福祉の仕事人インタビュー【第2回】医療ソーシャルワーカー

医療ソーシャルワーカー 染野 貴寛さん

医療ソーシャルワーカー 染野 貴寛さん

柏市立柏病院 地域医療室 医療ソーシャルワーカー

●プロフィール

1973年生まれ
日本福祉大学を卒業後、老人保健施設に介護職員として勤務、その後デイサービスの生活相談員を経て現職に就く。

まず、病院での医療ソーシャルワーカーとしてのお仕事についてお聞かせ下さい。

病院で病気になって困ることを、すべて何とかしよう、というのがこの仕事なんだと思います。病気によって起こる問題をすべてあつかう部署…病院ってそういう部署がないんですね。会社でいうお客様相談室のようなものでしょうか。実際には、お金の問題だとか、生活や介護をどうしていこうとか、今とても話題になっているターミナル…終末期をどうやって迎えようか相談をする…家族と病院スタッフとをつなげるというようなことを仕事としてます。急に病気になって、今までこうだったんだけど急にそれが続けられなくなったとか、新たに生活をこうやっていこう、収入をこうやっていこう、病気とこうやって付き合っていこうというようなことに対して、ソーシャルワーカー2人と、看護師2人の4人のチームで取り組んでます。

相談は、患者さんから持ちかけてくるのですか?

いえ、お医者さんや看護師さんから促してもらったり、つなげてもらうことにしていて、そこから関係性を作る…今はそういうチームワークで患者さんの後押しをしてもらうことにしています。役割としてただ居るだけでは、なかなか患者さんの役には立てないので、やはり(この仕事を始めた)最初の頃は、ソーシャルワーカーという立場を病院の中で理解されなかったですね。ですから、自分はこういうところで役に立つんだということをアピールして、お医者さんや看護師さんに理解してもらうのに時間がかかりました

社会福祉士の資格を持っていてよかったと思われたこと、この仕事のやりがいについて聞かせていただけますか?

医療ソーシャルワーカー 染野 貴寛さん

病院そのものが多職種のライセンス集団なので、その中で資格名で自分の職名を言える、というのが何よりも大きいですね。もちろん、病院の中の方に、社会福祉士ってこういうことをやるんだよ、とアピールしなけりゃいけないですけど。院内でも何をやるのかが一番見えにくい資格かもしれません。社会福祉士という職能と、基礎になっている学問というのがあって、その上で患者さんに接しているということを、根拠をつけてスタッフに示すのもとても重要なことです。周りがデータや数値を言ったりする職場なので、きちんと根拠をつけた上で、援助の方針を言うということが、社会福祉系のスタッフには必要になると思います。
ただ「相談を受ける人」だと薄っぺらく聞こえてしまいます。学校で教わったこと、教科書に載っているようなことにのっとってきちんと患者さんに援助ができたな、という時に、自分が思っている以上の効果が出る時がある。それが一番やりがいなのかな… 命の瀬戸際にある方と多く接するので、生活の方面から援助ができて、命そのものを瀬戸際から土手の高いところまで上げていけるような経験ができた時、お医者さんと同じような感覚… ソーシャルワークってすごく意味のあるものだな、とソーシャルワークの力を感じる時、個人としてもやりがいを感じます。特に、命のぎりぎりの方で、最期にどうするか、というような、とても接しにくくて、関係を持つのが辛いという場面で、なんとか信頼関係を作って、こちらから話をして、結果的に「よかった」ということを、残された家族の方と話すような時、仕事の価値を感じられて、ああよかったなと思います。

これからの福祉についてどう思われますか?

これから、いろいろな人が生活していく場面で、まちがいなくソーシャルワーカーが入っていける、役に立つ場面というのがいっぱいあるんじゃないか…家族のこと近所のこと病院のこと… 「福祉」=例えば「障害」だったり「高齢者」だったり、ステレオタイプに考えられがちだけど、実は生活全般なんだ、ってことを福祉を勉強する人たちに持ってもらいたい。そう考えれば、この仕事の意味がすごく末広がりなイメージに見えてくる。今後いろんな生活のスタイルがでてくるから、福祉の仕事が必要になってくるんだ、というふうに考えてほしいですね。

最後に、社会福祉士をめざす方にアドバイスをお願いします。

社会福祉士になる人は幅広い生活観を持っているべきですね。身につけようと思って身につくものでもないんだろうけど、いろんな生活のスタイルがあっていろんな場面があるんだ、というのをいろんな人の話を聞いて実感をしてもらいたい。どうしても自分の生活のイメージに凝り固まりがちなので、フィールドを広げること、話を聞いてイメージできる糧を持っておいてほしい。いろんな方と会っていろんな話を聞くということですかね。
とにかく、生活のいろんなところで活躍できる仕事が福祉の仕事だと思うんで、特に限定をせずに、大きな枠でこの世界に入ってみようと思って、目指してほしいです。本当に未来がある仕事。社会の情勢からすれば、この仕事は価値のあるものとなるはず。日本よりも福祉の歴史の深い国では、福祉の仕事、ソーシャルワーカーの価値の高いところもあって、日本でもまだこれから上げ幅がある、その一人として自分も関われると思ってめざしてほしいですね。

なるほどそうですね。これからいよいよ必要とされる仕事ですよね。何より、染野さんの生き生きとしたお姿が、いい仕事をしてる、ってことを表しているようにうかがえます。今日はどうもありがとうございました。

(インタビュアー:ジェイシー教育研究所 堀 洋一)