各科目ワンポイントアドバイス権利擁護と成年後見制度

この科目は法令に関する問題や、成年後見制度の内容が多く、苦手意識を持たれていらっしゃる方も多いのではないのでしょうか。

今回のテーマは「日常生活自立支援事業」です。
この「日常生活自立支援事業」ですが、テキストで記載されているページはさほど多くありません。ですので、テキストの内容をしっかりとおさえておくことで得点に結びつけることが可能です。この科目を学習する上での突破口となれば幸いです。

では始めましょう。
日常生活自立支援事業の実施主体はどこでしょうか?

それでは確認です。

都道府県・指定都市社会福祉協議会

また、事業の一部を市区町村社会福祉協議会等に委託することができる、ということも合わせて理解しておきましょう。 続いて、「日常生活自立支援事業」の内容について、実際に出題された試験問題を通して、理解を深めていきます。

社会福祉士 第31回 問題81を解いてみましょう。精神保健福祉士の方は、第21回 問題81となります。

日常生活自立支援事業の利用等に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
  1. 成年後見人による事業の利用契約の締結は、法律で禁じられている。
  2. 法定後見のいずれかの類型に該当する程度に判断能力が低下した本人が事業の利用契約を締結することは、法律で禁じられている。
  3. 実施主体である都道府県社会福祉協議会は、事業の一部を市区町村社会福祉協議会に委託することができる。
  4. 実施主体である都道府県社会福祉協議会は、職権により本人の利用を開始することができる。
  5. 契約締結に当たって、本人の判断能力に疑義がある場合は、市町村が利用の可否を判断する。

皆さん、正解の選択肢を選べましたでしょうか?
それでは、選択肢ごとのポイントをまとめていきます。

選択肢1:
成年後見人との利用契約の締結は可能であり、法律で禁じられてはいません。併用利用するケースとして、遠方に住む親族等が成年後見人等に選任さている場合で、生活に必要なお金の出し入れなど、本人の利便性のため日常生活自立支援事業による支援が必要不可欠な場合などが考えられます。
選択肢2:
「保佐」や「補助」に該当する場合であっても、本人に利用契約を締結する能力があれば、契約を締結することは可能であり、法律で禁じられてはいません。なお、法定後見の類型は「成年後見(精神上の障害により判断能力を欠く常況にある人)」「保佐(判断能力が著しく不十分な人)」「補助(判断能力が不十分な人)」の3類型です。
選択肢3:
これが正解です。日常生活自立支援事業の実施主体都道府県・指定都市社会福祉協議会で、事業の一部を市区町村社会福祉協議会等委託することができます。
選択肢4:
日常生活自立支援事業は、契約にもとづき開始されます。このため、職権により開始することはできません。
選択肢5:
契約能力に疑義がある場合、医療・福祉・法律の専門家からなる契約締結審査会により利用の可否を判断します。

この問題では出てきませんでしたが、日常生活自立支援事業の対象者や援助内容をまとめておきます。

日常生活自立支援事業の対象者は、

  1. 判断能力が不十分であるために、日常生活を営むのに必要なサービスを利用するための情報の入手、理解、判断、意思表示を適切に行うことが困難であること
  2. 日常生活自立支援事業の契約を締結する能力を有すること

の2点を満たす人となっています。

日常生活自立支援事業の具体的な援助内容は、

  1. 福祉サービスの利用援助
  2. 日常的金銭管理サービス
  3. 書類等の預かりサービス

です。

日常生活自立支援事業も、社会福祉士を目指す上で理解しておきたい内容の一つです。さきほどの問題の中で理解できていない箇所がある場合、必ず復習しておきましょう。
権利擁護は学習しにくい科目の一つですが、今回取り上げた「日常生活自立支援事業」や「成年後見関係事件の概況」あたりから取り組んでみると良いかもしれません。苦手意識を持たれていらっしゃる方は、これらの内容で確実に1点を取るようにしましょう。