各科目ワンポイントアドバイス精神疾患とその治療

この科目では、精神疾患やその治療法を中心に出題されます。
精神障害者は、疾患と障害を併せもっています。精神障害者を理解する上で、精神疾患の理解も欠かせません。
また、ここ最近は精神疾患に関連した領域からの出題も見られます。

今回のテーマは「統合失調症」です。
社会福祉士の国家試験を受けられる方も、共通科目「人体の構造と機能及び疾病」で精神疾患について出題があります。ぜひとも理解を深めておきたい内容です。

では始めましょう。
統合失調症の症状を大きく2つに分けると何になるでしょうか?

それでは確認です。

陽性症状、陰性症状

陽性症状と陰性症状のポイントを整理すると、次のようになります。

陽性症状…
幻覚、妄想、奇異な動作、滅裂思考によるまとまらない言動などがみられます。
陽性症状の「陽性」とは、通常はない状態が出てくることを意味します。
陰性症状…
感情鈍麻(周囲の出来事に対する反応が乏しくなる状態)や意欲の低下、会話の貧困さ、自閉など、精神機能の減退を反映する症状がみられます。
陰性症状の「陰性」とは、通常ある機能が失われていることを意味します。

続いて、統合失調症について、実際に出題された試験問題を通して、理解を深めていきます。

精神保健福祉士 第20回 問題2を解いてみましょう。

次のうち、気分障害よりも統合失調症が強く疑われる症状として、正しいものを1つ選びなさい。
  1. 考想化声
  2. 自殺念慮
  3. 罪業妄想
  4. 観念奔逸
  5. 思考制止

皆さん、正解の選択肢を選べましたでしょうか?
それでは、選択肢ごとのポイントをまとめていきます。

選択肢1:
これが正解です。考想化声統合失調症に多くみられ、自分の考えが声になって聴こえるという、幻聴の一種です。
選択肢2:
自殺念慮は気分障害のうつ病で多くみられます。
選択肢3:
罪業妄想は気分障害のうつ病で多くみられます。罪業妄想は、自分は罪を犯している、罪深い人間で家族などに迷惑をかけているなどと思い込む妄想です。
選択肢4:
観念奔逸は気分障害の躁病に多くみられます。観念奔逸とは、考えが次々と浮かび、その方向性も決まらずにどんどん出てくる状態のことをいいます。
選択肢5:
思考制止は気分障害のうつ病で多くみられます。思考制止は、思考や会話が停滞し、アイデアが浮かばず判断、決断ができなくなる状態をいいます。

この問題では、統合失調症だけでなく、気分障害(うつ病・躁病)についての理解も問われました。

気分障害(うつ病・躁病)で確実におさえておきたいものをいくつかまとめておきます。

●うつ病

抑うつ気分や興味・喜びの喪失などの感情の障害がみられます。
うつ病では、午前中に抑うつ気分が強く、夕方から夜にかけて改善するといった、日内変動もみられます。
身体症状として、食欲低下睡眠障害が典型的です。睡眠障害としては中途覚醒早朝覚醒がみられます。
うつ病では、次の3つの妄想がみられます。

  • 罪業妄想…
    自分は重大な罪を犯してしまっているという妄想
  • 貧困妄想…
    自分は財産を失い、貧困状態に陥ってしまうという妄想
  • 心気妄想…
    健康のことや病気のことを必要以上に気にかける妄想

●躁病

気分の高揚が特徴で、気力や活動性の亢進がみられます。
寝る間も惜しんで活動するため、睡眠時間が短くなります。
躁病では、観念奔逸のほか、行為心迫誇大妄想などがみられます。
行為心迫は、思いついたことを即座に行動に移すなどの制御の効かない行動の障害をいいます。
誇大妄想は、現実的な状況から逸脱し、自己を過大評価したり、実際には存在しない地位・財産・能力があるように思い込んでいる妄想をいいます。

精神保健福祉士の国家試験では、「統合失調症」の出題頻度は高く、様々な角度から出題されます。問題を解く→解説を読む の流れで理解を深めていきましょう。