各科目ワンポイントアドバイス生活支援技術
「生活支援技術」からは、利用者の日常生活を支える介護技術に関する問題が出題されます。国家試験問題125問のうち、この科目からの出題数は26問と最も多く、介護福祉士にとって基本的かつ重要な科目であるといえます。
出題範囲は身じたく、整容、食事、移動・移乗、入浴、排泄、睡眠、終末期の介護など多岐に渡りますので、どのように学習を進めるか悩んでいる人は、まず社会福祉振興・試験センターのホームページへアクセスして「出題基準」を確認し、何を学ばなければならないかを整理してから取り組みましょう。そして、「出題基準」をみると、食事や入浴、排泄の介護など全ての項目には「自立に向けた」という言葉がついていることに気づきます。
そのため、今回は「自立に向けた生活支援技術の考え方」をテーマに学びましょう。
この科目では、介護が必要な利用者に介護技術をどのように活用するかというポイントに加え、介護技術の根幹にある「自立支援」という理念をどのように介護実践に活かすかという視点をもつことが重要です。介護福祉職は、利用者の生活行為すべてを支援するのではなく、利用者が持っている力を引き出して介護を行いますが、この考え方が「自立に向けた生活支援技術」です。
それでは、過去の国家試験問題に取り組んでみましょう。
出題元は、第26回国家試験問題43です。
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Jさん(70歳、男性)は、右片麻痺があり、妻と二人暮らしである。週1回の通所介護(デイサービス)と、週1回の自宅での訪問介護員(ホームヘルパー)による入浴介助を受けている。移動は四点杖歩行で、排泄と入浴は一部介助が必要である。Jさんは居住環境を整備して、できるだけ今の生活を維持しながら妻の負担を減らしたいと望んでいる。
Jさんに対する介護福祉職の助言として、最も適切なものを1つ選びなさい。 -
- 車いすで出入りできるようにトイレを広くする。
- トイレでの排泄をやめて、寝室にポータブルトイレを置く。
- 浴槽の出入りをしやすくするために、リフトを設置する。
- 部屋の出入り口にある段差をスロープにする。
- トイレの中に手すりをつける。
さて、あなたは何番を選びましたか?
正解は、5番です。
Jさんは、排泄と入浴は一部介助が必要ですが、トイレや浴室までは四点杖を使って移動できていることが問題文から読み取れます。トイレの中に手すりをつけることで、排泄時の立ち上がりにおいてJさんの持っている力を引き出すことが可能になると考えるため、5番が正解になります。また、このような介護福祉職の支援は、できるだけ今の生活を維持しながら、妻の負担を減らしたいというJさんの希望を尊重することにもつながります。
それでは、他の選択肢はなぜ不適切なのか、その理由を考えてみましょう。
- 選択肢1、2:
- Jさんは、四点杖を使って歩行することができます。歩行能力があるJさんに対して車いすを使用したり、寝室にポータブルトイレを置くことは、Jさんの持っている力を引き出す支援とは言えないため、適切ではありません。
- 選択肢3:
- Jさんは、一部介助があれば浴槽への出入りができると問題文からは読み取れます。浴室にリフトを設置すると、浴槽の出入りに関する移動は全介助になってしまうため、Jさんの持っている力を引き出す支援とは言えず、適切とは言えません。
- 選択肢4:
- 段差をスロープにすることが最も効果的な移動手段は、車いす移動です。Jさんは、四点杖を使って歩行しており、歩行能力があるJさんに対して車いすを使用することは、Jさんの持っている力を引き出す支援とは言えないため、適切ではありません。
いかがでしょうか?
自立支援という基本的視点をもち、どのような介護実践を行うべきか考えることができれば、正答を選ぶことができると思います。
利用者の「できる力」に着目をして支援を行うことが、自立に向けた支援につながります。