介護福祉士国家試験情報第33回 介護福祉士国家試験 科目別分析【午前】

科目別分析【午前科目】

領域I 人間と社会

人間の尊厳と自立

 昨年と同様2問の出題である。「人間の尊厳と自立」から、人権や福祉の考え方に影響を与えた人物に関する問題が出題された。第28回の糸賀一雄「この子らを世の光に」や第31回のフランクル「夜と霧」「死と愛」という思想を問う問題のように、広い知識も必要であるため、人間の尊厳や自立及び人権、福祉に関わった人たちについて幅広く勉強しておくことが必要である。他の1問は、誤嚥を繰り返す高齢男性の家族からの「胃ろう」に関しての介護福祉職の職業倫理に基づく対応を問う短文事例問題となっている。この科目の重要点であるアドボカシー、人権擁護、職業倫理を理解していれば容易に解答にたどり着くだろう。過去、第30回のアドボカシーの視点に基づいた認知症の人への介護福祉職の対応、第31回訪問介護利用者一人暮らしを続けることへの不安に対する訪問介護員の対応、第32回の訪問介護利用者の延命治療を選択する意思決定の計画書への迷いに対する訪問介護サービス提供責任者の対応が出題されており、尊厳の保持、権利擁護について、介護職員が実際の場面で具体的に取るべき行動や対応をイメージしながら勉強しておくべきであろう。

分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会

人間関係とコミュニケーション

 昨年と同様2問の出題である。「人間関係の形成」から、役割葛藤が出題された。葛藤の意味を考えれば解答にたどり着くであろう。過去、第28回共感的態度、第29回自己開示、第30回バイステックの7原則、第32回コミュニケーションを通した自己覚知が出題されている。いずれも人間関係の形成において用いられる基本的な言葉であり、テキストを中心にしながら勉強をしておくことが大切である。他の1問は、「コミュニケーションの技法」から、言語メッセージと非言語メッセージの関係性を問う出題となっている。基本的な出題であり、問題文を繰り返しよく読み、理解できれば解ける問題である。過去、「コミュニケーションの基礎」から、第29回盲ろう者とのコミュニケーション手段、第30回利用者との関係を構築するためのコミュニケーションの基本、第31回聴覚障害のある利用者との筆談、第32回高齢者とのコミュニケーションにおける非言語的な配慮に関する問題が出題されている。「人間関係とコミュニケーション」は、「コミュニケーション技術」とあわせて、総合的に学習しておくことが大切である。

分析:一般社団法人 千葉県介護福祉士会

社会の理解

 「社会の理解」は出題範囲も多岐にわたる。一見すると介護福祉の実践に直結しないように見受けられるため、対策に苦労される科目かもしれない。問題数は例年通り12問にて広範囲から出題されていた。基本的な知識を問う問題が多く、基本的知識の理解に取組んでこられた受験生にとっては、全体として難解な出題はないと思われる。
 傾向としては、高齢者、障害者、生活全般に関わる考え方、法律及び制度、その他の福祉の概念が中心であった。高齢者領域からは事例問題を含む介護保険制度の仕組み、専門職の役割、高齢者虐待防止法の概念等が出題された。障害者領域では障害者総合支援法を中心とした障害者の定義、機関、そして事例問題として共生型サービスにおける専門職の対応等を問う問題であった。かつ生活全般の領域では、家族形態の変化、互助等の概念、根本である福祉三法及び社会保障関係費の財源、ノーマライゼーション等、専門職としての基本的知識の確認であった。
 介護福祉という狭義の概念にとらわれず、社会の動向に着目し、知識を福祉的問題にあてはめる等、立体的な整理を行い、幅広い理解を深めておくことが肝要であろう。

分析:一般社団法人 千葉県介護福祉士会

領域II 介護

介護の基本

 出題数は昨年同様、10問。そのうち事例問題については昨年の2問から1問に減少している。今回の試験では、同居の介護者の悩みやストレスの原因、ソーシャルロール・バロリゼーション、ICFにおける環境因子、自立生活支援・重度化防止のための見守り、高齢者のリハビリテーション、施設利用者の多様な生活への配慮、介護医療院、利用者の思いに配慮したサービス提供、プライバシーの保護、ハインリッヒの法則について出題された。難易度としては、科目全体では標準的であり、基本的な知識で解答できる問題が多かったが、ここ数年の出題傾向から変化しているように感じ、一部難易度の高い問題もあった。
 ICFに関しては例年出題されているものの、社会福祉士及び介護福祉士法や地域密着型サービスなどは今回出題されておらず、出題頻度の少ない問題が多く出た印象がある。特に問題18のソーシャルロール・バロリゼーションについての問題は、ヴォルフェンスベルガーを知っていたとしても正答に繋げることが難しい問題だったと思われる。今回出題はなかったものの、介護保険地域密着型サービス、外国人労働者に関する問題や災害対策、感染症対策等、今後出題される可能性が高いと思われるため、押さえておきたい。
 「介護の基本」は介護領域の中核を成す科目であり、介護保険制度や認知症ケア、介護職員の就労環境など他の科目でも重複して出題される内容が多いため、他科目と合わせて学ぶ必要がある。

分析: 一般社団法人 千葉県介護福祉士会

コミュニケーション技術

 例年通り8問の出題となっている。「コミュニケーションの基本」からは2問、「利用者・家族とのコミュニケーションの実際」から3問、「利用者の状況・状態に応じたコミュニケーション」から1問、「介護記録」「報告」からはそれぞれ各1問の出題となっている。
 「コミュニケーションの基本」についてはいずれも信頼関係の構築についての出題であり、基本的な問題であった。「利用者・家族とのコミュニケーションの実際」では、介護福祉職としては欠かせない態度である共感についての出題と短文事例での話を聞く技法についての出題、利用者本人と家族の意向の調整を図る技法についての出題となっている。「利用者の状況・状態に応じたコミュニケーション」からは運動性失調のある人とのコミュニケーションの出題であった。「介護記録」「報告」についても基本的な出題内容であった。
 今回の試験では、基本的な内容の出題が多く、問題文をよく読み、理解すれば解ける問題であった。コミュニケーションにおける技術について、また各障害の特徴や具体的な対応、留意点を整理して学習しておくことが大切である。

分析:一般社団法人 千葉県介護福祉士会

生活支援技術

 昨年と同様に、出題数は26問であった。出題基準の10の項目から、まんべんなく出題されていた。イラスト問題は2問あり、そのうち、1問は、仰臥位(背臥位)から側臥位へと体位交換時の基本的な技術に関する問題と、もう1問は、昨年に続き、洗濯表示の記号の意味の理解について、を問う問題であった。どちらも基本的な技術と知識が問われる問題であったため、正解が導きやすい内容の問題である。
 短文事例の問題に関して、昨年は6問あった問題数は、今年は4問と減っていた。問題42では、利用者の身体機能に応じた車いすの特徴を問われ、疾病による身体状況についての知識を必要とした。問題43は、嚥下機能の低下が疑われる利用者に対する対応、問題48は、自立した在宅生活を実現する為の情報収集の優先順位について、問題57は、短期入所時の利用者の不眠の訴えに対する対応とあり、これらは、利用者の状況に合わせて、介護福祉職として、どのように対応すると良いのかを問われる問題であった。
 その他、基本的な知識や技術の理解、疾病に対する理解、高齢者が安全に暮らしていくための対策について、介護福祉職として、どう対応するのかという内容の問題であった。

分析:一般社団法人 千葉県介護福祉士会

介護過程

 出題数は例年通り8問。うち事例問題は4問であり、事例問題の出題数は昨年の国家試験より1問少なかった。
 出題内容は、社会福祉振興・試験センターが示す出題基準と照らし合わせると、4つの大項目のうち「4 介護過程とチームアプローチ」からの出題はなく、他の3項目より満遍なく出題されていた。「1 介護過程の意義」より介護過程の目的について問う問題が1問、「2 介護過程の展開」より介護過程のプロセスにおける情報収集及びアセスメント、計画の立案に関する基本的な知識を問う問題が3問、「3 介護過程の実践的展開」より事例問題が4問出題された。
 科目全体の難易度としては、介護過程に関する基本的な知識があれば解答できる問題が多かったと思われる。ただし、事例問題については、介護過程の基礎知識に加え、利用者の状態を身体面、精神面、社会面など多角的な視点で理解したうえで適切な支援を提供する介護福祉士の実践力が問われるため、他の科目と共に複合的に学ぶ必要がある。

分析:一般社団法人 千葉県介護福祉士会