専門科目 |
分析 |
社会調査の基礎 |
午後科目の最初であるが、毎年のごとく開始後出鼻をくじかれる、難易度の高い内容が出題されるのがこの科目であったが、本年度においてはその傾向が和らぎ、テキストレベルの、科目名通り「基礎」的な出題が多かった。その点では、受験生はほっとしたのはないだろうか。
特徴的な問題を挙げるとすれば、先ずは問題88であろう。内容としては過去の出題実績を考えれば驚くような出題ではないものの、クロス集計表など文章化されていると受験生にとっては意味を想起しづらいようである。一部の声としては問題を見た瞬間に「捨て問題」としてしまった受験生もいたようであるが、易しくはないものの決して難度が高い問題でもないので、非常に残念なことである。
また問題90のKJ法は、単に「4つのSTEP」を丸暗記しているだけでは素直に正答を導くことが困難な、良く考えられた問題であると思う。総じて今年の問題については、受験生の実力を的確にはかる、良い出題であったようである。
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相談援助の
基盤と専門職 |
例年、比較的得点しやすい科目の1つであり、今年も一部の選択肢などで判断に迷うようなものがあったが、全体的には難易度は易しめで、ここで得点を稼いだ受験生も多かったと思われる。
問題全般の傾向として、一問一答形式にしても事例問題にしても、合格水準に達している知識を持った受験生であれば、ほぼ容易に解答できるような出題内容であった。特に問題92のグローバル定義などは、出題が十分に予想できるものであり、もし仮に内容が不明だったとしても、落ち着いて語彙を確認し、福祉的な概念など類推しながら考えてみれば、自然と誤りの選択肢は見えてくると思われる。
また事例問題についても、近年の受験生一般の傾向として長い文章を読むということを苦手としているようだが、今回の事例問題の3問とも、ざっと問題文を読んだだけでも、選択肢の正答が明らかに一つ絞れる内容であった。素直に、そして文章の意の通り、余計な先入観などを一切排除し、原則通り考えて選択肢を選べばよいだけなので、ここでの得点は合格のためには必須である。
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相談援助の
理論と方法 |
ソーシャルワークにおける主要人物の理論と代表的なアプローチ、並びに多様な場面における事例問題を中心に、出題基準の全般にわたり、非常にバランスよく出題がなされた。一部のアプローチ理論や事例問題において判断に迷う選択肢が見受けられた以外では、その他の問題はテキストレベルの非常にオーソドックスな事項を問うものばかりであり、受験生としても先の科目である基盤と専門職と合わせて、非常に解答がしやすかったのではないだろうか。特に理論問題については、過去の出題と比較して明らかに易化したようである。
近年では事例問題を除けば、出題全体において直接援助技術の出題割合が多くなる傾向にあったが、今年は間接援助技術や関連援助技術の出題も幅広く作問されており、その点でも良問の出題と言える。受験生としてはケースワークやグループワークなどの直接援助の分野だけに限らず、援助技術体系の隅々まで、一通りの学習は今後とも必要であろう。
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福祉サービスの
組織と経営 |
出題基準を遵守し、全体のバランスに配慮した出題内容となっている。受験生にとっては、比較的出題される問題の予想が立てやすい科目といえるのではないか。問題119の社会福祉法人に関する問題は、社会福祉法人改革が施行されたので、評議員に関する出題が予想されていたが、ふたを開けると驚くほど、基本的な設問に終始しものであった。多くの受験生が得点できるサービス問題といえよう。問題120は、医療法人と特定非営利活動法人に関する問題であるが、公益法人の趣旨を理解できていれば残余財産の処分に関する設問が正しいとすぐに答えられたと思う。問題121はこの科目では珍しく、暗黙知に対する出題であったが、福祉人材の確保と定着が課題となっている現状を踏まえての時事問題といえる。問題122は例年なら集団に関する理論や人名を問う問題が出題されていたが、今年度はかなりシンプルな設問となっている。問題123のリーダーシップ理論に関する問題は、昨年は事例問題であったが、今回は原点回帰して択一問題となっている。テキストを一読しておくとフォロワーシップ理論に関する設問が正解であると、迷うことなく答えられたと思う。問題124は予想通り社会福祉法人の会計に関する出題となったが、事前に準備していれば対応できるレベルであった。問題125は、人事管理・労務管理に関する出題が予想されていたが、今回は労働意欲とキャリア形成に関する問題が出題されている。問題121と同様に現状の福祉経営の課題を踏まえての出題と考えられるが、内容的にはそれほど難しくなく、メンタリングに関する5が正解である。
この科目に関しては、今後もテキストをベースとしながら併せて、現状の福祉経営に対する課題を盛り込んだ出題が増えてくると思われる。
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高齢者に対する
支援と介護保険制度 |
出題全体において、今年は例年と比べて易化したようであり、出題数も10問と多いため、しっかりとした学習をしてきた受験生にとっては、得点を稼ぐ科目となったのではないだろうか。また出題全体としても、当然ながら介護保険制度からかなりの出題がなされたので、どの受験生も十分に介護保険制度については学習してきたと思わることからも、対応がしやすかったとのではないだろうか。
介護保険以外の特徴的な出題としては、問題126の高齢者の就労状況や、問題133の認知症サポーターキャラバンなどがあげられる。学習を進める上でなかなか手がまわらない分野であり、受験生の間で正答に大きな差が出たのではないだろうか。また一般的に苦手分野としている受験生も多い、問題127の歴史分野も多少苦戦をしいられたかもしれない。なお今年は介護の問題が問題130の1問のみの出題であった。旧試験で存在した「介護概論」の試験科目を内包したことから考えれば、2問程度の出題があっても良いのではと思うが、難易度の点や高齢者分野も制度が多様化していることを考えると致し方ないのかもしれない。
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児童や家庭に対する
支援と児童・家庭
福祉制度 |
近年では問題が難化しつつあったため、対策の立てづらい科目の一つとなっていたが、今年はその様な傾向から脱し、基本的な問題を中心としたものであり、その意味では全体的に今年の出題は易化したと言えるだろう。
内容としては科目の性格上、児童福祉法を中心として要保護児童施策の分野が多く出題される傾向にあったが、今年は子育て支援施策の内容として、問題136の子ども・子育て支援法や、問題137で保育所等の報告書の内容が出題されたのが特徴的と言える。また問題140や問題141において、ひとり親家庭支援の内容が出題されているのも、近年の児童福祉を取り巻く状況を考えれば必然的な出題と言えるだろう。
また問題そのものも、例えば問題141では選択肢2の解答にあたり法律上の正確な知識が出てこなくても、「堀木訴訟」のことが想起できればおのずと正否は見えてくる内容であった。作問者がそこまで念頭においていたかどうかは無論不明だが、そういった関連する知識が役立つような問題は、しっかりと学習を重ねてきた受験生の力量を正確に反映することなることからも、望ましい作問であると思う。そういった点も含めて、総合的に良問が揃った出題内容であった。
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就労支援サービス |
出題数4問という制約の中では、更生保護制度と同様に、なかなか出題基準の内容を踏まえて万遍なく科目の内容を作問するのは難しいと思われるが、4問全体のバランスを考えると、過去の出題を踏まえて上で苦労して作問されたのではと、その意図が垣間見える内容であった。
具体的には従来の障害者や生活保護受給者を対象とした出題内容に加えて、問題145ではハローワーク、問題146では障害者就業・生活支援センターの事例など、この部分は従来通りの傾向を踏襲する内容であったといえる。なお問題144で求職者支援法が出題されたのは、受験生の方々は驚かれたかもしれないが、出題が目新しいだけで、内容的には平易なものであると言える。
よって上記内容を考えれば、今年は過去問との比較では傾向が変わったと言えるのかもしれないが、そもそも出題数が少ないことから、それは致し方ないこととも言える。雇用施策やその関連法、各種就労支援機関の役割等の分野という、メインの主題分野からは作問されていることからも、この科目の学習上、試験に問う必要な内容を満たした作問内容であった。
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更生保護制度 |
例年、「更生保護制度の概要」からの出題が圧倒的に多く、特に制度の概要と保護観察制度が定番化しているので、その意味では今年もその傾向は踏襲されていた。出題内容についても、過去の試験においては制度の手続き面における細かい規定まで出題される場合などもあったが、今年は法の条文通りに基本的な事項が問われており、平易な内容と言えるだろう。比較した場合に、この前の科目の就労支援サービスが多少難易度が高かった分、こちらの科目の方が明らかに易しかったため、受験生の中には、4問全問正解という結果になった者もそれなりにいたのではないだろうか。
全4問の出題の中では、比較的だが問題150が難しめだと言える。ただあくまでも他の問題との比較なので、内容的には少年法の少年の各種定義をふまえ、少年司法の流れを概念的にでもつかんでいた受験生は、おそらく正答を導くことができたのではと思う。
今回の4問を見て感じたのは、作問者が過去問対策を通じて、しっかりとした学習をしてきた受験生の努力を正当に評価するという作問の努力をしているという事実である。その努力の結果の見える、バランスのとれた良い出題であったと言えるのではないだろうか。
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