HOME > 第23回社会福祉士国家試験結果分析 > 科目別分析【専門科目】

第23回 社会福祉士国家試験 科目別分析【専門科目】

専門科目 分析
社会調査の基礎  7問中7問が5つの選択肢から1つを選ぶという問題であり、出題形式は今後もこの傾向が続くと思われ、あいまいな記憶では正解しにくくなっている。社会調査の基礎の場合出題範囲が限られており、その分出題者側もかなり掘り下げた問題を作成してくるという結果になりやすい。しかし今回の問題は前回に比べると比較的基礎的な問題が多く出題されているようである。
 問題78…正答5、問題80…正答4、問題82…正答3は基礎問題であった。問題79や問題81のような量的調査の方法に関する問題は苦手意識を持つ人も多いのではないか。テキストを文章だけで読んでもイメージが持てない為、表と照らし合わせながら学習するとより正答を導きやすくなる。問題79は4と5で迷った受験生が多かったのではないか。問題81…正答2 は悩んでも消去法で答えが導き出せ、問題77…正答3 についても消去法で解答できる。基礎統計という言葉を知っていればなんとかなる問題である。問題83…正答1 はすぐにわかりやすいが、4の現実的飽和という言葉は耳慣れないものであった。GT法についてはその手順まで学習する必要のある問題であった。
相談援助の
基盤と専門職
 昨年度と比較した場合、「相談援助の理論と方法」との違いが一層わかりにくくなった。出題基準に沿ったソーシャルワークの根幹的な内容を幅広く問い、その基本となる、援助者の「姿勢・態度・倫理・価値」 に関する内容が、出題の中心となっているのは確かだが、科目の捉えにくさという課題は、この科目については既に新試験2回目で明らかになった。
 具体的には、出題基準で明示社会福祉士法や行政専門職等の制度・法規のかかわる出題はなく、また倫理綱領や倫理的ジレンマなどからの出題もなかった。逆に出題基準に沿うという意味では、問84のソーシャルワーク形成過程や相談援助の理念から問87のノーマライゼーション理念に基づく出題など、次年度以降でも定番の出題となりそうなものを見られた。
 全体的な出題として見た場合、難易度は低めではあるが、問89など倫理学そのものからの出題であり、問88などとともに苦手としている受験生も多い分野であるから、ここでの失点が予想されるが、他の出題に関しては標準的なテキストに沿ってきちんとした学習を積んだ受験生にとっては容易な内容であった。
 なお昨年度で出題のなかった総合的かつ包括的な援助としてのジェネラリストの視点が問90で出題されており、「相談援助の理論と方法」とともに、ジェネラリスト・ソーシャルワークにかかわる問題は、今後は定番化してゆくものと思われる。
相談援助の
理論と方法
 一部、一問一答問題に難度が高い出題があった以外は、全体的に平易な出題であった。特に短文事例問題についは解答に悩む出題もなく、分野についてもバランスを考えた受験生のための良い出題であったと思われる。
 出題形式については、昨年度の新試験以降、長文による事例問題がなくなり、新たに短文事例問題が中心となったが、21問の出題中、問題文までの事例設定をふまえると主題の大部分を占めることとなり、この傾向は今後も続くことが予想される。
 個別の出題としては、予想通り、問91でシステム理論が出題された。問95の人と環境とに関する理解とともに、この分野はソーシャルワークを理解するためには必須の内容であるので、妥当な出題であると言える。また問94ソーシャルワークのアプローチについても、過去の出題実績から見ても出題基準から見てもともにこちらも妥当な出題であると言える。事例が出題の中心の中では、一問一答は理論中心で今後も進んでゆくのではないだろうか。
 事例問題では「姿勢・態度・倫理・価値」を、事例を通じて判断するというのが基本的なスタンスになっているため、過去の出題でも事例については平易な設問が多かったが、今年は昨年度よりも易化した。多少は惑わず選択肢もあったものの、しっかりとした学習を積んできた受験生にとっては大きく得点の上積みができたのではないだろうか。
福祉サービスの
組織と経営
 出題内容及び難易度は、去年とほぼ同様といえる。
 「福祉サービスに係る組織や団体」から社会福祉法人制度、特定非営利活動法人制度、医療法人制度に関する基本的な問題が出題された。法人格取得に関する基礎的な知識があれば簡単に答えられる問題であった。
 「集団の力学に関する基礎理論」からは2問出題された。その内、問題113はモチベーション理論における内容理論と過程理論を正しく理解しておかないと、正解を得ることは難しかったと思われる。
 また、昨年は出題されなかった財務・会計に関する基礎的な知識を問う問題が出題された。貸借対照表、減価償却、事業活動収支計算書といった用語を覚えておかなければ、受験生は手が出なかったのではないだろうか。
 リーダーシップに関する問題として、行動理論と条件適合理論に関する設問が出題されている。リーダーシップに関する問題は、毎年必ず出題されるであろう。
 福祉人材の確保・育成に関する問題も予想通り出題されたが、読解力があればコンピテンシーという用語を知らなくとも、消去法で正解を導くことが可能な設問であった。
 受験対策として、テキストの基本用語を確実に理解しておけば、高得点が狙える科目といえる。
高齢者に対する
支援と介護保険制度
 介護に関する問題では直接利用者と接した際、どのような介護技術や知識をもって対処することが望ましいか、更に施設での終末期ケアの利用者及び家族の対応など、より実践的な記述内容であった。また、在宅での支援体制を構築していく為、地域包括支援センターと市町村の役割や機能を確認することや介護保険制度を活用しながら、利用者を支援していく記述内容は、在宅支援の現場で実際に行っていることであり、適切な問題であったと言える。高年齢者の就業の実態や支援対策は少子高齢化社会での現実を考察すると必要な知識である。介護にかかわる職種に関する問題は、連携と協力体制を図っていく為にも他の介護職種について理解をしておきたい。国民健康保険団体連合会の問題は介護保険制度内で何をしているところであるか理解をしていればすぐに解ける記述内容になっていた。老人福祉法に関する問題では規定する施設や老人福祉計画、介護保険との関わりを熟知していなくてはやや悩む記述内容であった。
 今回の試験では、社会福祉士として現場で活かせるような知識とその場での現状把握ができるような事例を組み合わせた問題型式となっていたと言える。
障害者に対する
支援と障害者
自立支援制度
 障害者自立支援法に関する問題については、国が廃案を前提に協議している背景もあってどのように出題されるか注目していたが、蓋を開ければほとんどが自立支援法関連であった。だが難易度としては決して高くない。基本的な事業の区別、専門職の役割等を把握しておけば問題はなかったはずだ。事例2問は安易とまではいかなかった。自立支援協議会や職業準備支援など共に細かい知識を要する設問があり、受験者は戸惑ったかもしれない。問題130の障害者に関する統計や歴史的経緯などは基礎的な学習で対応が可能だと思われる。こちらの難易度はさほどでもない。全体として、比較的得点し易い科目だと思うが、基礎的知識の有無により大きく差が出るだろう。ある程度まで絞れるが、そこから先が学習の差になるのは他の科目と同様である。
 また、作問には大変な苦労があったかと思うが、問題135のように支援者が誰か明記されていない場合、解答を左右する恐れがあるのではないか。また問題129の5にある出典元の数値は「参考として載せたもの」とされており、「社会福祉施設等調査」を出典元とするのが適切であろう。受験者に対してやや不親切な印象を感じた。
児童や家庭に対する
支援と児童・家庭
福祉制度
 昨年度が比較的現場実践に則した内容であったため、新カリキュラムではこの方針で出題されるのかと考えていたが、予想に反し知識重視の問題が増え難易度も若干上がっていた。とは言え完全に基礎的学習を問われた問題137以外は、現状認識が有れば消去法で正解に近付けただろう。
 問題141については、実務を知っている受験生ほど悩んだのではないだろうか。
 選択肢3、5は論外として、消去法で考えれば(実際には難しいが)法的には申請可能な場合もある選択肢1を外し、実家に保育の協力を受けられる事から選択肢4よりも選択肢2になると考えるが、離婚や養育費について法律家への相談も可能とはいえ大部分の都道府県・政令市・中核市に各1カ所しか設置されていないセンターを紹介するのがこの段階で最も適切か、実務的にはいささか疑問が残る。
 実家との関係や実家の状況から今後どの程度の協力を継続して受けられるのか、夫の居所や連絡先を把握し夫に対し相談者側から連絡を取ることは可能なのか、また相談者とその子の健康状態や障碍の有無等、アセスメントが不足しており、情報が追加されれば保育園利用を優先する場合も充分考えられることは強調しておきたい。
就労支援サービス  4問を見渡すと奇抜な問題はないが、難易度は非常に強い緩急がついている印象である。 就労支援の目的を理解し、法律的な問題は自立支援法と障害者雇用促進法をしっかり分けて学習していれば難解な問題ではない。しかし労働市場に関する問題は関連の資料を読み込んでおかないと解けないことに加えて選択肢も絞りこむことが難しい難問である。
 事例問題についてはサービス問題としか考えられない。しかし問題数が少ない就労支援において出題科目の「18の得点群」すべてに得点するという点に関しては一安心といったところではないか。
 逆に民間企業の取り組みや法定雇用率といった問題は一切出題されていない。法定雇用率などについてはもはや周知の事柄なのかもしれない。
 暗記問題と言うよりも、この問題が解けることで就労支援分野においての社会福祉士としての役割を問われた出題であったと感じた。
更生保護制度  どの参考書を学習していても基本的内容の理解が必要と書かれていた。今回の試験内容は、まさに基本的内容の理解が必要であった。社会福祉士が例えば、刑事施設で働くとしよう。そこで働く役割とは何か?現在の社会福祉士にとって、未知の世界かもしれないが実際には、その能力や知識、行動、つまりソーシャルワークが求められているのが現実だ。地域で生活をしていく、という誰もが持つ、あたりまえの共通意識は、障害者であっても高齢者であっても、犯罪をした人であっても変化しようがないのである。
 基本的内容の理解とは、裏を返せば、新分野での社会福祉士の力量が求められており、ソーシャルワークを確実に実践ができるかということであろう。
 設問は4題で「概要」「生活環境の調整」「更生緊急保護」「社会復帰調整官の役割」でいずれも予想範囲内の問題であろう。誰が何を行うか、自立を支援するシステムはどのような仕組みか、基本的内容を理解できていれさえすれば、確実に得点はできる内容であった。

▲ ページトップへ ▲

 

Web自動採点