各科目ワンポイントアドバイス高齢者福祉

この科目では、高齢者に対する支援に関連する内容が出題されます。介護保険制度をはじめとする、制度の理解に関する問題を苦手とされている方も多いのではないのでしょうか?

今回のテーマは「介護保険制度」です。

介護保険制度に関する出題範囲はとても広いですが、介護保険制度の被保険者、要介護認定、介護保険審査会と介護認定審査会、都道府県や市町村の役割など、基本的な内容からの出題も少なくありません。

社会福祉士を受験される方に限らず、介護福祉士を目指される方も、国家試験に合格する上で、介護保険制度は確実に理解しておきたい事項の一つです。

では始めましょう。
介護保険法第3条によると、介護保険制度の保険者(実施主体)はどこでしょうか?

それでは確認です。

市町村及び特別区

介護保険制度の保険者は市町村及び特別区、ということは絶対に理解しておきましょう。

要介護認定や要支援認定を受けるためには、保険者(実施主体)である市町村及び特別区(以下、市町村)に申請します。
続いて、介護保険制度について、実際に出題された試験問題を通して、理解を深めていきます。

社会福祉士 第34回 問題131を解いてみましょう。

介護保険制度における都道府県の義務に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
  1. 都道府県は、6年を1期とする介護保険事業計画を策定するに当たって、各年度の地域支援事業の見込量の算出を行う。
  2. 都道府県知事は、介護サービス事業者から介護サービス情報の報告を受けた後、その報告の内容を公表する。
  3. 都道府県は、老人福祉圏域ごとに地域包括支援センターを設置する。
  4. 都道府県は、介護サービス事業者を代表する委員、介護の専門職を代表する委員、医療の専門職を代表する委員で組織される介護保険審査会を設置する。
  5. 都道府県は、要介護者及び要支援者に対し、介護保険法の定めるところにより、保健福祉事業を行う。

皆さん、正解の選択肢を選べましたでしょうか?
それでは、選択肢ごとのポイントをまとめていきます。

選択肢1:
各年度の地域支援事業の見込量の算出は、市町村が行います。都道府県が策定するのは「介護保険事業支援計画」、市町村が策定するのは「介護保険事業計画」であり、どちらも3年を1期として策定します。
選択肢2:
これが正解です。介護サービス情報の公表は、都道府県の業務です。介護サービス情報の公表制度は、利用者が介護サービスや事業所・施設を比較・検討して適切に選ぶための情報を都道府県が提供する仕組みです。
選択肢3:
地域包括支援センターを設置するのは、市町村です。介護保険法第115条の46 第2項では、「市町村は、地域包括支援センターを設置することができる。」と規定されています。
選択肢4:
都道府県が設置する介護保険審査会は、被保険者を代表する委員市町村を代表する委員公益を代表する委員で組織されます。
選択肢5:
保健福祉事業を行うのは、市町村です。介護保険法第115条の49によりますと、市町村は、地域支援事業のほか、保健福祉事業を行うことができます。

この問題では、都道府県の業務について出題されています。
市町村や都道府県の役割は多く、すべてを覚えるのは大変、と思う方もいらっしゃるのではないのでしょうか?
そこで、過去の出題実績なども踏まえ、優先的に覚えておきたいものをまとめます。

●都道府県の役割

  介護支援専門員の登録等に関する事務
  介護サービス情報の公表に関する事務
  財政安定化基金の設置
  (財政安定化基金:一定の事由により、市町村の介護保険財政に不足が生じた場合に、資金の交付または貸付を行う)
  事業所・施設の指定・監督
  (市町村が指定・監督を行う
  地域密着型サービス、居宅介護支援、介護予防支援を除く)

●市町村の役割

  要支援・要介護認定にかかる事務
  第1号被保険者の保険料の徴収
  地域包括支援センターの設置
  地域密着型サービス、居宅介護支援、介護予防支援の指定・監督


選択肢2と選択肢3は、確実に○×を判断できるようにしましょう。

また、選択肢4に関連し、介護認定審査会と介護保険審査会のポイントも整理しておきます。

●介護認定審査会と介護保険審査会

  • 介護認定審査会・・・
    要介護認定等の審査判定業務を行う。市町村に設置。
  • 介護保険審査会・・・
    要介護・要支援認定の結果、保険料の決定などの処分に不服がある場合の審査請求機関都道府県に設置。

理解できなかった選択肢もあるかと思いますが、○×を判断するためのポイントをしっかりとおさえることが重要です。
わかる所からで良いので、一歩ずつ着実に理解を積み重ね、合格できる力を身につけていきましょう。