われ、基本的な知識で解答できる問題が多かった。事例問題は、認知症ケアや日本語の理解が難しいご利用者への対応に関する出題であったが、自立支援や利用者本位の知識を問う内容であった。問題69では介護育児休業法など、介護従事者を取り巻く法制度が織り交ぜられ出題されており、いくつかの制度を横断的に把握する必要があっため、この問題はやや難易度は高かったと思われる。
今回この科目での出題はなかったものの、地域密着型サービス、権利擁護に関する制度、多様な介護人材に関する事項など、出題頻度が高いと思われるため、併せて押さえておきたい。「介護の基本」は介護領域の中核を成す科目であり、自立支援や尊厳の保持、介護保険や障害者総合支援法のサービス内容、介護職員の就労環境など他の科目と重複する内容が多いため、横断的な学びが重要となる。
分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会
コミュニケーション技術
出題数は昨年と同様の6問。そのうち短文事例問題は3問であり、昨年と同様であった。今回も4つの大項目から満遍なく出題されている。
「意向の表出を支援する技術」、「本人と家族の意向を調整する技術」については、いずれも介護福祉職に必要な技術であり、理解していれば容易に解答することができる。例年出題率の高い「障害の特性に応じたコミュニケーションの実際」からは、アルツハイマー型認知症・構音障害・知的障害のある利用者への対応について出題されており、「認知症の理解」や「障害の理解」などの他科目も合わせて理解しておくことが重要である。障害の特徴や具体的対応について整理して、実践で活かしていただきたいと思う。「チームのコミュニケーションの実際」からは、記録についての出題であった。チームケアに欠かせない記録の意義や目的、留意点を理解しておくことはとても大切である。
今回は出題されていないが、報告・連絡・相談など介護におけるチーム内の連携についても重要であり、日々の実践で活かせるよう学ぶ必要があると考える。介護福祉職にとって「コミュニケーション」は日常的に必須であるため、繰り返し学ぶことが求められる。
分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会
生活支援技術
出題数は例年通り26問であり、すべての大項目からまんべんなく出題されていた。そのうち、短文事例は昨年より1問少ない3問であった。問題内容としては、認知症対応型共同生活介護に入居している利用者の現在の状況に合わせた食事の介護として適切な方法を問う問題、介護老人福祉施設に入居している利用者に安眠を促すための対応方法を問う問題、アテトーゼ型の脳性麻痺がある利用者が使用している情報・意思疎通支援用具を選択肢から選ぶ問題である。
この科目では、全体的に基本的な知識や技術の理解が問われる問題が多かったが、介護福祉職としての適切な対応や助言、疾病に関する学習をしていれば解答できる内容であった。また、寒暖差を考慮した居室環境作りや熱中症対策としての水分補給の対応について問う問題、調理や食品の保存、衣類の保管方法など、実際の場面で必要とされる心得が問われる設問もあった。問題をよく読み、落ち着いて考えれば正解を導き出せる問題が多く、関連する科目である「こころとからだのしくみ」と合わせて学習することで、さらに理解を深めることができるだろう。
分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会
介護過程
出題数は例年通り8問であり、科目全体の出題内容は、社会福祉振興・試験センターが示す出題基準と照らし合わせると、3つの大項目からバランスよく出題されていた。
「1 介護過程の意義と基礎的理解」からは【問題106】介護過程の目的、【問題107、108】介護過程の展開プロセスにおけるアセスメント及び評価に関する問題が出題され、「2 介護過程とチームアプローチ」からは【問題109】サービス提供責任者の役割について問われ、「3 介護過程の展開の理解」からは【問題110~113】事例問題形式で対象者の状態や状況に応じた自立に向けた介護過程の展開の実際が問われた。
今回、事例問題が8問中4問と全体の半数を占め、介護過程の基礎知識に加えて、利用者の身体的、精神的、社会的な状態を多角的に理解し、支援の方向性を導き出す実践的な能力が求められる傾向がみられた。事例対象者は、65歳以上の高齢者と65歳未満の障害者(42歳、知的障害者)の出題があり、これは前回(第36回)の国家試験と同様の傾向であった。
【問題109】は、サービス提供責任者の活動領域や業務内容を十分に理解していないと正しい答えを導き出すことが難しかったと考えられる。ただし、科目全体の難易度は標準的であり、過去問対策をしっかりと行い、受験に臨んだ受験生は、かなりの得点を得ることができたのではないかと思われる。
分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会
総合問題
本科目は4領域(人間と社会、介護、こころとからだのしくみ、医療的ケア)の知識・技術について、横断的かつ総合的に問う問題が事例形式で出題された。問題数は4事例、3問ずつの計12問で例年通りであった。1事例目はパーキンソン病の70歳、男性の症状や要介護認定に関する内容等が問われた。2事例目はアルツハイマー型認知症と診断を受けた90歳、女性の事例。ここでは、事例に該当する症状や介護福祉職の応答、施設の選択について問われた。3事例目は障害支援区分4、48歳、男性の事例。ベッカー型筋ジストロフィーの病態やフェースシートのジェノグラムに関する内容等が問われ、問題121はジェノグラムの基本的な構成を理解していれば容易に解ける問題であったのではないか。4事例目は両側性感音難聴で脳梗塞を発症した38歳の女性の事例で、障害福祉サービスや介護福祉職のコミュニケーション技術等について問われた。
昨年の試験問題の事例は65歳未満が3名と65歳以上が1名で例年と異なっていたが、今回は65歳以上と65歳未満の利用者が各2名ずつ出題され、例年に戻った形となった。
総合問題では、文章を読んで利用者をイメージしながら、生活課題や支援方法を想定することが必要であるため、利用者の状態に合った障害福祉サービスや介護保険制度等、各科目をまんべんなく理解しておくことによって正答を導き出すことにつながる。そして、尊厳と自立を支えるケアを実践することが求められる介護福祉職としての「その人らしさ」を大切にする視点が総合問題を解くためのポイントの1つであったとも言える。
分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会