領域 |
午後科目 |
分析 |
領域III
こころとからだのしくみ |
発達と老化の理解 |
本年も問題文や選択肢が簡潔な表現となっており、答えやすい問題が多かった印象である。例年通りの5枝択一で「正しいもの」「最も適切なもの」「最も頻度の高いもの」を一つ選びなさいといった設問であった。午後最初の出題であった「ピアジェの認知発達段階」は一度は目にした内容だったと思われるが、正しく暗記しておかなければ解けず焦った受験生も多かったのではないだろうか。続いては「プロダクティブ・エイジング」についてで、知識がなければ正答を導くのが難しかったと思われる。以降は「うつ病、アルツハイマー病、せん妄、統合失調症、床ずれと身体の部位、パーキンソン病、脱水時の症状、肺炎の知識」など馴染みの問いが多く、これまでの赤マル福祉(赤マル模試)での学習の成果が十分発揮できたであろう。「発達」に関する問いが3問、「一般医学」に関する問いが5問といった問題構成で、「死因順位」「高齢者と若年者との割合比較」といった「統計」の把握が試される問いもあった。「発達」に関する分野はやや難易度が高かったと思われるが「一般医学」においては難易度はそれほど高くなく日頃の学習量がそのまま点数に比例したであろう。
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認知症の理解 |
今回の認知症の理解における出題を分析すると、認知症が身近な病気であるという認識を深める傾向が読み取れる内容であった。まず基礎的な理解として誰もが知っておくべき認知症ケアの概念の問いがあり、その人に視点を持って見る行動や、意思疎通の様子から介護の度合いを判断する知識が問われていた(問77、78)。また、認知症と間違えられやすい症状で、せん妄とは?早期発見で改善可能な認知症は?(問題79、80)との出題は、まず認知症を疑うときには様子をよくみる。早期に専門医受診という意識が専門職には重要という視点である。その他の設問の適切な症状を選べというところは、出題基準の大項目2における中項目1,2,3を学習しておけば解答につなげられる問題であった。尚、問題85、86も、これからの介護福祉職としては地域におけるサポート体制の理解を深めることが必要であることを意味していた。どこの地域においても、高齢者単独世帯と認知症が増加している現状である。これから支援の中心を担う介護福祉士においては、全問正解してもらいたい基本的な出題内容であった。
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障害の理解 |
今回の「障害の理解」の出題を分析すると、第24回以降の「問題87」で必ず出題されていた「ICF」についての出題がなく、意表を突かれる。「問題88」以降は例年出題されることの多い「統合失調症」や「高次脳機能障害」、「知的障害」といったキーワードが続き、徐々に落ち着きを取り戻せたといった傾向だったのではないでしょうか。出題基準の中項目の全体からまんべんなく出題されているが、この科目は障害の概念や医学的側面の知識、障害のある人の心理や日常生活の影響、地域におけるサポート体制や制度などといったように内容が広く多いため、基本だけでもきちんと理解できていないと難しい。特に「問題94」については、「上肢リンパ浮腫」という過去にあまり出題実績のない疾患であるうえに、選択肢文も選びかねないものが多く消去法をするにしろ難易度が高い。また「問題95」は、「第24回の問題96」に酷似しているので、気づいた方は簡単だとすぐに回答してしまうかもしれないが、今回の事例は「38歳」という点に気づけただろうか。10問全体としても難易度としては「中」をやや上回っているといえる。
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こころとからだの
しくみ |
出題数は、昨年と変わらず12問、うち短文事例問題は1問であった。出題基準の大項目を網羅しており、なかでも食事に関する問題(2問)、排泄に関する問題(2問)、睡眠に関する問題(2問)が多い。
今回、出題された問題97の記憶、問題98の関節運動と主動作筋、問題100の廃用症候群、問題106のキューブラー・ロスの死の受容過程、問題106の睡眠のしくみは、24回、25回の国家試験においても類似問題が出題されおり、過去問による学習の必要性を強く感じた。疾患とからめた問題で、やや難易度が高いと思われるのは、問題107の睡眠障害である。受験生は、選択肢の聞きなれないレストレスレッグス症候群、周期性四肢運動障害に、戸惑ったのではないかと思う。出題内容は、全般的に介護福祉士としての基本的知識を問うものが多く、この科目の難易度は前回と同様に標準的といえる。「こころとからだのしくみ」の学習は暗記ではなく、基本的知識をしっかり理解することが重要であり、合格につながると考える。
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総合問題 |
事例形式で3領域の知識及び技術を横断的に問う本科目は、例年通り4事例12問の出題であった。一事例目は、「妻とともに在宅で暮らすアルツハイマー型認知症の男性、75歳」、2事例目は、「グループホームに生活するレビー小体型認知症で徘徊のある女性、80歳」の事例であった。1・2事例ともに、認知症に関する正しい知識を持ち、併せて「認知症施策推進5カ年戦略(オレンジプラン)」を含めた、国の認知症施策の動向を理解していれば、難解な設問ではなかった。3事例目は、「事故で全盲となった中途障害の男性、46歳」の事例で、障害受容への支援、障害に対応する適切なコミュニケーション、盲導犬に関する知識などが問われた。この回答についてもそれほど多くの時間を要さなかったと思われる。4事例目は、「統合失調症のある男性、45歳」の事例で、その症状や利用できるサービスに関する設問であった。利用できるサービスについては、障害者総合支援法における自立支援給付と地域生活支援事業の具体的な内容理解が求められた。総じて、設問の約7割は利用者への対応や家族への助言について問われており、介護福祉士には高い実践力が求められていることを自覚したい。
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