各科目ワンポイントアドバイス刑事司法と福祉

この科目に対し、苦手意識を持っていらっしゃる方も多いのではないのでしょうか?

今回のテーマは「医療観察制度」です。
この科目については、どこから学習したら良いかわからない方も多くいらっしゃることと思います。
医療観察制度について、確実におさえておきたいものをまとめます。
このワンポイントアドバイスの内容を理解することを通し、これからの学習のきっかけとなれば幸いです。

では始めましょう。
医療観察制度における対象者の処遇は、地方裁判所において、合議体により決定されます。
合議体を構成するのは、裁判官と誰でしょうか?

それでは確認です。

精神保健審判員

合議体は、裁判官1名と精神保健審判員(精神保健判定医)1名で構成されます。
続いて、医療観察制度について、実際に出題された試験問題を通して、理解を深めていきます。

社会福祉士 第35回 問題150を解いてみましょう。

「医療観察法」が定める医療観察制度に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい
  1. 対象となる行為は、殺人、放火、強盗、不同意わいせつ、不同意性交等及び傷害等に当たる行為である。
  2. 社会復帰調整官は、各地方裁判所に配属されている。
  3. 入院決定を受けた者に対して医療を実施する指定入院医療機関は、都道府県知事が指定した病院である。
  4. 通院決定がなされた場合、指定通院医療機関による医療を受けることができる期間の上限は10年である。
  5. 地域社会における精神保健観察は、保護観察官と保護司が協働して実施すると規定されている。

(注) 「医療観察法」とは、「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」のことである。

(補足)刑法改正により、強制わいせつ、強制性交等はそれぞれ不同意わいせつ、不同意性交等に名称が変更されたため、これに合わせ問題文の一部を変更しています。

皆さん、正解の選択肢を選べましたでしょうか?
それでは、選択肢ごとのポイントをまとめていきます。

選択肢1:
これが正解です。医療観察制度は、心神喪失または心神耗弱の状態で、重大な他害行為を行った人の社会復帰を促進することを目的としています。重大な他害行為とは、他人に害を及ぼす行為のことであり、殺人放火強盗不同意わいせつ不同意性交等および傷害の罪にあたる行為をいいます。
選択肢2:
社会復帰調整官は、保護観察所に配置されます。社会復帰調整官は、医療観察制度における精神保健福祉分野の専門家です。
選択肢3:
指定入院医療機関は、厚生労働大臣が指定します。都道府県知事が指定するのではありません。
選択肢4:
通院期間は原則3年で、その後2年を超えない範囲で延長が可能です。
選択肢5:
精神保健観察は、社会復帰調整官が行います。保護観察官と保護司が協働して実施するのではありません。

選択肢2と5では、社会復帰調整官についての理解が問われました。
社会復帰調整官の業務についてもねらわれやすいので、ポイント事項を整理しておきます。

  • 社会復帰調整官の業務

    生活環境の調査
    入院または通院による医療の決定等に際し
    地方裁判所の求めに応じ、対象者の生活を取り巻く環境について調査

    生活環境の調整
    入院決定を受けた対象者の社会復帰の促進を図るため、
    入院当初から継続的にかかわり、退院後の生活環境の調整を行う

    精神保健観察
    通院決定を受けた対象者に対し、
    通院状況や生活状況を見守り、必要な指導や助言を行う

    関係機関相互間の連携の確保

医療観察制度は、重要事項が繰り返し出題される傾向にあります。
今回取り上げた内容につきましては、今後も出題される可能性が高いので、必ず復習しておきましょう。

また、この科目の勉強をする際は、「誰が」行うのか、といったことに着目しながら学習を進めると、とても効果的に学習が進められます。学習が行き詰っている方は是非実践してみてください。