領域 |
午後科目 |
分析 |
領域III
こころとからだのしくみ |
発達と老化の理解 |
本年も設問はすべて5枝択一であった。全8問のうち「最も適切なものを1つ選べ」が2問、「適切なものを1つ選べ」が3問、「正しいものを1つ選べ」が3問であった。問題69、71、72、73は、「エリクソンの発達段階説」「高齢者の代謝」「記憶」「適応機制」と最頻出問題であり、過去問を中心とした学習で十分対応できただろう。問題70は「年齢規定」に関する問いで、日頃のニュースが把握できていれば答えが導けただろう。問題74は「甲状腺機能」に関する問いで「低下症」と「亢進症」の違いを明確に憶えておく必要があった。問題75は「めまい」に関する問いで昨年に続いての出題だったが「メニエール病」や「良性発作性頭位めまい症」といった病名とその症状についての正確な知識が問われた。短文事例問題は問題76の1問のみで昨年に比べ1題減った。「糖尿病」は頻出であるものの、自信を持って答えを一つ選ぶのは悩ましかったのではないだろうか。総じて今回も頻出事項が多く、赤マル福祉の過去問を中心とした日頃の学習で合格ラインは超えられたと思われる。
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認知症の理解 |
今回の出題は、これからの時代、認知症の人がさらに増加する現状において、介護の専門職である介護福祉士として、正しく理解しておきたい認知症の症状に視点を置いた知識が多く問われていた。最初の、問題77は、グループホームが認知症の人にとってどのような場であるのかということを正しく理解しているかどうか?からはじまり、次の問題78~83までにおいては、幅広い認知症の種類とその特徴的な症状を知識として理解していれば、解答できたと思われる。特に問題79の、うつ病に伴って認められる仮性認知症の特徴を選ぶということについては、認知症と診断された人が、実はうつ病だったというケースもよくある話であり、どのような病気なのか症状を正しく知る必要性を問われた。問題84、85、86においては、認知症高齢者とその家族が、住み慣れた地域でその人らしく生活を継続するために、生活の支援者として認知症の人の精神面への配慮の在り方や、支援者としての役割の理解、家族からの相談にのるときの対応の在り方などが問われていた。昨年より難易度は低いように思われるが、認知症の症状や生活理解ができていないと困難だったかも知れない。
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障害の理解 |
今回の「障害の理解」の問題数は変わらず10問。最初の問題87は、第27、28回国家試験の「障害の理解」で出題されなかったICFであった。ICFは他の科目でも出題されるので、基本を理解できていれば解答は難しくはない。問題88は、過去にあまり出題されていない「老人性難聴の特徴」であるが、老人性という言葉から正解にたどり着ける選択肢文だといえる。問題93では、図の自助具のどこをどのように使用するものかを考えつくことは簡単であるが、選択肢の病気の特徴を理解できていないと難しい。問題94では「ホーエン・ヤール重症度分類」という言葉に動揺した方もいたと思うが、落ち着いてパーキンソン病の特徴や適切な対応を選択できれば正解できる。その他は「うつ病の対応」、「広汎性発達障害の特徴」、「筋委縮性側索硬化症(ALS)の特徴的な障害」、「障害受容過程のショック期の特徴」、「リハビリテーションの医療職」、「家族への支援」という過去問題でも模試問題でも出題傾向のある内容であり、それぞれの特徴や対応を理解できていれば正解できる。科目全体としては、法律や制度に関する問題がなかった点でも難易度はやや低めの中程度といえる。
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こころとからだの
しくみ |
短文事例問題1問を含む12問が出題され、出題基準の大項目に沿ってまんべんなく出題されている。なかでも「食事、移動、入浴」に関連したこころとからだのしくみからは2問ずつの出題であった。出題された問題97「脳の記憶を司る部位」、問題98「副交感神経の作用」、問題99「身体の症状と原因疾患の組み合わせ」、問題101「骨の強化」問題103「摂食・嚥下のプロセス」、問題107「高齢者の睡眠の特徴」は、27回、26回、25回、24回の試験において類似の出題があったもので、赤マル福祉の模擬試験問題でも触れている内容である。過去問や模擬問題を丁寧に学習してきた受験生は確実に得点できたと思う。全体的に基礎知識を問う内容が主であったが、そのなかで今回注目すべき点は、問題102「1日の必要エネルギー量の算出」である。これまでにみられない出題内容であり、この問題で受験生は戸惑い解答に時間を要したのではないかと思われる。科目としての難易度は例年並みで標準的といえる。本科目は、高齢者に多い疾患に関連した問題も出題され、幅広い知識の習得が求められる。苦手意識を持つ受験生も多いと思うが、過去問題解説集により出題傾向を分析し、重要項目を整理し学習を進めることが得点につながると考える。
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領域IV
医療的ケア |
医療的ケア |
医療的ケアは、今回の試験から新たに設けられた領域・科目である。出題実績がないので過去問から出題傾向と出題ポイントを絞ることができず、受験生は手探り状態で学習を進めてきたのではないかと思う。出題数は、短文事例問題2問、イラストによる問題1問を含む5問が出題された。出題内容を出題基準である大項目に沿ってみると医療的ケア実施の基礎から「喀痰吸引等を規定した法律」、「イラストによる介護福祉が鼻腔内吸引を行うときの吸引チューブの挿入範囲」の2問、喀痰吸引の基礎的知識・実施手順から「短文事例問題:口腔内喀痰吸引時の姿勢」1問、経管栄養の基礎的知識・実施手順から「経管栄養に関する基礎知識」「短文事例問題:経鼻経管栄養実施前の介護福祉士の対応」2問が出題されている。初回とあって5問すべてが基本的事項・基礎知識を問う内容であり、受験生を悩ますような問題は見当たらない。予想問題集や模擬試験等を通し学習を進めてきた受験生は得点を積み重ねることができた内容であると思う。科目としての難易度は標準的といえよう。
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総合問題 |
本科目は事例形式であり、4領域(人間と社会、介護、こころとからだのしくみ、医療的ケア)の知識・技術を横断的・総合的に問う科目である。1事例目は「脳梗塞後遺症があり自宅で生活する男性、80歳」の事例。感染症(MRSA)の保菌者への対応、失禁に関する知識、介護保険法に基づく高齢者福祉サービス内容の理解が問われた。2事例目は「認知症対応型共同生活介護(グループホーム)で暮らすアルツハイマー型認知症の男性、88歳」の事例。痛みを訴える認知症利用者への適切な対応、帯状疱疹に関する知識、興奮状態がみられる認知症利用者への専門職としてのかかわり方が問われた。3事例目は「頸髄損傷により四肢麻痺がある男性、25歳」の事例。頸髄損傷に関する知識、起立性低血圧が起きた際の対応、障害者総合支援法に基づく外出支援サービス内容の理解が問われた。4事例目は「ダウン症で知的障害がある男性、19歳」の事例。知的障害の起因疾患に関する知識、障害者総合支援法に基づく日中活動サービス内容の理解、知的障害がある利用者への専門職としてのかかわり方が問われた。本科目は例年、65歳以上・65歳未満の利用者が各2人出題されており、この傾向は今回の国家試験でも同様であった。利用者の個別性を理解したうえで多様なニーズに応え、適切な支援が実践できるための介護福祉士の実践力が問われている。
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