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第26回 社会福祉士国家試験 科目別分析【専門科目】

専門科目 分析
社会調査の基礎  社会調査法らしくCD法で表現すると、難度は【とても難しい・難しい・ふつう・易しい・とても易しい】のうち、「とても易しい」であること間違いなし。ちょっと拍子抜けしてしまう受験者も多かったはず。
 午後の出だしから出鼻をくじかれた問84【正答2・4】。これはちょっと難しかったかもしれない。統計法について問われたのは、第23回以来ですから油断が出るころの出題に戸惑った方も少なくないはず。しかしそれ以降は敵ではなかった。問85【正答5】問86【正答1】問87【正答4】問88【正答3】問89【正答4】。近年まれにみるサービス問題に驚いた。問88は、ちょっとしたひっかけ問題になっている。ポイントは「普段行っているものすべてに○をつけてもらった」つまり複数選択法のアンケートであるということ。ここに気付ければ問題がない。そして問90【正答3】。聞きなれないコトバが並んでいて一見難しそうに感じるが、消去法でなんとか正答を導い出せそうである。それにしてもインビボ・コーティングは出典元に悩むところである。
相談援助の
基盤と専門職
 出題傾向としては、特に目新しいものではなく基本問題が殆どであった。しかし、言葉ひとつひとつを正確に理解していなければ、正答を導き出すことが困難であった。問題92、問題97については、聞き慣れない言葉が含まれていたが、設問全体を正確に読み込めば消去法にて解答できると思われる。そのためには、聞き慣れない言葉に惑わされることなく、丁寧に設問を読み込むことが必要であろう。問題91、問題92については、現在、社会福祉士に求められている役割を認識していれば正答に導き出せる。問題93、問題94は基本問題である。設問に対し、「正しいものを1つ」選択するという出題方法で統一されていた。
 事例は2題出題されており、内容としては社会福祉士の視点から解答すれば難しくはない問題である。しかし、事例に限っては「正しいものを2つ」選択するという出題方法だったため、前の設問からの流れで見落としてしまう危険がある。
相談援助の
理論と方法
 21問中12問が事例問題であり、出題数については例年を踏襲している。全体的に難易度は低く、特に事例問題は選択肢をしっかり読めば間違えなくて済むものがほとんどで、過去問をしっかり学習していれば点数を稼ぐことができる科目と言えるだろう。選択肢を2つ選ばせる問題は、事例問題のみで昨年度より多く5問となっていた。
 科目の冒頭、問98、100が事例問題で、難易度は低いものの選択肢を2つ選ぶ問題であることと、問99、101は理論と人名との組み合わせを答える問題であり、選択肢に明らかな間違いを読み取りにくいことから、受験者は若干警戒するかもしれないが、それ以降の設問は落ち着いて取り組めば充分に答えられるものである。
  事例問題でも、問109、113、116のような理論や機能などを答える問題は、比較的難易度も高く学習が必要とされるが、ソーシャルワーカーとしての対応を答えるそれ以外の事例問題は相談援助の基本を理解していれば難しくない。
  相談援助技術についての設問も、選択肢を読めば明らかな誤りが読み取れるものが多い。科目全体を通して、落ち着いて取り組むことが求められる。
福祉サービスの
組織と経営
 専門科目の中では、例年難易度が高い科目であるが、今年度の問題に関しては驚くほど基本的な問題が出題されている。誤解を恐れずに言うと、読解力があれば7問中6問は正解を得られる内容といえる。
 問題119は、社会福祉法人と医療法人が経営できる事業について問われた。現状では医療法人における、特別養護老人ホームの経営が認められていないことを知っていれば、正解を得ることができる。問題120は組織内コンフリクトに関する出題であるが、専門的な知識がなくとも設問のニュアンスで正解を導ける。問題121は、昨年に引き続き組織学習論よりの出題となった。こちらは、ダブルループ学習の意味を理解していれば、容易に正解できる問題である。問題121は久しぶりにリーダーシップ論からの出題であったが、専制的リーダーシップ、変革型リーダーシップ、フォロワー型リーダーシップ及びコンティンジェンシー型リーダーシップの意味が理解できていれば、解答を得られる基本的な問題といえる。問題123の社会福祉法人に関する出題は、昨今求められている社会福祉法人のあり方を鑑みると、細かい規約などは分からなくとも正解を導けたのではないだろうか。問題124のサービスマネジメント論に関する問題も、詳細を理解できていなくともサービス提供における、プロセスの重要性やリスクマネジメントの必要性が分かっていれば、間違えることはない。問題125に関してはセクシュアルハラスメントとパワーハラスメントに関する出題であったが、細かい法律を覚えていなくとも言葉の定義をしっかりと把握していれば、正解を導けたはずである。
 今年度の問題に関しては、過去問にしっかりと取り組んできた受験生にとっては、かなりの高得点を確保できる出題であったと思う。国家試験は本来、このように真面目に学習を積み重ねてきた者が、確実に得点できる問題を出題すべきでなのではないだろうか。
高齢者に対する
支援と介護保険制度
  今回の出題では専門家として社会福祉士が実践場面で知っておかなければならない問題135高齢者の虐待問題や高齢者の窓口で理解しておくことが望ましい問題129介護予防事業など社会福祉士として知識力を試した内容が出題された。専門家として社会福祉士とはなにか、何をもとに考え現場で利用者、家族の支えになるのかでは問題131自宅で生活するための住環境整備の考え方や問題130右片麻痺の高齢者の対応など自宅に帰った場面や本人の身体レベルの問題が出題された。それに問題132地域密着型サービスなど在宅サービスの内容も出題され、基本的に在宅生活を中心した問題傾向が見てとれる。問題134地域包括支援センター社会福祉士の役割などでは実際に専門家として行った場合の想定問題が出題された。その他は社会福祉士として高齢者世帯や人口推計それに介護保険制度、高齢者の制度、政策などをどのように理解しているかといった視点を中心に問題126我が国の人口の高齢者の動向や問題128老人福祉法それに問題133介護保険制度などが出題され、専門家としてわかっていなければならない基礎的な内容が出題された。今回の問題は一通り学習してきた受講生はそれほど難しくなかったと思われる。全体的に高齢者の職場で働く際に必要な能力を試した問題傾向であった。
児童や家庭に対する
支援と児童・家庭
福祉制度
 出題傾向と分野別の出題順は、事例問題が一問に減った他はほぼ昨年同様。全体の傾向に沿って難問・奇問を排し、難易度は大幅に引き下げられた印象である。
 科目一問目の問136は統計問題。比較的単純な事例を一問挟んで問138は国内に絞った原論的知識。問139~142までは法制度の基本的内容をそのまま問う非常にオーソドックスな出題形式。テキストや過去問の内容が理解できていれば、問136以外はそこから逸脱することはなかったのではないか。他の科目を見ても、今後も統計から出題される傾向は続くと思われるので、来年度以降の受験生は各種「厚生の指標」に目を通す程度の予習が必要と言える。
出題範囲については現代社会と福祉や障害者に対する支援とも相互に重なっており、社会福祉士として幅広い知識と視座を身に着けるべきという出題委員の意図を感じるが、それにしては事例問題の対応は一面的に過ぎる。読者が未だ現場に出ていない学生であれば、実際の相談場面においては経済的状況、母の能力や資格、子どもの発育発達、母子関係・実家との関係、保育所の空き状況その他地域の社会資源によって対応も変わることは知っていてほしい。
就労支援サービス  全体的に対象者を障害者や生活保護受給者に絞らない問題ばかりで、非常に幅広い対象、範囲から問題を出題され、非常に選択肢を絞りづらい印象が伺えた。受験者にとっては4問しかない問題の中で必ず1点以上取らなければならないプレッシャーを強く感じたのでは?
 特に問題144は労働法規に関する問題が5つ並び、法律の中身について言及した問題。法律の概要や目的を理解してないと解答できない難問だった。反面、事例問題については障害者の自己選択、自己決定に基づいた支援、そして障害者本人の行動特性を改善するのではなく、周りを取り巻く環境を改善するというアプローチ、医療モデルから社会モデルに変容した支援技術を理解していれば、難しい問題ではなかったと思われる。
更生保護制度  今回のこの科目の難易度は,前回よりも高いと感じている。基本的なことだけではなく,実務に合った理解が必要となる問題もあった。ただし,選択肢は,簡単な内容と難解な内容があり,絞り込んだうえで正解を導くためのテクニックも必要である。
 問題147は,基本的な問題である。保護観察の目的は,今後の試験にも重要となる基本事項である。
 問題148は,比較的難易度が高い問題と言える。更生保護施設についての問いであるが,選択肢2か選択肢3で迷った受験者が多かったのではないだろうか。選択肢2については,現在の更生保護施設では,問題にあるように酒害・薬害教育やSSTなどの処遇が強化されている施設が多くなってきた。また,選択肢3の更生緊急保護の期間であるが,更生保護法85条4項では,例外的に6か月を超えない範囲で延長することができるとされている。
 問題149は,基本的な問題であるが,強いて言えば選択肢3と選択肢4で迷ったのではないだろうか。選択肢3は,医療観察法16条にあるように,指定入院医療機関は厚生労働大臣が指定した病院である(病院の運営者の同意必要)。選択肢4については,保護観察所には,保護観察官と社会復帰調整官が配置されていることは基本事項として押さえておきたい。
 問題150は,難易度の高い問題である。選択肢1は,認知行動療法を取り入れているところは正しいが,自発的意思に欠ける対象者には適用とならないが間違いである。選択肢2は,多少意味合いが違うが,法改正によって仮釈放者も保護観察付執行猶予者も専門的処遇プログラムを受けられるようになった。選択肢3にある簡易薬物検出検査とは,尿検査又は唾液検査が実施されており正しい。選択肢4は,逸脱した性的欲求の低下ではなく,認知の歪み等を修正するために,認知行動療法としてのアプローチが取り入れられている。選択肢5は,特別遵守事項(義務)である専門的処遇プログラムは,保護観察官の判断だけでは中断することはできない。保護観察所の長や,地方更生保護委員会が決定することである。

 

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