福祉の仕事人インタビュー【第4回】支援相談員

支援相談員 若林 寛子さん

支援相談員 若林 寛子さん

介護老人保健施設 赤門なのはな館 支援相談員

●プロフィール

淑徳大学社会福祉学科卒業後2年間は一般企業でOLとして働く。その後、精神科のソーシャルワーカーとして勤務。ここ12年、介護老人保健施設の支援相談員として働く。現在の施設は4年半勤務。
取得資格:社会福祉士/精神保健福祉士/介護支援専門員

施設の様子

●施設紹介

「赤門なのはな館」は、赤門ヘルスケアグループ(http://www.akamon.info/)の運営する介護老人保健施設。
明るく家庭的な雰囲気のもと看護・介護サービスを行い、入所者および通所者の自立を支援し、家庭復帰を目指す。
認知症ケア、ターミナルケアにも力を入れている。

お仕事内容と、日ごろ心がけていることについて聞かせてください

こちらの施設は入所、短期入所、通所リハビリのサービスを行っているんですが、支援相談員として、そのサービスを使いたいという方への説明を担当しています。ご自宅にいらっしゃる方や病院にいらっしゃる方には訪問して状態をおうかがいして来ます。ベッドに寝ていらっしゃるのか布団なのか、左右どちら側から起き上がるのかなど、日常の生活習慣や食事の好みなども把握してきます。
利用者やご家族にとって最初の対応窓口になるので、第一印象で決まってしまうというようなところがあります。私と会って話をすることに、この施設が信頼できるかどうかが掛かっている。そもそも望んで施設を「使いたい」と思って来る人はいないはずなんです。必要に迫られて仕方なくいらっしゃるような場所なので、本当は嫌だし不安なはず。だから、何をそう思っているのかを手探りでつきとめて、不安に思っていることを取り除くためにどんな説明が必要なのか、を考えなくてはいけないんです。多くの利用者の方があまりご自分のことを語らないので、コミュニケーション能力を高める必要があります。やはりその方の要望に応じた個別ケアを行うためには、コミュニケーションが欠かせないですから。

お仕事のやりがいについて、どうお考えですか?

いろいろな病気やけがをしても、その人がその人らしく暮らしていけように、その支援のために人に寄り添えるというのは、とても自分自身の勉強になります。何もかも自分の肥やしになっている。それをまた次の利用者の方に接する時に生かせると思っています。
この事業所はスウェーデンに派遣してもらえるという研修があって、私も1年前に行けたんですが、勉強しようという意欲があればチャンスに恵まれます。学び続けることがとても大事だと思っています。
私は、20代の頃利用者とそのご家族の方に「あなたにお任せして良かった」と言われて嬉しかったことがありました。30を過ぎた頃の研修で、ケアマネージャーは存在感が無い方が良い、「私にお任せ下さい」というのは間違っていると言われて衝撃を受けました。利用者が自分で考えて自分で選んで今の生活をしていると実感できるような支援にならなくてはいけない、そう教わりました。大学の講義で「自己決定の原則」を学んで、そんな事は当たり前の基本と思っていたのに、「あなたにお任せして良かった」と言われて喜んでいたなんて、大切な基本が実践できていなかったと気付かされ、失格だったと反省しました。
毎日、目の前にいる利用者の方々に喜ばれることをして、同時に政策などの方向性を睨みながらやっていかなくてはいけない。とにかく毎日勉強になります。

福祉の仕事に就く人に求められる資質について、どう思われますか?

施設の様子

私が一番大事にしていることは、自分を知ること、だと思っています。自分がどんなことに対して受け入れやすく、どんなことに対して否定的なのかをわかっていないと、対人援助なので利用者の方に見抜かれてしまう。自分がどんな人やどんな考え方を受け入れることができて、受け入れるのが難しいのかを理解しなければならないと思います。受容や傾聴の原則というけれど、実はなかなかできていない、という自分に気づかなくてはいけないんです。まず、他者を理解するためには自分を理解して、それと向き合うことが大事だと思います。
それから、できるだけ学生のうちに接客業のアルバイトをしておいた方がいいですね。社会人になってしまうと、ボランティアはできても、なかなかアルバイトはできないですよね。医療・福祉の現場もホスピタリティという言葉が使われて久しいけれど、まだまだ他のサービス業と比べると甘い。お客さんをもてなすということはどういうことなのか?利用者の方は、皆さん遠慮しながら利用されるけど、本来そうではないはずです。よりよいサービスを使いたいと思うのが利用者として当然。視野を広げてほしい、いろんなことを知ってほしいと思います。

最後に、福祉の仕事をめざす人に一言お願いします

利用者が喜んでくれることが自分の喜びになる人であれば、本当に楽しい仕事だと思います。是非、一緒の仲間になりましょう。受験勉強に必要な知識というのは、私達がどれだけの引き出しを持っているか、提案できるか、ということにつながります。利用者の方の利益不利益を左右することになるので、頑張って勉強していただきたいと思います。

(インタビュアー:ジェイシー教育研究所 阿宗 大輔)