福祉の仕事人インタビュー【第9回】社会福祉士

社会福祉士 大橋 宣彦さん

社会福祉士 大橋 宣彦さん

くすのき苑 生活支援員

●プロフィール

城西国際大学在学中に自閉症の子ども達を支援するボランティアサークルに所属。卒業後は自閉症を含む知的障害者の入所更生施設くすのき苑で10年勤続。生活支援員として入所者の生活支援を行っている。
取得資格:社会福祉士

くすのき苑
●施設紹介

入所更生施設「くすのき苑」を運営している社会福祉法人いちいの会(http://www.ichiinokai.com/kusunoki.html)は自閉症児をもつ親たちが約12年間にわたる苦難の末に設立。知的障害者の生活の自立と地域社会への参加を目指して運営されており、利用者一人ひとりの状態に合った処遇に努めている。現在、入所更正施設だけでなく、グループホームやケアホームの地域支援事業、相談事業、生活介護事業所を行っている。

福祉の仕事に就こうと思ったきっかけはなんですか?

大学時代にボランティアサークルに入って自閉症の子ども達と交流することがあったんですね。その時にクレヨンで身体を塗りたくってしまったりだとか、川に飛び込んでしまったりだとか大変なこともありましたが、語弊はあるかもしれませんが面白いなと関心を持ったんです。それがきっかけで自閉症の人と一緒に仕事ができればいいなと思って、今の仕事に就きました。

くすのき苑の仕事内容を教えてください。

くすのき苑は入所更生施設なんですが、2寮に分かれていて、1つは自閉症の男性の寮で、もう1つは自閉症以外の知的障害者の男性・女性がいる寮なんです。利用者さんは下は23歳から上は60歳を越えている方がいらっしゃいます。
私は自閉症の男性が入所されている寮で仕事をしています。作業活動を支援するのとは別に、利用者さんの生活支援をする生活係というのがあるのですが、利用者さんの日常生活のサポートをしています。例えば、帰省の手伝いや掃除、親御さんとのやりとり、他の職員のバックアップなどをしています。もちろん他の職員と同様にお風呂に入れたりといった利用者さんとのふれあいや、泊まりの仕事もあります。

社会福祉士の資格を持っている方は施設にどのくらいいらっしゃるのでしょうか?

社会福祉士 大橋 宣彦さん

支援職員は正規の職員が25名、パートさんが6名、他に掃除の方などがいらっしゃいます。社会福祉士の資格を持っている人は4名いて、地域相談を行っている施設の方では精神保健福祉士を持っている方がいます。施設では地域との関わりが少ない為、社会福祉士の資格を活かして仕事をする事は難しいと思います。でも、今年は社会福祉士の実習指導者講習を受けてきて、講習でレジデンシャルソーシャルワークのお話などを聞いて、職場の調整役として役に立つことが社会福祉士の資格を活かすということなのかなと思っています。

仕事をする時に心がけていることは何ですか?

問題を抱えた利用者さんもいるので自分の心に波が起きることが多いのですが、その心の波を表に出さないようにしています。利用者さんと触れ合う際には、ある程度の合理的な考え方が必要だと思います。怒っても意味が無い時は怒らないようにして、代わりに問題行動について理由を考えて、じゃあ解決するためにはどんな対策があるかなということを考えるようにしています。どうしてこんな行動するのかなと考えて、色々な対応をしてみるんですね。もちろん、答えも無いですし、必ずしも全て解決するわけではないんですけど、少しでも改善していくことにやりがいを感じています。

子どもではなく大人を対象としていることや自閉症の方とふれあうのは大変なように思えるのですが実際はどうでしょうか?

大人であるから怖いだとか、自閉症の症状があるから大変だとかそういった事は感じたことはないです。それは「周りの環境がとても良くて、職員に恵まれているからだ」と思っています。職員はみんな物事を悲観的に考える人がいないんです。利用者さんのケース会議があるんですけど、問題行動に対して皆怒らないんです。怒ってもどうしようもないので、他の対応を一緒に考えるんです。ああでもないこうでもないと考えて、例えば問題行動をしなかったら1個20円の餠太郎というお菓子をあげたりだとか、他の行動に誘導してみるとか、職員とのふれあいを増やしてみるなどの取り組みをしてみるんです。僕はそういう怒らないで、問題行動を起こさないように利用者の事を考えて対策をするという考えが大好きなんです。困ったことがあれば職員同士で助け合ったり、何か大きなことがあっても笑いあったりすることがとても多く、職場にとても助けられて仕事しています。

最後に福祉の仕事を目指している人にメッセージをお願いします。

社会福祉士 大橋 宣彦さん

利用者さんへの取り組みや支援は職員皆の協力がないとできません。ですから、やさしさやテクニックだけでなく、コミュニケーション能力をつけておいた方がいいと思います。そして、福祉の仕事だからといって特殊な仕事ではありませんので、気負わずに目指してもらえればと思います。

(インタビュアー:ジェイシー教育研究所 木口 智惠)