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第24回 社会福祉士国家試験 科目別分析【専門科目】

専門科目 分析
社会調査の基礎  出題傾向はここ数年、大きな変化はなく、出題予測も立てやすかったのではないか。「社会調査法の倫理」「量的調査の方法」「面接法」「観察法」について基本的な内容を理解していれば十分に回答が可能である。
 問77(正答4)、問78(正答3)、問82(正答2)は基礎問題である。問82のアクションリサーチは出題頻度が高く、押さえておく必要があるでしょう。問81(正答3)のアクティブ・インタビューという言葉は聞き慣れないが、消去法で十分に回答可能である。問83(正答4)のCATIという言葉もやはり聞き慣れないが、対象者もコンピュータを用意しなければならないというのは、いささか不自然に感じ誤りであることがわかる。
 問79は、リッカート法とSD法の違いについて問う問題である。SD法が感覚的な形容を測定する尺度であるのに対し、リッカート法は社会的態度を測定する尺度である。この問題は認知度を把握するための方法を問うものであるから正答は1となる。
 最後に問80であるが、この問題を回答できた受験者はほとんどいないのではないか。社会福祉士の国家試験合格ということがとりあえずの目標であるなら深追いは禁物である。
相談援助の
基盤と専門職
 前回試験で数問出題されていた相談援助の形成過程からの出題が無く、過去問題でこの科目の範囲を会得していた受験生は違和感を覚えたのではないだろうか。しかし、問題の難易度としては平易なもので、適切、最も適切の選択問題でも正答の絞込みが読み進む段階で可能なものばかりである。
 問題84社会福祉士及び介護福祉士法に定められている義務、問題85利用者本位の基本原則、問題87は改正法からの役割、問題88相談援助におけるアカウンタビリティ、この4問はその内容を詳細まで確認していなくても容易に解答でる問題である。事例として2問出題されており、この2問も基本的な社会福祉士の視座や役割を問われているものでわかりやすい問題であった。全問正解とはいかずもかなりの得点が期待できたのではないか。
相談援助の
理論と方法
 短文事例、長文事例を合わせた問題数も昨年度と変わらず、事例問題の出題数の割合は今後も変わらないと思われる。
 事例問題は、例年通り難易度は低く、得点を上積みするチャンスとなっている。事例の内容自体も、選択肢もオーソドックスなものであり理論とともに、ソーシャルワークの基本的な姿勢を身に着けていれば迷うことはないだろう。ただ、問102のように事例問題の体裁はとりつつも用語の理解を問う問題も含まれているため、事例を読み込むことに過度に時間をかけず、素直に正答を導きだす技術も必要である。
一問一答問題については、予想通り理論中心で出題されている。問99のバイスティックや問92のパールマンなど、おなじみの理論も出題されているが、問110の「個人情報の保護」に関する問題が出されるなど、これからのソーシャルワーカーに必要な知識が問われている。『相談援助の理論』については基礎的な知識を身に着けると同時に、普段から世相の流れと傾向について意識しておくことが重要である。
福祉サービスの
組織と経営
 一般的なテキストの内容のみで対応できる問題は皆無であった。受験生はかなり、苦戦したのではないだろうか。問題112の特定非営利活動法人制度に関する問題では、過去に出題された設立要件や活動の内容等のオーソドックスな設問ではなく、役員報酬の有無や解散時における残余財産の処理にまで言及されている。これらは、法人としての特質を明確に理解しておかなければ正解を得ることはできない。問題113では組織理論、問題114は経営戦略に関する出題となったが、テキストには記載されていない人名や理論が多く、正解を導くことは困難であったと思われる。
 対応策としては、日経新聞等を熟読し、経営に対する専門的な知識を身につけておく必要がある。問題115はコンプライアンス、監査に関する基本的な設問であった。用語の理解ができていれば容易に正解を得ることができたのではないか。問題116の人事管理に関する問題は、ヒューマンエラー、効果者訓練、多面評価制度といった用語を知っていれば、正解を導くことができる。問題117のサービスマネジメント論と問題118のメンタルヘルス対策に関する出題は、基礎的な知識がなくとも設問に対する読解力があれば、正解が得られるものとなっている。今年度の傾向としては、設問の難易度に大きな開きがあったこと及び頻出とされてきたリーダーシップに関する出題がなかったことが特徴といえる。
高齢者に対する
支援と介護保険制度
 問119、問127は老人福祉法に関する問題からは高齢者施設の概要や仕組みを理解し、特別養護老人ホームと養護老人ホームそれに有料老人ホームや法律上含まれる施設及び老人福祉計画の内容を把握していれば解ける問題と思われる。問120は指定介護老人福祉施設の人員や設備及び運営に関しては実際、施設で働く介護員や施設ケアマネジャーとの連携を想定している問題と感じられる。問121と事例を含めた問122、問123では利用者が在宅で生活する介護サービスや医療的な導入を視野に入れた問題や介護保険の認定やサービス支給方法などを出題することで在宅での介護保険制度を含めた高齢者支援の在り方を学ぶことができる。問124、問125では介護保険での保険料や報酬内容を熟知することで回答できる。問1126身体拘束ゼロの取り組みを学び、実際の場面をうまく想像すれば解ける問題ではないかと思われる。問128の高齢者虐待や高齢者の養護者に対する支援では高齢者虐待内容以外にも市町村との連携、協力体制の重要性を意識した問題といえる。
 今回の試験では、すぐにでも高齢者への支援ができるような問題形式になっている。特に2つの事例では実際あると思われる内容を出題することで、社会福祉士が現場での知識として役立つ即戦力を期待している傾向が見て取れる
障害者に対する
支援と障害者
自立支援制度
2010(平成22)年12月に障害者自立支援法改正案が成立したものの、今回の試験ではその具体的な制度の中身を問うことはなく、問題133の手帳に関することや問題131の障害児支援に関することなど、障害者施策に関する基本的な条項を細かく問う問題があてられていた。その他、障害者の雇用の促進等に関する法律とバリアフリー新法が1問ずつ出題されたが、ともに頻出項目。問題135の設問の作り方には意地悪さを感じるものの、7問通じて基礎的学習ができていれば問題ないものが多かったのではないか。とはいえ科目名にある自立支援制度の根幹を担うはずの障害者自立支援法にほとんど触れていないことについては、異議を唱えたい。
問題133の解答については 平成12年3月31日 障第276号厚生省大臣官房障害保健福祉部長通知「身体障害者障害程度の再認定の取り扱いについて」を根拠にした作問であると思うが、3の設問について説明が不足している印象がある。航空運賃の割引率は航空各社によって異なるため一律ではない旨を盛り込めばいいはずである。
児童や家庭に対する
支援と児童・家庭
福祉制度
 新カリキュラム導入初年度であった一昨年同様、比較的現場実践に則した出題になっており、知識偏重と言えた昨年の問題とは明らかに傾向が異なり、現場にいる職員が有利になっている。もし一年おきに傾向を変えていくとすれば、来年は原論的な知識を要求される事になる。
 問題137は心理学範囲の内容でもあるが、児童の発達に関する基礎的な内容であり、テキストに目を通していればさして悩むことは無かったと思われる。問題142も同様。
 問題138から140はテキストに掲載されている範囲で2択程度までは絞れただろうが、正解を導くには法律の運用および改正経緯を知っている必要がある。問題141については市町村と都道府県の役割の違いが一般常識レベルで認識できていれば消去法で正解出来る。なお、問題140は消去法で正解1と考えられるが、全部支給と一部支給とは子どもが複数人いたとしても父が養育していたとしても(子どもの人数に応じ算定基準は異なるものの)所得に応じ算定されるため、選択肢文には一部疑義が残る。
 また、この科目に限らず事例問題には疑問の残る出題が多いが、問題136は 現場レベルで考えれば“最も適切な対応”を検討するための情報量が足りない。筆者は他の科目問題を見てはいないが、出題基準の中で文字数制限が昨年までよりも厳しくなったのだろうか。
就労支援サービス  この就労支援サービスのカテゴリにおいて日本国憲法に関する問題が出題されるとは予想しえなかった。問題143では日本国憲法第27、28条に関する問題で意図としてまずは労働に関する法律を整理せよということだったのではないかと推察される。
 日本国憲法における国民の三大義務の一つである勤労を考えると非常に選択肢を選ぶ際に混乱するところだが、文面に惑わされず、シンプルに選ぶ冷静さが必要だったと思われる。
 問題146では全国で生活保護を受給している世帯が震災の影響もあるが、高い水準にあることを鑑みれば、今回の問題は旬な問題ではなかろうかと思われた。
 今回の問題では対象者について言明するものであって、事業そのものの内容については問題文の事業名を見れば明らかである。しかしこの問題文で言う生活保護受給者の等をどこまで知識に留めておくことができたかが明暗の分かれ目であるが、難易度の高い問題であったことは否めない。
更生保護制度  問題形式は昨年と同じ五肢択一が4問(事例1問)であった。更生保護制度や更生保護法の基本的な理解から、解答を導き出すことができる問題であったと言えよう。特に奇抜な問題もなく、予想の範囲であったと思われる。
 問147は、少年司法に関するもので取り掛かりにくいと思われるが、保護観察対象者を理解していれば対応が可能であった。問148は、選択に迷う受験生が多かったのではないだろうか。更生保護の歴史の理解が必要であったが、消去法によっても解答を導き出せる。問149は、基本問題である。問150の事例についても、問題文をよく読むことと、相談援助業務としての視点から難解とは言えない。
 科目の攻略としては、ただの暗記ではなく、理解をしたうえでの記憶が必要である。更生保護制度の全体のイメージを掴むことと、更生保護法をしっかり読むことで学習が深まる。また、条文に触れることで、独特な言い回しにも慣れる必要がある。
今回は医療観察制度の出題はなかったが、こちらも科目の攻略としても同じである。 更生保護制度は、法に沿って制度が運用されていることや、それほど多い条文ではないため、法律を読み込むことで基本に忠実になる。

 

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