介護福祉士国家試験情報第32回 介護福祉士国家試験 科目別分析【午前】

科目別分析【午前科目】

領域I 人間と社会

人間の尊厳と自立

問題1においては、最近増加している人工透析療法を受けながら生きる高齢者の生活に視点をあてていた。生活の身近な支援者となる介護福祉士としては、本人の気持ちに寄り添い理解を深めて思考してもらいたい主旨が感じられる。始めは生きる意欲を持って透析を受け延命治療を望むという意思で計画書を作成し生活してきても、加齢に伴い自らの延命治療のありかたや、今後どのように生きて最後を送るのか等、気持ちに変化も生じやすいこともある。様々な思いを受け止め、本人の意思を第一に考慮し対応していくことが求められる。
問題2は、利用者の意思を代弁することを表す用語を選ぶというものであった。超高齢社会においては、様々な疾患を持ちながらも生活の場が施設や自宅の場に移行する場合もある。著しい認知機能の低下や自分で判断することができない方などへの支援を考えると解答は導かれる。

分析:社団法人 千葉県介護福祉士会

人間関係とコミュニケーション

例年通り2問の出題となっている。1問は、「自己覚知」とはどのようなことかを問う出題である。人間関係の形成過程において、自分の思想や価値観、感情などを知るという重要性を理解していれば容易に解答がえられる出題である。もう1問は、「高齢者とのコミュニケーション」における配慮のあり方を問う出題である。福祉の理念を理解し、尊厳の保持を考えれば、容易に解答がえられる出題である。
第31回介護福祉士国家試験では、「短文事例」、「聴覚障害を持つ人とのコミュニケーション」、第30回介護福祉士国家試験では、「短文事例」、「利用者との関係を構築するためのコミュニケーションの基本」、第29回介護福祉士国家試験では、「自己開示」、「先天的ろう者が緑内障を発症したときのコミュニケーション」から考えると、本年度は基本的な日常でのコミュニケーションのあり方を問う2問の出題であった。

分析:社団法人 千葉県介護福祉士会

社会の理解

問題数は事例問題3問を含め従来通の12問。例年同様の法制度を中心とした専門的知識だけではなく、専門職としての対応、地域福祉の課題に関連した出題であった。多様化した生活上の問題を、どのように対処するかを確認する方向性だが、難解と思われる問題は特になく、基礎的知識を幅広く確認しておけば問題はないであろう。傾向としては、障害者、高齢者のみならず、国民全体の福祉の課題を社会状況と照らし合わせながら、諸制度等の理解、知識を積み上げることの必要性が求められる。個々の分析として障害者、高齢者、生活困窮者、権利擁護、社会保障等、法制度を問う問題が、約7割、働き方、共生社会のあり方等、身近な課題への対応が約2割、そして出題頻度の高い社会保障に関する出題等であった。特に働き方改革、共生型サービス、地域包括ケアシステムに関しては、日頃より直近の厚生労働、障害者及び高齢者白書等の確認に注意を向けていれば問題はないと思われる。また当該科目においては珍しい問題ではあったが、事例問題として自閉症の方に対する対応が出題、他の科目と重複するものではあるが、障害等の特徴を理解していれば正解に導けるものと勘案できる。

分析:社団法人 千葉県介護福祉士会

領域II 介護

介護の基本

出題数は昨年同様、10問。そのうち事例問題には昨年の2問から3問に増加している。今回の試験では、認知症のある方への支援方法、ノーマライゼーションの概念、ICF、訪問介護員の対応、高齢者の家庭内事故の割合、認知症対応型共同生活介護、サービス提供責任者の役割、多職種連携、介護福祉職の倫理、感染症対策(MRSA)について出題された。難易度としては、昨年と同等かやや説き易かったように感じる。基本的な知識を把握しておくことで解答できる問題が多かった。
毎年出題されているICF、地域密着型サービス、感染症対策については、今回も出題されており、来年度以降も出題頻度しては高くなると思われる。今回ICFについては、各項目の関連性について問われる内容であり、利用者の生活場面に即して、ICFを理解できているかがポイントとなった。今回出題はなかったが、ほぼ毎年出題されている介護福祉士法や災害対策、外国人労働者に関する内容も今後出題される可能性が高いため、押さえておきたい。
「介護の基本」は介護領域の中核を成す科目であり、他科目でも重複して出題される内容が多いため、他科目と合わせて学総合的に学ぶ必要がある。

分析:社団法人 千葉県介護福祉士会

コミュニケーション技術

例年通り8問の出題となっている。「コミュニケーションの技法」から1問で「直面化」が出題されている。聴きなれない語句であるが、コミュニケーションの各種技法を理解していれば解答がえられる出題である。
「利用者の状況・状態に応じたコミュニケーション」及び「家族とのコミュニケーション」から6問、「意欲が低下した人」「構音障害のある利用者」「視覚障害者」及び短文事例での「中度の知的障害を伴う自閉症のある人とその家族」「中等度の認知症のある高齢者」で、いずれも障害の特性・状態に応じて適切に働きかける技法を学習しておけば解答がえられる出題である。
「記録」から、短文事例での介護記録のありかたが出題されており、介護記録の意義を考えれば、容易に解答が得られる出題である。「利用者の状況・状態に応じたコミュニケーション」からの出題が多く、今後もこの傾向は続くだろう。障害の状況に応じたコミュニケーションの方法では、選択に迷う出題もあり、正確に学習しておく必要がある。

分析:社団法人 千葉県介護福祉士会

生活支援技術

出題数は、昨年同様26問。そのうち、イラストを用いた問題は2問、短文事例を用いた問題については3問と昨年より3問少なくなっている。概観すると、災害対策、住宅改修、ユニバーサルデザイン7原則、着衣失行への対応、身じたくの介護、、移乗・移動の介護、食事時の姿勢、半側空間無視のある方への食事介護、清拭の介護、状態に応じた入浴の介護、ポータブルトイレの設置場所、膀胱留置カテーテル使用者への対応、坐薬の挿入、食中毒の原因菌、感染対策、クーリングオフへの支援、睡眠・安眠への支援、終末期の家族支援といった内容で、出題基準大項目(10項目)に照らしてみると、どの項目からもまんべんなく出題されている。
利用者の疾病の理解や状態・状況に応じた基本的な知識や技術が問われる問題が多く、日頃の介護実践と合わせて容易に解答が導き出せたと思われる。問題44については、利用者の体格指数(BMI)と普段の食生活、1年間の体重減少、歩行速度の低下、疲れやすくなったという状況変化の情報から、摂取を勧める食事バランスガイドの区分を問う問題であったが、生活の側面から利用者の「いのち」を支える介護副祉職に、コマ切れではなく総合的な知識・技術が問われており、今後、このような出題傾向が増えてくることが予想される。本科目では、基本的な知識・技術の学習と合わせて、日頃から、エビデンスに基づく介護実践の意識化が求められている。

分析:社団法人 千葉県介護福祉士会

介護過程

出題数は昨年と同様に8問。そのうち事例問題が5問含まれおり、「総合問題」のような長文事例から2問連続して解く内容のものが合計4問、通常の短文事例が1問であった。昨年事例問題が4問だったのに対して今回は5問と、事例問題の出題数が増えているものの全体的な出題傾向には、大きな変化はみられなかった。
「介護過程の意義」より介護過程の目的について1問、「介護過程の展開」より介護計画の作成や、実施時の内容に関する問題がそれぞれ1問ずつ、「介護過程の実践的展開」より事例問題が合計5問出題されている。事例問題以外の出題は、介護過程に関する基礎理論や留意点を理解していれば、容易に解答できる内容のものであったと思われる。
「介護過程の実践的展開」からの出題では、事例を読み、利用者の身体面・精神面・社会面など多方面の視点から総合的にその方を理解し、介護過程を活用して展開する応用力が求められる内容が多いため、他の科目と共に、複合的に学んでいくことが必要である。

分析:社団法人 千葉県介護福祉士会