介護福祉士国家試験情報第32回 介護福祉士国家試験 科目別分析【午後】

科目別分析【午後科目】

領域III こころとからだのしくみ

発達と老化の理解

今年度も例年通り8問の出題で、そのうち短文事例問題が2問出題された。問題70「高齢者の年齢規定」と問題72「老年期の記憶」に関する問いは頻出問題であったので自信をもって答えられた受験生は多かったであろう。問題75「栄養管理」、問題76「各専門職の役割」も基本的な知識で解ける易しい問題であった。問題74は短文事例問題で、病気や症状、食事状態などの多くの情報から惑わされることなく要点が読み解ければ「褥瘡関連」の知識で正答を導けたであろう。問題69「乳幼児期の発達」に関する問いは昨年も出題されていたので学びを深めていれば解けたのではないだろうか。問題71「嚥下機能」は頻出ではあるが、身体の部位に関する専門用語が少し難しかったかもしれない。問題73「心不全」に関する問いは、チアノーゼか浮腫かで悩んだ受験生も多かったのではないだろうか。総じて本年も、赤マル福祉の過去問中心とした学習で7問以上正解できた例年通りの難易度であったといえる。

分析:社団法人 千葉県介護福祉士会

認知症の理解

今年度の認知症の理解における問題を読み込むと、まず問題77での問いは、今後2025年問題を含んだ超高齢社会の進展、そこに至るまでの認知症高齢者数増加の推計値等も認識したうえで認知症高齢者の介護に向き合う必要性があることを意味していた。そのうえで、誰でも認知症になる可能性があるという現実を踏まえる。また、そうなったときの症状を知ることに加えて、つのる不安感や戸惑いから起こりうる行動心理症状ということの様子の理解と、よく見られる認知症に似た様子を見せる高齢者のせん妄の特徴などを理解しているかどうかを問題78、79では問われていた。また問題80では、認知症には様々な種類があること、それぞれの初期症状を知っていることで早期発見に至り適切な対応につなげられることを理解しているかが問われた。問題81では認知症の発症のリスクを少しでも低減させるための対応のありかた、問題82では抗認知症薬の効果の理解が示され、問題83では性格変化と社会的行動の障害を伴う前頭側頭型認知症について介護福祉士のより良い対応が問われた。すべて日頃からサービス利用者と向き合いながら積極的な認知症介護を実践すること、意欲的な学習で知識を得て理解を深めていなければ解答は難しいと感じた。問題84、85、86については事例問題であった。介護福祉士として認知症高齢者に尊厳を持って向き合い、思いを察しながら物事を思考することで誠意ある対応が見えてくると思われた。

分析:社団法人 千葉県介護福祉士会

障害の理解

問題87はICFの前身である「ICIDH(国際障害分類)」に始まった。問題88は平成28年4月から施行された「障害者差別解消法」と続くが、選択肢文に同じキーワードがあることが、大きなヒントになっている。問題89の「痙直型や不随意運動型(アテトーゼ型)」という言葉の組み合わせが特徴的な身体障害であるため導きやすいといえる。問題90では、精神障害は原因によって大きく3つに分類され、そのうち「内因性精神障害」とは、どのような例があったか、しっかりと理解していなければ難しい。問題91では「重度の知的障害」のある方のイメージと障害福祉制度、地域におけるサポート体制といった知識が求められる。問題92、93、94は出題傾向の高い内容であり、過去問題を繰り返していれば解答できる。問題95は「パーキンソン病」の理解ができていても「ホーエン・ヤール重症度分類」について理解できていなければ難しい問題である。問題96では「フォーマル、インフォーマル」の理解があれば解答できる。本科目全体としては、少し踏み込んだ理解が必要である問題があるため、やや難易度は高い。「地域」や「社会資源」という言葉も度々あり時代の変化を感じる出題といえる

分析:社団法人 千葉県介護福祉士会

こころとからだのしくみ

出題数は短文事例1問を含む12問で出題形式は5肢択一。出題基準である大項目に沿ってみると「こころのしくみ」から問題97マズローの欲求階層説1問、「からだのしくみ」から問題98大脳の機能局在の部位について1問、「身じたく」から問題99爪・指の変化と疾患の組み合わせと問題100口臭に関する2問、「移動、食事、睡眠、」から各1問で、問題101高齢者の大腿骨頸部骨折、問題102摂食・嚥下のプロセス、問題106抗ヒスタミンの睡眠への影響が出題された。「排泄」からの出題が多く、問題103尿失禁(事例)問題104尿の性状、問題105弛緩性便秘の原因の3問。「死にゆく人」のこころとからだのしくみからは、問題107事前指示書と問題108死亡直前の身体の変化の2問が出題された。今回は「入浴」からの出題はない。マズローの欲求階層説、排泄問題の3問、摂食・嚥下のプロセスは頻出問題であり、赤マル福祉の模擬試験でも触れているので得点につなげることができたと考える。頻出事項は、しっかり押さえて知識を定着させておくことが大切である。全体的に基礎知識を問う内容であったが、大脳の機能局在を問う問題98はやや難易度が高いと思われた。丁寧な学習を進めてきた受験生は解答できたであろう。言語、感情、記憶、運動、生命維持等を司る脳のしくみは、今後も出題されることが予想される。また、本科目は障害,認知症、高齢者に多い疾患の理解も問われるため、横断的な学習が必要である。

分析:社団法人 千葉県介護福祉士会

領域IV 医療的ケア

医療的ケア

出題数は昨年と変わらず、短文事例1問を含む5問であった。本科目は29回から追加され、今回で4回目となる。そのためまだ明確な傾向は見えないが、出題基準の大項目を網羅した形で出題されている。出題内容を大項目に沿ってみると、「医療的ケア実施の基礎」から問題109喀痰吸引の範囲と問題110喀痰吸引等の制度の2問、「喀痰吸引(基礎的知識・実施手順)」から問題111鼻腔吸引時の出血に対する対応(事例)と問題112口腔内・鼻腔内喀痰吸引に必要な物品管理の2問、「経管栄養(基礎的知識・実施手順)から問題113冷蔵庫内保管の栄養剤をそのまま注入した際に起こる状態を問う内容が1問であった。問題109、110は、医療的ケアを実施できる介護福祉士等の範囲や実施要件を押さえておけば容易に解答できる問題である。なお、痰吸引の範囲は29回にも出題されている。問題111,113は医療的ケアの実施時に想定されるトラブルと介護福祉士として適切な対応を問われており、今後も出題されることが予想される。安全に実施するための知識は重要事項であり、理解を深めておく必要がある。今回は全体として基礎的知識を問う内容であり、難易度は標準的といえる。

分析:社団法人 千葉県介護福祉士会

総合問題

本科目は事例形式であり、4領域(人間と社会、介護、こころとからだのしくみ、医療的ケア)の知識・技術を横断的・総合的に問う科目である。1事例目は「脳血管疾患後遺症による左半身のしびれ及び変形性膝関節症がある女性、78歳」の事例。脳血管疾患の種類及びそれに伴い起こる障害と原因に関する知識、賞味期限が切れた食べ物を見つけた場合の専門職としての対応、介護保険法に基づき介護予防サービス・支援計画書作成を担う専門職に関する知識が問われた。
2事例目は「アルツハイマー型認知症の診断を受けた男性、80歳」の事例。介護記録の種類及び内容に関する知識、認知症の症状に関する知識、社会福祉法人が行う事業内容に関する知識が問われた。
3事例目は「統合失調症の診断を受け一人暮らしをしている男性、22歳」の事例。精神保健福祉法に基づく入院形態に関する知識、統合失調症の症状を踏まえた専門職としてのかかわり方及び支援の視点に関する知識が問われた。
4事例目は「関節リウマチを発症し施設で暮らす女性、59歳」の事例。関節リウマチで生じる症状及び症状を踏まえた介護の留意点に関する知識、障害者総合支援法に基づくサービス内容に関する知識が問われた。本科目は例年、65歳以上・65歳未満の利用者が各2人出題されており、この傾向は今回の国家試験でも同様であった。利用者の個別性を理解したうえで多様なニーズに応え、適切な支援が実践できるための介護福祉士の実践力が問われている。

分析:社団法人 千葉県介護福祉士会