国家試験「合格への道」(7) 「問題と答を覚えてしまう」とはどういう状態だろうか?

社会福祉士や精神保健福祉士、介護福祉士の国家試験に合格するためには、過去問学習は必要不可欠です。

しかしながら、過去問学習をしていると、「問題と答を覚えてしまう」と感じてしまう方も多いのではないのでしょうか。

そこで、「問題と答を覚えてしまう」とはどういう状態だろうか?について考えた上で、過去問を有効に活用する学習法についてまとめてみたいと思います。

まず、例題を見ながら「問題と答を覚えてしまう」状態について考えてみます。

・例題(社会福祉士 第31回 問題18、精神保健福祉士 第21回 問題18)
 人口に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 人口転換とは、「多産多死」から「少産多死」を経て「少産少死」への人口動態の転換を指す。
2 世界人口は、国連の予測では、2020年以降減少すると推計されている。
3 第二次世界大戦後の世界人口の増加は、主に先進諸国の人口増加によるものである。
4 日本の人口は、高度経済成長期以降、減少が続いている。
5 人口ボーナスとは、人口の年齢構成が経済にとってプラスに作用することをいう。

この問題の正解は5ですが、問題文の最初の方を読んだだけで即座に5と判断するのは、明らかに「問題と答を覚えてしまう」状態です。

このような学習を繰り返しても、国家試験に必要な知識が身につかず、試験問題に太刀打ちできません。

また、即座に5と判断しなくとも、人口ボーナスの選択肢が正解、と覚えてしまい、他の選択肢を全く吟味することなく回答するのも、「問題と答を覚えてしまう」状態、といえます。

「問題と答を覚えてしまう」状態にならないよう、過去問学習を進めていくことが重要になります。

では、過去問を有効に活用する学習法についてまとめてみたいと思います。

「問題と答を覚えてしまう」学習方法では、正解の選択肢文についてはそれなりに見るものの、誤っている選択肢文の確認が疎かになりがちです。

このため、過去問学習をより効果的に進める上で、誤っている選択肢文もきちんと確認することが重要になります。

国家試験では、5つある選択肢の中から、正しい(適切な)ものを1つ(または2つ)選びます。
このため、正しい(適切な)選択肢よりも「誤っている(適切でない)」選択肢の方が圧倒的に多いです。

誤っている選択肢文から学べる内容も数多くあります。
これらの選択肢を疎かにする、ということは、過去問の大部分を無駄にしている、ということを意味します。

誤っている選択肢文についても、なぜこの選択肢が誤りなのか、その根拠をおさえておくことが大切になります。
また、誤っている箇所を特定できるものについては、どこが誤りなのかを見極められるようにしておきましょう。

先ほどの例題であれば、おさえておきたいポイント事項は
選択肢1:少産多死ではなく「多産少死」
選択肢2:国連によると、2020年以降も人口が増加すると推計されている
選択肢3:先進諸国ではなく「発展途上国」
選択肢4:日本の人口は、2008年をピークに減少に転じている(総務省統計局「人口推計」)
となります。過去問題集の解説のような長文でまとめる必要はなく、なぜ誤っているのかがわかればOKです。
また、正しい語句に直せるものについては、正しい語句を知っておくと、より効果的です。

過去問の中には、よく出題される内容も多いです。
国家試験に合格するためには、確実に点数を取るべき問題といえますが、頻出の選択肢文は、誤っている箇所も類似していることが多く、過去問学習を繰り返すことにより、どこに着目したらよいかが見えてきます。
(「問題と答を覚えてしまう」学習方法では身につけることはできません。)

これは、過去問に限らず、模擬試験であったり、実際の国家試験など、初めて見る問題であっても、力を発揮します。

選択肢文の中で注意すべき箇所がわかるようになるため、明らかに誤っている箇所を手早く見つけられるようになります。

実際の試験では1問にかけられる時間は1分程度ですので、時間短縮の点でプラスとなります。
問題文が長いものであっても、どこか1か所でも誤っている箇所があれば、その時点でこの選択肢は正解でない、と見抜けます。

誤っている選択肢文を減らすことにより、正解の選択肢文を当てる確率が上がります。
1点でも多くの点数を積み上げるためにも、過去問を有効に活用することが大切です。

ここまで、誤っている選択肢文についてまとめてきましたが、正解の選択肢文も重要です。

国家試験に合格するには、正解の選択肢文を的確に見つけ出す必要があります。
このため、過去に出題された正解の選択肢文を覚えることは、試験対策の上ではプラスとなります。
(当然のことですが、正解の選択肢文についても、丸暗記するだけでなく、その根拠をおさえておくことが重要です。)

社会福祉士や精神保健福祉士、介護福祉士の国家試験では、毎年、類似した内容から出題される問題も多く、選択肢レベルで見ても、過去に出題されたものと類似したものもかなり見られます。

実際の出題パターンとして、正しい語句を誤った語句に変えるなど、正しい文章に手を加える、といった出題もかなり見られます。

ですので、正しい選択肢文を数多く覚える、というのは重要な試験対策となります。
この積み重ねは、国家試験に合格するための大きな力となります。

過去問学習を繰り返していくと、誤っている選択肢文について、選択肢文を読んでいて何か違和感を感じる、という場面に遭遇することが多くなってきます。

この感覚、ぜひ大切にしてください。
この違和感を感じられるようになることで、選択肢の○×を判断するための勘所が養われてきます。

「問題と答を覚える」-これは過去問学習の弊害であり、良くないことと思われがちです。
しかしながら、「問題と答を覚える」くらいまで繰り返し問題を解かなければ合格は程遠い、ともいえます。

以前にもまとめたことですが、社会福祉士や精神保健福祉士、介護福祉士の国家試験は、全体の7割ほどが過去問学習で対応可能です。
このため、過去に出題された内容を有効に活用することは、合格への近道でもあります。

ここでまとめた過去問学習法を活用し、ぜひ合格を勝ち取りましょう。