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第22回 社会福祉士国家試験 科目別分析【専門科目】

専門科目 分析
社会調査の基礎
この科目は、社会調査の意義と目的、データの収集、分析方法、質問紙の作成、質問紙における倫理、個人情報保護など、社会調査に関する基礎知識が問われます。従来の「社会福祉援助技術」、「社会学」、「心理学」に出題されていた設問が出題基準に見直しに伴い集約され独立した科目になりました。やや難易度があがったように感じます。
大項目「社会調査のおける個人情報保護」から個人情報の取り扱いに関して1問、「量的調査の方法」から調査測定の尺度の信頼性、統計分析の相関係数、クロス集計・カイ2乗検定による分析に関してそれぞれ1問、「質的調査の方法」から観察法、面接法、グラウンデッド・セオリー、KJ法、ドキュメント分析に関して3問、合計7問出題されました。
従来は、質問紙作成の注意点のダブルバーレルやキャリーオーバー効果など基本となる設問が見られましたが、本試験では、専門用語と分析実践の知識と解釈が求められました。統計分析の基礎となる技法への設問が多く、苦手な方も確実な学習により得点できたのではないでしょうか。
分析: 目白大学 佐近慎平 先生
相談援助の
基盤と専門職

本科目は文字通り、相談を中心とする援助に焦点を当て、特に相談援助の基礎にまつわる事項が対象となっています。相談援助に関する過去問題の傾向を見てみると、日本社会福祉士会の「倫理綱領」に関するものや、北米におけるソーシャルワークの展開に関するものについて取り上げられる問題が多くありました。このため、ソーシャルワークの発展過程を時系列的に把握することや、現場での実践をふまえた「倫理綱領」の理解が求められると予測されていました。
実際の問題は、国内外におけるソーシャルワークの発展過程をふまえたものや、「倫理綱領」において述べられている権利擁護といった相談援助の理念についての問題が出題されていました。加えて、「社会福祉士の行動規範」の内容に関する問題も出題され、「倫理綱領」にとどまらず、社会福祉士に関する規定や法制度についても理解しておく必要があったと言えます。
事例問題については、7問中2問出題されており、2問ともクライエントの尊厳を考慮しつつ行う対応について問うものでした。落ち着いて読み進めれば回答が導き出せる問題ですので、問題の難易度は標準的であったと言えます。
分析: 赤マル福祉事務局
相談援助の
理論と方法

本科目は、旧科目では社会福祉の計画・管理・社会調査までに及ぶ内容が出題されてきましたが、新カリキュラムに変わると、相談援助の理論や技術のみに焦点が当てられることが予想されていました。特にシステム理論や実践モデル・アプローチ、相談援助の課程と意義を押さえておく必要があると予測されていました。
実際の試験においては、ストレングス視点や様々なアプローチについて問う問題の他、相談援助の課程に関する問題が出題され、おおよそ予測されていた通りとなったと言えます。
また事例問題に関しては、具体的な対応例について回答する問題よりも、事例の状況や場面を通じてネットワーキングやグループワークといった、ソーシャルワークの関連用語について問う問題が目立ちました。加えて、文章の短文化は、今回の試験において全体的な傾向となりました。 いずれの問題に関しても、相談援助の理論や技術に関する用語の一つ一つを深く理解しておく必要がある問題であったと言えます。
分析: 赤マル福祉事務局
福祉サービスの
組織と経営

従来の社会学と社会福祉援助技術の一部の合わせ技だったようで、果たしてこの項目を「福祉サービスの組織と経営」としてよいのか疑問に残ります。広義で言えば福祉サービスの提供方法は経営に当てはまると思いますが、その点における出題が薄かったことで、従来の暗記物や過去問等に頻出した項目を押さえる学習により、ある程度の正答は可能だったと思われます。
逆に言えばそのような学習ができていない場合は、選択肢がある程度絞れるものの確信を持って正解を出せない項目が連続する、いわゆる「難項目」になったのではないでしょうか。項目名の印象から法人制度や経営、財源に重点を置いて学習をしてしまった方は、苦戦しただろうと思います。問題の印象からして、学習の度合いが顕著に表れる科目であったのではないでしょうか。
分析: 社団法人 千葉県社会福祉士会
高齢者に対する
支援と介護保険制度

本科目の設問数は、「障害者に対する支援と障害者自立支援制度」、「児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度」と比べても多く、10問であった。そのうち2問は事例を扱った問題であった。他の科目同様、全て5肢択一形式であったが、設問によっては明らかに誤りと分かる選択肢もあり、正解を絞り込みやすかったのではないかと思われる。
示された出題基準のうち、「高齢者福祉制度の発展過程」、「介護保険法における専門職の役割と実際」、「認知症ケア」、「介護保険法」、「介護と住環境」、「介護報酬」、「地域包括支援センターの役割と実際」、「高齢者虐待防止法」、「バリアフリー新法」より出題され、予想された範囲内で構成されていたと言える。
「老人福祉論」と同様に、制度について問う問題が多かった。介護保険制度に関連した設問が4問あり、他の制度との関連で問う問題も出題された。新カリキュラムになって初回の試験であったが、今後も法律、制度について、特に改正や新しく成立したものについては十分に学習することが求められる。
分析: 目白大学 坂井圭介 先生
障害者に対する
支援と障害者
自立支援制度

科目としては7問だが、就労支援サービス問145-146、更生保護制度問150は障害者福祉に関する問いなので、実質10問は旧障害者福祉論に関する設問が出題されたと言える。
個別の設問についてだが、歴史、障害者自立支援法サービスの内容・実施主体、発達障害者支援法の実施主体、障害者基本法の内容、事例問題など、出題しやすい分野がまんべんなく出題されたと言える。選択肢も「正しいものを一つ」がため、「誤った選択肢を4つ」探す作業が求められ、受験生は即答できる問題が少なかったのではないかと予測される。
特に131、134、135は条文の文言がそのまま選択肢になっているものが多く、また「都道府県」と「市町村」の入れ替えが目立った。135は、障害者基本法の改正の過程で削られた文言が選択肢の3つを占めており、改正過程をしっかりと捉えていなければ正答は難しい。
難易度は昨年並みだが、相変わらず条文を暗記するような学習が求められており、問題の傾向に変化があったとは感じられない。
分析: 京都府立大学 中根成寿 先生
児童や家庭に対する
支援と児童・家庭
福祉制度

問題136 母子及び寡婦福祉法での児童の定義は20歳未満である。児童福祉法と異なることは過去問等において理解できていると考えられる。<解答2>
問題137 短文事例問題で、それは新しい傾向であるが、問題自体は基本事項である。児童虐待の防止等に関する法律に照らすと、第6条の児童虐待に係る通告がある。「発見した者」が通告しなければならない。<解答5>
問題138 母子保健法に関する基本的事項であるが、あやふやな記憶だと正解はでない。同法第6条、11条、22条を参照してほしい。<解答1>
問題139 児童手当、児童扶養手当、特別児童扶養手当等は、名称は似ているが中身が異なる制度で過去に何度も出題はされている。養育医療については、過去問を解いている範囲でも間違いであることは明白である。誰、どこが、何をするか、どうするか明確に整理できていれば、解答はできる。<解答1>
問題140 売春防止法に関する出題である。近年、婦人保護施設は、DVによるシェルターの役割も果たしており実務的、事例的な問題で、内容としては基本的事項である。 <解答4>
問題141 短文事例問題。現代の子どもについての発達障害や虐待等の時事問題である。教科書や日ごろより新聞等でもよく書かれている内容であろう。<解答3>
問題142 児童相談所の業務についての基本的内容である。一時保護について過去問でも頻出である。<解答1>

総括すると、幅広く全体的に出題され、難易度は高くない。基本の問いかけで、いわゆるひっかけはないが5肢択一になっているため、あやふやな覚え方では正答できない。 今回の出題内容をみると、<支援>は制度を知らなければできないということに気がつく。つまり、社会福祉士としてどのように行動、支援するかが出題内容となっており、より実務的に問題が作成されている。この点を考えると実務経験のない学生さんには難しさが残ったかもしれない。短文事例問題は新しい傾向であるが、内容としては平易であり今後もより実務的な問題傾向が強まると考えられる。 児童福祉法等子ども、家庭に関する法制度は改正内容が多い。今後も日ごろより興味を持ち地道に試験に挑戦した受験者が得点できるのでないだろうか。
分析: 社団法人 千葉県社会福祉士会
就労支援サービス
対象範囲が広かったことから学習方法に苦心した受験生も多かったと思いますが、ふたを開けてみれば主として障害者自立支援法と障害者雇用促進法の基礎的な知識+αが求められた問題となりました。特に障害者自立支援法における就労移行支援、就労継続支援A・B型の整理ができていたかどうかで、正答率に差が出たのではないでしょうか。
新規設置科目ということで、出題もある程度想定内であったこと、消去法で選択肢がある程度絞れたことから、難易度もそれほど高くない程度に落ち着いたという印象です。この分野で出題されなかった部分は、生活保護世帯への支援は問題62で採用されていました。
分析: 社団法人 千葉県社会福祉士会
更生保護制度
新設科目ということもあり、また設問自体も最後であったことから、あまりじっくりと取り組めなかった受験生も多かったかも知れません。しかし、作問する側もこの科目で難易度を上げはしなかったようで、制度の概要を一般教養の範囲で知ってさえいれば、詳細を知らないでも消去法で正答を導き出せるか二択程度までは絞り込める問題であったと思います。
相談援助職として現場にいてもなかなか耳にしない更生緊急保護から出題された反面、地域にいる保護司や今後の成否を注目される地域生活定着支援センターについて出題されなかったため、ヤマを外された受験生もいたかも知れません。その点では、他の科目から現場に即した出題が増えた今回の試験の中では、いわゆる試験問題らしい問題であったと言えるかも知れません。
余談ですが、事例問題がありましたが選択肢には殆ど影響しない内容です。一問は事例を織り交ぜるように、作問者も要求されているのでしょうね。
分析: 社団法人 千葉県社会福祉士会

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