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第30回 介護福祉士国家試験 科目別分析【午前科目】

領域 午前科目 分析
領域I
人間と社会
人間の尊厳と自立 昨年と同様に2問の出題となっている。今回、問題1は、障害者の人権思想がどのよう経緯で誕生したのかを理解し、人権そして尊厳と自立の思想をめぐる歴史的背景と経緯を理解していれば解ける問題である。「人間の尊厳と自立」に関する歴史的背景は基本的に理解しておくべきである。障害者の自立生活運動を出題に出していることから障害者に対する尊厳と自立への関心の高さが見受けられる。問題2は、事例問題を通してアドボカシー(権利の代弁、擁護)についての問題となっている。アドボカシーの意味を理解し、介護福祉職が利用者と家族に対して、その方たちの関係性や背景を踏まえた上でどのような権利擁護の視点を持つべきなのか適切な対応方法をしっかりと理解し捉えておけば、おのずと解ける問題である。昨年はノーマライゼーション、今年は、アドボカシーの出題となっており、昨今の出題傾向からみても基本的な用語、理念は理解しておくべきであろう。また、人間の尊厳と自立に関わった歴史上の人物や出来事も合わせて理解しておき基本的な知識は押さえておくべきであろう。
人間関係と
コミュニケーション
例年通り2問の出題となっている。問題3は、利用者との関係を構築するためのコミュニケーションの基本を問う出題である。良好な人間関係を構築するためには、何が大切かを考えれば容易に解答できる基本的問題である。問題4は、短文事例で、施設に入所している利用者が、レクレーション活動を休むことが多くなり、担当の介護福祉職の言葉かけとして、バイステックの7原則の内容に該当する姿勢を問う出題である。バイステックの7原則を知っていても、どの場面でどのように対応するかを理解しておくことが大切である。第29回国家試験では、自己開示に関する問題と、先天的聴覚障害と後天的な視覚障害のある人とのコミュニケーション手段に関する問題であった。第28回国家試験では、共感的態度に関する問題と、パーキンソン病の利用者への対応の出題であった。最近の出題傾向としては、知識、暗記を問う問題ではなく、人間関係を構築するためのコミュニケーションの基本的な姿勢、そして、介護現場における具体的なコミュニケーション対応を問う出題となっており、学習する場合、知識だけでなく介護場面の状況をイメージして学習しておくことが大切であろう。
社会の理解 「社会の理解」は、現在の介護状況を取り巻く現状をふまえ、介護福祉士として制度、政策をいかに必要な知識として関連づけられるかを問う内容。出題傾向としては、高齢者、障害者、その家族の置かれている状況の理解、支援に必要な福祉関連の法制度等を問う問題で構成されてきた。今回も例年通り高齢者、障害者分野を軸とした「生活者の視点」に寄り添うための必要な知識を満遍なく確認する問題が多く、難易度としては、基本的知識を問う内容であった。頃年の社会状況等を関連づけて準備していた受験生にとっては、容易く正解を導き出せる問題であったと推察できる。具体的には高齢者分野からは5問、介護保険制度、地域包括ケアシステムの目的、役割、そして話題として予測されていた高齢者住宅の設置基準等を問う問題が出題。事例問題に関しては、高齢者の生活の継続を踏まえた観点から、応用力を確認する内容であった。かつ障害者分野からは障害者総合支援法、障害者差別解消法に関する出題、キーワードとしての「合理的配慮」に関する知識が問われた。また社会保障制度、統計データ、雇用関連に関しては従来通りの出題傾向であった。
領域II
介護
介護の基本 出題数は昨年同様、事例問題1問を含む10問となっていた。
今回の試験では海外連携協定(EPA)、社会福祉士及び介護福祉士法、自立支援の在り方、認知症の方への介護福祉職の対応、看護小規模多機能型居宅介護、個人情報の取り扱い、介護老人福祉施設の防災対策、認知症高齢者の訪問販売への対応、介護育児休業法、ストレスチェック制度について出題された。
難易度としては、例年通り標準的であり、基本的な知識で解ける問題が多かったと思われる。特徴的だったのは、問題17経済連携協定(EPA)についての問題である。介護人材の確保は急務であるため、今後技能実習制度などを含めた人材確保についての出題は高くなると思われる。昨年も出題された防災対策に関する問題や、地域密着型サービスに関する問題についても、今年度も出題されており、来年度以降も出題頻度しては高くなると思われる。
「介護の基本」は介護領域の中核となる科目であり、介護保険制度特に地域密着型サービスや自立支援の在り方、認知症ケア、介護職員の就労環境など他の科目でも重複して出題される内容が多いため、他の科目と合わせて重点的に勉強しておく必要がある。
コミュニケーション
技術
例年通り8問の出題である。「コミュニケーションの基本」から、受容、及び開かれた質問をする目的、「利用者の状態・状況に応じたコミュニケーション」から、抑うつ状態の利用者への対応、及び短文事例3問、「介護におけるチームのコミュニケーション」から、介護業務の事故報告、及びブレインストーミングの原則、の出題となっている。「コミュニケーションの基本」では、しっかり学習していれば容易に解ける問題である。「介護におけるチームのコミュニケーション」では、ブレインストーミングという語句に戸惑った受験生もいたのではないか。ストーミング(嵐が吹く)の意味を考えて、何とか解答を類推することになる。短文事例3問では、運動性失語症、及びアルツハイマー型認知症、そして、衰弱が進み「お迎えはまだかしらね」と言っている利用者への対応を問う出題であり、いずれも症状の理解と事例から利用者のおかれている状況を理解すれば解答にたどり着く問題である。総じて、多少聞きなれない語句があったが、設問をよく読み、文章を理解することで解答できる問題と言える。
生活支援技術 昨年と同様に、出題数は26問であった。その中には短文事例問題が3問、イラストを使用した問題が2問含まれる。出題数が26問と多いため出題基準の10の大項目からまんべんなく出題されている。科目としての難易度は前年よりやや低く、点の取りやすい内容であった。また前年度に見られた具体的な数字に関する問題はなかったが、排泄が4問「陰部の清拭」「排便のメカニズム」「直腸性便秘」「消化管ストーマ」と疾病や症状に応じた知識が問われた。イラスト問題43では介護福祉職が視覚障害者と列車を待つときの位置の問題で、丸の点字ブロックがどんな意味を持つかの理解で解ける問題であり、イラスト問題47の入浴の際、糖尿病のある利用者の特に注意すべき皮膚の観察部位の出題では糖尿病の合併症など『こころとからだのしくみ』と関連して理解が求められている。短文事例問題3問のうち問題35では訪問介護員の声かけ、問題39では口腔の清潔を保つための助言、また問題46では施設での介護福祉職と他職種との連携、家事の問題が5問で身体介護だけではない利用者の自立した生活のための幅広い知識と技術が問われている。
介護過程 出題数は8問で、そのうち事例問題が3問含まれており、出題数や傾向に大きな変化はみられなかった。『介護過程の意義』より「介護過程の目的」について1問、『介護過程の展開』より「アセスメント」「計画の立案」「評価」について3問、『介護過程の実践的展開』より事例問題が3問、その他「介護記録」について1問出題された。「介護記録」に関しては、昨年の「SOAP方式での記録方法」に次ぐ出題である。『介護過程の実践的展開』以外の出題は、介護過程に関する基本理論の理解ができていれば容易に解答できるものと思われる。一方で『介護過程の実践的展開』からの出題は、短文事例を読み、利用者を身体・精神・社会的な視点から総合的に理解し、介護過程の基本理論を活用して実践的な展開 をする応用力が求められるため、基本理論の理解のみでの解答は難しいと思われる。したがって、基本理論を習得したうえで、介護現場での実習や実務において、介護過程を実際に展開する学びが重要である。これらを通して、他の科目での学びも統合し、介護過程を実践できる力を身につけることが求められる。

 

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