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第23回 介護福祉士国家試験 科目別分析【午前科目】

午前科目 分析
社会福祉概論  この科目は社会福祉の歴史、社会福祉関連法、社会保障制度などの社会福祉に関する基本的な知識を幅広く問われる科目である。
 今年度の出題形式の傾向としては、最も適切なもの、正しいものを選ばせる形式は変わらずだが、穴埋め式や組み合わせ式の設問がなかった。
 出題傾向としては、ここ3年連続出題されていた社会福祉士及び介護福祉士法に関連する問題は出題されていない。また問題3の貧困者と生活保護に関する設問、問題5の日常生活支援事業に関する設問、問題8の雇用保険からの設問(ここ数年単独では出題されていない)をみると、昨年からの各種検討会や国内の世相を反映した出題傾向としては狭い範囲の問題が出題されていた。
 一方、社会福祉の概念やニーズ、利用者負担の考え方など広い範囲からの出題や、社会保障・社会福祉の歴史や国民年金からの出題などオーソドックスな出題もあり、昨年度も福祉人材確保に関する出題もあったように、参考書以外にもここ数年の傾向であるが社会福祉に関する社会情勢を意識した幅広い知識が問われたといえる。
老人福祉論  例年どおり10問の問題数であった。選択肢より正しいものを1つ選ぶ方式なので選択肢を吟味する必要があるので時間が要したと思います。
 介護保険法に関わる問題が4問(問題12~問題15)あり介護保険に関する知識の重要性が伺われる。地域包括支援センターや地域密着型サービスの重要性は、介護保険法改正に向けての議論の中心となっているので日頃から情報に目を向けておくことが大切になる。
 問題9・問題10は、言葉の定義や意味をしっかりと覚えておかないと正答を導けない問題となっている。また、高齢者の生活に関する問題も出題されていた。問題18は他職種連携を意識した問題で新たな出題傾向ではないでしょうか。高齢者を取り巻く環境がどのように変化しているか、どのような議論がなされているか、時系列的に整理しておく必要があるのだろう。
障害者福祉論  障害者福祉の基本理念、障害の概念、障害者福祉サービスの体系、障害者福祉の関連施策等と、広範囲の分野にわたってまんべんなく出題されていて、「正しいもの」や「適切でないもの」を選ぶ出題形式であるため、より正確、確実な知識が必要とされているものである。
 設問はどれも同様に基本的な知識が問われているものである。身体障害者手帳の交付対象である「内部障害」の7種類(2010年4月より肝臓機能障害が加わる)を身体障害者障害程度等級表で覚えていなければならない。障害者の権利保障の歴史も日本における「国際障害者年」を契機に、何が変化し始めたかをしっかりと理解することが必要である。 厚生労働省が作成した障害者保健福祉施策の方向性にも障害の種別を問わず「地域生活支援」がキーワードとなっているので「施設入所の推進」は適切であるとは言えない。障害者自立支援法は現政権が障害者自立法を廃止し、利用者の応能負担を基本とする総合制度をつくると明言しているので、今後の障害者福祉施策の動向から目が離せない状況にある。
 各分野とも制度・政策、歴史的変化などの定義をきちんと押さえることが必要である。
リハビリテーション論  リハビリテーション論からは、例年通り4問が出題されている。1問は「身体障害に関する語句の説明」、2問は「関節リウマチとリハビリテーション」、3問は「精神障害者のリハビリテーション」、4問は「リハビリテーションにおけるチームアプローチ」となっている。
  高齢者に対するリハビリテーションのみならず、身体障害、精神障害等、リハビリテーションが行われる複数分野への基本的な知識が必要であると云える。また、障害や疾病、それぞれの実態に応じたリハビリテーションのあり方への理解が問われる問題となっており、この傾向は例年通りである。特に、身体障害に関する問題では、脊髄損傷、脳性麻痺、二分脊椎等の障害に関する問題であり、基本的な知識をおさえられていたかが、明暗を大きく分けたと云える。
  なお、出題が続いていた「ICF」に関する問題は、今年はリハビリテーション論からは、出題されていない。しかし、障害者福祉論の分野で「ICF」に関する選択肢が今年も出題されており、今後も確実におさえていく必要があると云える
社会福祉援助技術  今回の出題で特徴的だったのは、「地域福祉活動」に関する問題(問題30)と「知的障害者」に関する事例問題(問題32~34)である。
 問題30は、住民の「地域福祉活動」への直接参加を求める方法を問う問題であった。実際においても活発におこなっていく必要がある支援なので、ぜひ押さえておきたい。
 事例問題は、障害者、特に知的障害者に対する支援を問うもので、これまでが高齢者中心であったことからすると珍しいが、内容は易しかったと思われる。介護の対象は高齢者に限定されないことを考えると、障害者関係についてもしっかりと勉強をする必要がある。
 逆に、恐らく多くの受験生が苦手とするソーシャルワークの理論家(リッチモンド、ホリス、パールマンなど)に関する出題は、今回はなかった。しかしながら、この傾向が今後も続くとは現段階では断言できないことは、受験生は心にとめておいた方が良いだろう。
 そのほか「ソーシャルアクション」「逆転移」(いずれも問題28)など社会福祉援助におけるその位置づけなどを確認しておく必要がある用語もあったが、「連携」(問題27)、「援助過程」(問題29)、「スーパービジョン」(問題31)は基本的な事柄である。全体的には平易な内容であった。
レクリエーション
活動援助法
 レクリエーション活動援助法からは、例年通り6問が出題されている。1問は、「レクリエーションの概念」、2問は、「グループレクリエーション活動援助の方法」、3問は、「レクリエーションの活動援助における活動課題に対する難易度」となっており、基本的な知識と考え方及び実際に即した内容を問う問題となっている。レクリエーション活動援助の基本である利用者の尊重、個々に応じた支援の大切さと、QOL(生活の質)の向上を意識した援助のあり方を理解できていれば、解ける問題であると云える。
 事例問題については、例年通り出題されている。4問は、「利用者の活動意欲の引き出し方」、5問は、「認知症の症状が出てきた利用者に対するレクリエーション活動援助のあり方」、6問は、「ボランティアのサークル活動での役割」となっており、利用者へのレクリエーション活動の働きかけ、声かけと云った面から問題が出されている。利用者のレクリエーション活動への関わり方の理解、高齢者に対する地域ボランティアの活動に関する基本的な知識があれば解ける問題であると云える。
老人・障害者の心理  人間の成長発達と心理的理解の分野では、過去の出題問題を見ると、毎回、発達の諸理論・発達課題・発達段階あるいは、欲求・動機付けに関する問題が出題されていたが、今回は発達理論、欲求や動機付けの出題はなく、記憶に関する問題にとどまった。
 老化とその心理的影響の分野においては出題はなく、認知症高齢者、視覚障害者、先天性聴覚障害者、アスペルガー症候群、精神障害者と、個々の障害に対する問題となったため、一つ一つの障害に対する理解と同時にそれぞれの障害者の心理と対応についても理解しておく必要があった。
 また、社会的傾向として、虐待(高齢者・幼児)がマスコミにより報道され、国民の大きな関心事となっている。今回は、この中から高齢者に対する虐待が出題されたことは、常に社会情勢にも目を向ける姿勢が求められた。
 心理学の基礎的な知識をしっかりと理解していれば、問題の難易度は標準であったと考えられる。
家政学概論  家政学概論からの出題は例年と同じく8問が出題されている。
 内容としては「家庭経済と消費生活」「栄養素と消化吸収」「食品の特性と食中毒」「調理方法と調理性」「高齢者と障害者のための食生活」「被服素材、洗濯」「住居の役割、機能と管理」の部分から出題となっている。
 出題傾向としては、ほぼ例年と変わらないが食生活、衣生活は近年出題が続いているため、今後も理解を深めていく必要がある。基本的な生活に近い出題となっており問題の難易度も例年より高くはないと思われる。
 出題の中には高齢者の死亡事故原因や発生件数、また、住宅火災警報器の設置について等、ニュースや新聞、統計資料からの出題もされており日頃の情報収集による広い知識が必要である。

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