(更新:2013/03/15 17:30)
専門科目が新カリキュラムとなった最初の試験でした。試験結果の概要は以下のようになります。
合格基準点…72点(163点満点中)
なお、共通科目免除の場合…33点(80点満点中)
受験者…7,144人、合格者…4,062人、合格率…56.9%
不適切問題…なし
昨年と比較して、受験者数、合格者数ともに減少しました。また、合格点、合格率ともに過去最低の水準でした。問題の難易度が上昇したことが要因といえます。
第15回 精神保健福祉士国家試験 正解一覧(PDF)
第15回 精神保健福祉士国家試験 合格基準点・合格者数など(PDF)
今回の試験では、正しいものを「2つ」選ぶ形式が新たに出題される、という大きな変更点がありました。自動採点サービスの利用者や、実際に受験された方の声を聞いてみますと、何の説明もなく(注意事項に記載があったとはいえ)、「2つ」選ぶのを見落としてしまった方もかなり見受けられたようです。どのような意図があったのかは不明ですが、口頭でしっかりと説明があっても良かったのではないでしょうか。これでは、一生懸命勉強されてきた受験者の方の努力が報われません。
出題内容についてですが、基本的な問題も多く出題されている一方、例年以上に難易度の高い問題が出題されていました。中でも、共通科目「権利擁護と成年後見制度」と専門科目「精神障害者の生活支援システム」には、特に難易度の高い問題が多く、0点を取らないよう注意が必要でした。今回の試験でも、正誤の判断が難しい問題がかなり見られました。正解速報を比較してみても、見解が分かれるものもありました。このような問題が出題されてしまうと、受験者の方々はもっと戸惑うのではないでしょうか。
第7回以降のことではありますが、合格基準点を6割から大幅に下げなければ一定数の合格者が確保できないような出題はどうかと思います。精神保健福祉士としての資質を問うものであるか疑問が残ります。国家試験である以上、テキストでの学習により6割の点数が取れる難易度の出題をお願いするばかりです。
試験問題全体を総括すると、過去問だけでは通用しないと思われる方も多かったのではないでしょうか。今回の合格点は、例年よりも低い水準でした。裏を返せば、難易度が高かったとはいえ、その中でしっかりと得点を積み重ねられた方が合格できている、ということでもあります。難問・奇問が多いからといって途中であきらめず、確実に正解できる問題で得点を積み重ねられたかが試されたともいえます。新カリキュラムにおいても、精神保健福祉士に求められる資質や知識は不変です。今後の国家試験も、過去問学習を通し、教科書や法令を確認する学習を繰り返し行うことが必要不可欠といえます。
【共通科目】
・問題53
パートタイムの場合の、健康保険の被保険者になることが可能かどうかについて問われました。パートタイムの場合、一般社員の4分の3以上の勤務時間があれば、健康保険の加入が義務づけられます。4分の3以上を満たさない場合であっても、就労の形態や内容等を総合的に判断した結果、常用的使用関係が認められた場合は被保険者となります。
さて、この事例では、Gさんの労働時間は、通常の勤務の場合の4分の3を下回っています。健康保険の加入が義務づけられるケースではありませんが、健康保険の被保険者になることが絶対にできないか、というとそうではないように思えます。試験センターの正解は1となっていますが、選択肢1の「被保険者になることができない。」と、選択肢4の「被保険者になることができる。」という記述からも、判断が難しかったものと思われます。
【専門科目】
・問題73
正解速報の時点でも、2と4で迷いました。
選択肢2の「疾患から障害への諸帰結」という記述についての吟味が不十分でした。選択肢4の「活動の制限や参加の制約が、精神疾患に好ましくない影響を与える」の記述に惑わされました。
正確な理解が試される内容の問題でした。
※以下に、正答の判断にやや困難が伴う問題について、その判断基準等、赤マル福祉事務局としての見解をお示しします。
【共通科目】
・問題77
この問題では、消費生活センターの相談員の助言について問われました。選択肢1と選択肢2で迷われた方が多かったと思います。
制限行為能力を理由に取り消すことができるのは、民法第20条より、未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第17条第1項の審判を受けた被補助人です。Eさんは認知症ですが、事例文中には、成年被後見人などであるような記述はみられず、取り消しができるかどうかは、この事例文だけでは判断できません。
選択肢2のクーリングオフ制度ですが、訪問販売のクーリングオフ期間は8日間です。クーリングオフでは、法律で定められた事項が書かれた契約書面を受け取った日を初日として数えます。この事例では、高価な化粧品を購入して2週間たっていますが、契約書面をまだ受け取っていません。しかしながら、事例文中の「見慣れない化粧品を使っている」とあり、適切であるとはっきり言えないのも事実です。事例文だけでは判断しにくいのですが、選択肢2の方がより適切であると判断しました。
【専門科目】
・問題26
この問題は、事例文からケア会議への出席を求める行政機関の職員を2つ選ぶものでした。事例文中の「高血圧と糖尿病の持病があって、セルフケアが心もとない」という記述より、選択肢3の「保健センターの保健師」が正解の1つであることは判断できたと思われます。
もう1つの選択肢ですが、選択肢2以外の3つで迷ったと思われます事例文中に「就労経験はないがいずれ働きたい」とあり、就労支援もいずれ必要になると思います。精神保健福祉センターは、都道府県(指定都市)の精神保健福祉の総合的技術センターとして地域精神保健福祉活動推進の中核的機能をもっています。また、事例文中では「親の遺産があったがそれも尽きようとしており、障害基礎年金が唯一の収入」とあることからも、経済的支援が最優先であると考えられますので、選択肢1がより適切であると思われます。事例文に書かれた少ない情報から、何を優先すべきか判断することが求められる問題でした。
・問題59
この問題では、「精神障害者の生活のしずらさに焦点をあてた講座」について、精神保健福祉士にアドバイスを求められています。
事例文を読むと、「J精神保健福祉士は、施設コンフリクトを未然に防ぐことや、精神疾患や障害を抱えていても安心・安全に暮らせるまちづくりが必要」や、「同じく施設コンフリクトへの危機感を高めていた市内の精神科クリニック…」という記述があることから、講座の内容としては、施設コンフリクトの解消、つまりは精神障害者への差別や偏見をなくすにはどうしたらよいか、ということが主な目的と考えられます。選択肢3の当事者との交流体験を通して精神障害者への理解を深め(差別や偏見の解消につなげ)るとともに、選択肢4のように丁寧に振り返り、受講者のフォローアップを行うことが、より適切であると思われます。選択肢1の精神医学の理解や、選択肢2のボランティアの専門性については不適切、というものではありません。「より」適切なものを2つ選ぶ、と考えれば、選択肢3と選択肢4になると判断いたしました。事例文から出題者の意図を読み取れるかが問われたものといえます。
・問題70
この問題では、年金や手当について問われました。選択肢3と選択肢5で迷われた方が多かったと思います。
選択肢5ですが、特別障害給付金制度の受給対象者は、1991年3月末までの国民年金任意加入であった学生、1986年3月末までの国民年金任意加入対象であった被用者の配偶者であって、任意加入していなかった者のうち、当該任意加入期間内に初診日があり、現在障害基礎年金1・2級相当の障害に該当するものとして認定を受けた者です。事例文より、Lさんは47歳であり、ちょうど特別障害給付金の受給対象にあたると考えられます。
一方、選択肢3ですが、事例文中に、年金の加入状況について「在学中は公的年金制度のことを知らず、年金に加入していない」や「22歳から5年間勤めたスーパーマーケットでは、健康保険・厚生年金にも加入していた」とありますが、その後の年金の加入状況については事例文で記載されていません。しかしながら、「19歳の時に、不安や焦燥感からX精神科病院を受診し、統合失調症の診断を受けた」とあり、初診日が20歳以前ですので、障害基礎年金の活用が可能と考えられ、より適切であると判断いたししました。事例文に与えられた情報が多く、その内容をどう判断するかが問われました。
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