各科目ワンポイントアドバイス人間関係とコミュニケーション

「人間関係とコミュニケーション」からは、毎年2問出題されます。

この科目は出題数が他の科目に比べると少ないということもあり、学習をしていて不安に感じる人がいるかもしれません。ただし、出題内容はコミュニケーションに関する基本的な事柄が多く、きちんと対策を立てて学習をすれば、決して難しい科目ではありません。科目「コミュニケーション技術」と一緒に学習するとよいと思います。

今回は、人間関係の形成に必要な「自己覚知」について説明します。

利用者と信頼関係を築き、より良い支援を行うためには、自己覚知に基づいたコミュニケーションが求められます。
自己覚知とは、自身の考え方や価値観などを客観的に理解すること。簡単に言えば、「自分を知ること」です。
自分を知ることで、自身の強みや弱みを知ることができると言われています。自分の強みを知れば自信がもてるようになりますし、弱みを知れば苦手な部分の克服につなげることができます。
そして、自分を知ることで、相手のことも理解しやすくなります。利用者の価値観が自身と異なっていても、考え方や価値観は人それぞれ違って当たり前と捉えることができ、介護福祉職の価値観を押し付けることなく、利用者の意向を尊重し、理解することができます。
そのため、介護福祉職は、先入観や思い込みをもって利用者とかかわることがないよう、自分自身の価値観や感情を普段から認識しておく必要があるのです。

それでは、過去の国家試験問題に取り組んでみましょう。出題元は、第32回国家試験 問題3です。

他者とのコミュニケーションを通した自己覚知として、最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. 自己の弱みより強みを重視する。
  2. 自己の感情の動きとその背景を洞察する。
  3. 自己の行動を主観的に分析する。
  4. 自己の私生活を打ち明ける。
  5. 自己の価値観を他者に合わせる。

さて、あなたは何番を選びましたか?

正解は、2番です。

自身の感情の動きとその背景を洞察することで「自分を知る」ことにつながり、その結果、「自己覚知」が深まると考えられるため、2番が正解になります。

それでは、他の選択肢はなぜ不適切なのか、その理由を考えてみましょう。

選択肢1:
自己覚知では、自身の強みだけではなく弱みも理解することを目指します。そうすることで、利用者への理解を深めることにもつながります。
選択肢3:
自己覚知では、自身の行動を主観的ではなく、客観的に分析することが大切です。
選択肢4:
この選択肢は、自己覚知ではなく、自己開示の説明です。自己開示とは、自分の情報を相手に提示することです。介護福祉職が自ら利用者に心を開くことによって、利用者は介護福祉職に親近感をもち、信頼関係が生まれる効果を期待することができます。
選択肢5:
自己の価値観を他者に合わせるのではなく、自己の価値観を知ることが自己覚知です。

いかがでしょうか?

自己覚知の意味、目的が理解できていれば、正答を選ぶことができると思います。

今回学んだ「自己覚知」のように、国家試験では福祉の専門用語の意味を知らないと解けない問題が多く出題されます。学習するなかで知らない用語が出てきたときは、自分で調べ、正確な意味を理解できるよう取り組むとレベルアップにつながると思います。