専門科目 |
分析 |
社会調査の基礎 |
午後科目の最初であるが、毎年のごとく開始後出鼻をくじかれるような、難易度の高い内容が出題されるのがこの科目であったが、本年度については、多少はその傾向が和らいだようである。但し個別の問題・選択肢については、点のとりづらい内容もあり、やはり今年も受験生は苦労したようであある。
特徴的な問題を挙げるとすれば、やはり問88であろう。最初に問題を見た受験生の感想としては、「計算が必要なのか・・・」と焦ったという意見を相応に聞いたが、実は問題文を落ち着いて見てみれば、容易に正解がわかる内容であった。見た瞬間に「捨て問題」としてしまった受験生もいたようであるが、一見難解に見えるが実は易しいという、こういったパターンもあるので、何事もあきらめないことが肝心である。
また問題86などでは、選択肢の4で日本を縦断している調査なので正しい選択肢と判断したという受験生もいたようであるが、なかば冗談で作ったような選択肢にひっかかるようでは、まさに出題者の思う壺である。しかも正解の選択肢2は、第24回試験で既に1度出題済みである。午後の最初で気負いしている面もあるとは思うが、問題文の最初をよく読み、この科目に限らず、何を問うているのか改めて確認してから問題を解く慎重さが、試験には大事である。
|
相談援助の
基盤と専門職 |
例年、比較的得点しやすい科目の1つではあるのだが、今年は一部得点のとりづらい問題があったため、少し苦労されたかもしれないが、全体的には難易度は易しめで、ここで得点を稼いだ受験生も多かったと思われる。具体的には問91や問95~97まで、合格水準に達している知識を持った受験生であれば、容易に解答できただろう。また問92の出題については、IFSWの政策声明を直接読み込んだ受験生は、全体としては少数派であろうが、落ち着いて文章を読み、福祉的な概念など類推しながら考えてみれば、自然と誤りの選択肢は見えてくると思われる。つまり一般常識に基づく文章理解で解答は可能ということである。
これは相談援助の理論と方法なども同様であり、ひいては試験科目全般に言えることであるが、問題の解答にあたっては、選択肢ごとに正確な知識に基づく正否の判断が第一であることは言うまでもないが、仮にその知識がない、あるいはあやふやであっても、いわゆる常識を働かせれば解答が可能な問題が、出題全般の中ではそれなりに毎年散見されている。そのことが顕著に見られたのが、この科目の今回の特徴ではないだろうか。
|
相談援助の
理論と方法 |
主要人物の理論と代表的なアプローチ、並びに多様な場面における事例問題を中心に、非常にバランスよく出題された。一部のアプローチ理論や事例問題において難問があった以外は、テキストレベルのオーソドックスな基本事項を問うものばかりであり、受験生においても非常に解答がしやすかったのではないだろうか。近年では出題全体において相対的に間接援助技術や関連援助技術の出題が少なく、そして出題されると難問となる場合が多かったが、この点が今回改善されているのは、非常に喜ばしいことである。その分受験生としてはケースワークやグループワークなどの直接援助の分野だけに限らず、この分野でも、一通りの学習は今後とも必要であろう。
この科目については、事例問題であってもそれ以外の出題であっても、どちらも援助者の「姿勢・態度・倫理・価値」 に関する出題が中心となるという点では変わらない。そのことを形式や内容を変え、多面的な出題としているだけである。素直に、そして文章の意の通り、余計な先入観やなどを一切排除し、原則通り考えて選択肢を選ぶことが、解答の基本であり、そしてすべてである。
|
福祉サービスの
組織と経営 |
専門科目の中では、例年難しいといわれてきた科目であるが、今年度の問題は驚くほど平易であった。出題数は7題であり、問題119は、定番の社会福祉法人に関する問題である。久しぶりに会計についての知識を問われたが、過去問で貸借対照表、資金収支計算書、土地が減価償却の適用除外であることを理解しておけば、解答を導けたはずである。問題120は、デミングサイクルに関する問題だが、こちらに関しても以前出題されており、しっかりと受験対策に取り組んでおけば、解答が3であるとすぐに答えられたと思う。問題121は、昨今推奨されているキャリアに関する問題であった。キャリアアンカー、キャリアプラートといった、テキストには載っていない専門用語が出題されており、受験生は困惑したのではないか。問題122は、組織やグループではなく、チームに関する問題が出題された。こちらもテキストには、掲載されていないが、集団の力学に関する基礎理論に基づいて、設問を丁寧に読み込めば解答を得ることはできる。問題123は、人材確保・育成に関する問題である。ハロー効果、ジョブ・ローテーション、目標管理制度、人事考課いった用語を理解しておくと、1が正解であるとわかる。問題124は、苦情対応、事故対応及び事故防止に関する事業者の対応を問う問題である。運営適正化委員会の役割が、苦情の受付や相談であることを理解していれば、必然的に正解は4であるとわかったはずだ。問題125は、労働安全衛生管理とメンタルヘルスに関する問題である。こちらの出題も、頻出度が高いので、しっかりと準備していた受験生が多かったのではないだろうか。今年度の出題傾向を総括すると、リーダーシップや経営組織に関する、学術的な理論を問う問題は影をひそめ、リアルタイムで社会福祉事業所が、直面している課題に対しての問題が出題されている。極度の人材不足に苦慮する現状を踏まえて、今後もこのような出題傾向が続くのではないだろうか。
|
高齢者に対する
支援と介護保険制度 |
出題全体において、今年は例年と比べて明らかに難化しており、出題数も10問と多いため、得点を稼ぐつもりの受験生も多かったと思うが、ふりかえってみると点数が伸びなかった受験生も多かったのではないかと思われる。また出題全体としも、介護保険制度からかなりの出題がなされたので、どの受験生も十分に介護保険制度については学習してきたと思うが、その多さに問題を解きながら辟易したのではないだろうか。
介護保険以外の特徴的な出題としては、いわゆる「オレンジプラン」が出題されたことである。この点は十分に出題が予想されており、また出題の内容も良かったと思うが、ここまで出題するなら、認知症初期集中支援チームとしての、認知症地域支援推進員のところまで出題しても良かったのでは、試験という形での学習の効果を考えればと、個人的には残念に思う。
また介護の問題である問128と129の2問については、介護職員初任者研修などのテキストにそのままの記述で書かれているぐらい、基本中の基本の内容で、例年通り介護分野の出題は、いわゆるサービス問題であった。
|
児童や家庭に対する
支援と児童・家庭
福祉制度 |
近年、問題が難化しつつ、更に選択肢の内容も細かい点を問うという対策の立てづらい出題となってきていた児童福祉であったが、今年はその様な悪しき傾向から脱し、基本的な問題であきらかに点を取らせるような出題が出てきており、その意味では全体的に今年の出題はやや易化したと言えるだろう。
出題内容としては児童福祉法が中心となる、原点回帰の様な出題となっており、加えて児童の権利に関する条約や特別児童扶養手当など、基本的な出題が見られた。また全体的に問題文が短く、そのため容易に解答も見つけやすくなり、この前の科目の高齢者に対する支援と介護保険制度で苦労した分、「ここで得点調整しているでは」というぐらいの難易度の差であった。
また出題の特徴として、問142の事例が触法少年に対する児童相談所の対応であった。更生保護制度とあいまって、少年司法もこれからこの科目の重要なテーマに今後なってゆくと思われる。近年の次世代育成支援(子育て支援)のテーマとあわせて、この分野の出題も今後は定番化してゆくのではないだろうか。
|
就労支援サービス |
従来の障害者や生活保護受給者を中心とした出題に加えて、労働統計や障害者雇用率制度など、従来通りの傾向を踏襲する内容であった。更に問題の難易度についても正答に迷うものがなく、前年度等や過去の出題と比較しても、今回は明らかに易化した。しっかりとした学習を積み重ねてきた受験生であれば、4問全問正解したのではないだろうか。
もともとこの科目と密接にかかわっている、午前科目の「低所得者に対する支援と生活保護制度」と、「障害者に対する支援と障害者自立支援制度」が、今回の出題では過去の出題より難化したことを考えれば、こちらの科目で調整をはかったのかもしれない。
ただ問題数を考えると致し方ないのかもしれないが、その2つの科目を前提とした上での、雇用施策やその関連法、ハローワークや地域障害者職業センターなどの各種就労支援機関の役割等の分野からの出題がされなかったことは、特にこの科目の学習上いかがなものだろうか。無理を承知で言わせてもらえば、定番化しつつあった「労働法規」からの出題もなく、問題そのものは良問であっただけにそのような分野からの出題がなかったことは残念であった。
|
更生保護制度 |
例年、「更生保護制度の概要」からの出題が圧倒的に多く、特に制度の概要と保護観察が定番化しているので、その意味では今年もその傾向は踏襲されていた。しかしながら、傾向はその通りであるが、内容は過去の試験と比べて確実に難化しており、制度の手続き面における細かい規定まで出題されており、丸暗記の受験生では到底太刀打ちできない内容であった。この前に科目の就労支援サービスが易しかった分、受験生の中には、4問全問不正解という結果になった者も、相応数いたのではないだろうか。
特徴的な出題としては、やはり問150であろう。更生保護制度における最新の取組をまず知っているかということに加えて、単に選択肢の中の名称を知っているだけではなく、その位置づけや具体的な内容までおさえてなければ解答できない問題であった。もともと科目のボリュームが少ないのが更生保護制度であるが、ここまでの範囲の出題がされるとなると、今後は学習における受験生の負担は当然に増すこととなる。いたずらに範囲を広げるのは無論良くないと思うが、しかしながらこのような内容は、しっかりとした学習をしてきた受験生の努力を正当に評価するという意味では、非常に良い出題であると言えるのではなだろうか。
|