各科目ワンポイントアドバイスコミュニケーション技術

「コミュニケーション技術」からは、コミュニケーションの基本、利用者や家族とのコミュニケーション、介護におけるチームのコミュニケーションなどから毎年8問出題されますが、特に利用者とのコミュニケーションに関する内容が多く出題されます。そして、利用者とのコミュニケーションの問題で高得点をとるためには、利用者が抱える疾病や障害から引き起こされる症状に応じたコミュニケーション方法とポイントを理解する必要があります。

今回は、「失語症のある利用者とのコミュニケーション」について学びましょう。

失語症とは言語障害の1つです。失語症には、運動性失語(ブローカ失語)感覚性失語(ウェルニッケ失語)などがあります。国家試験では、失語症におけるこの2つのタイプの特徴を整理して理解することが大切です。

運動性失語(ブローカ失語)では、言語に関する理解力は保持されますが、表出力が低下します。つまり、相手の話していることは理解できますが、それに対してスムーズに返答をすることが難しいのです。そのため、運動性失語のある人には、二者択一または2~3の単語で短く答えられる「閉ざされた質問」をしたり、絵や写真など「視覚化された情報を活用」してコミュニケーションをとると良いと言われています。

感覚性失語(ウェルニッケ失語)では、言語に関する表出力は保持されますが、理解力が低下します。つまり、流暢に話すことはできますが、話し言葉や書き言葉の理解が困難になるため、話す内容が意味を伴わないことが多くなります。そのため、感覚性失語のある人には、「わかりやすい言葉を使い、短い文で話す」、ジェスチャーなどの「非言語的コミュニケーションを活用」してコミュニケーションをとると良いと言われています。

それでは、過去の国家試験問題に取り組んでみましょう。
出題元は、第33回国家試験問題32です。

運動性失語(motor aphasia)のある人とコミュニケーションを図るときの留意点として、最も適切なものを1つ選びなさい。
  1. 絵や写真を使って反応を引き出す。
  2. 大きな声で1音ずつ区切って話す。
  3. 手話を使うようにする。
  4. 五十音表でひらがなを指してもらう。
  5. 閉ざされた質問は控える。

さて、あなたは何番を選びましたか?

正解は、1番です。

絵や写真などの視覚化された情報を交えたコミュニケーションを図ることは、運動性失語のある利用者とのかかわりとして適切であるため、1番が正解になります。

それでは、他の選択肢はなぜ不適切なのか、その理由を考えてみましょう。

選択肢2:
運動性失語では、難聴(聞こえづらい)症状は現れないため、大きな声で話しかける必要はありません。また、1音ずつではなく、分節で区切り、理解を確かめながらコミュニケーションを図ることが有効であるため、選択肢の記述は適切とは言えません。
選択肢3:
手話は、聴覚に障害がある利用者に対して有効なコミュニケーション手段です。運動性失語では、聴覚に障害はみられないため、選択肢の記述は適切とは言えません。
選択肢4:
五十音表の活用は、運動性失語ではなく、構音障害のある利用者に対して有効なコミュニケーション手段です。構音障害とは、言語障害の1つであり、舌や唇などの筋肉や神経が侵されることが原因で、うまく発音ができない障害が現れます。
選択肢5:
運動性失語のある利用者とのコミュニケーションでは、「はい」「いいえ」や頷きなど簡単な単語やしぐさで答えられる「閉ざされた質問」を活用すると意思疎通が図りやすくなります。そのため、閉ざされた質問は控えるという選択肢の記述は適切とは言えません。

いかがでしょうか?

運動性失語と感覚性失語、それぞれの特徴やコミュニケーション方法を理解できていれば、正答を選ぶことができると思います。

今回学んだ「失語症のある利用者とのコミュニケーション」のように、国家試験では利用者が抱える疾病や障害に伴って引き起こされる症状を知らないと解けない問題が多く出題されます。学習を通して知らない疾病や障害の名称が出てきたときは、それに起因して現れる症状やかかわり方のポイントを調べるとよいと思います。