社会福祉士国家試験情報第30回 社会福祉士国家試験 結果速報・分析
正答と合格基準について
今回の試験結果の概要は次のようになります。
受験者 | 43,997人 |
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合格者 | 13,288人 |
合格率 | 30.2% |
合格基準点 | 99点(150点満点中) |
不適切問題 | なし |
第30回 社会福祉士国家試験 |
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国家試験正解一覧 (PDF) |
合格基準点・合格者数など (PDF) |
受験者数は前回(第29回)より2,000人近く減少しましたが、合格者数は1,500人近く増加し、全体の合格率が30%を超える高い水準となりました。
さて、受験された多くの方が気になっていた合格基準点ですが、信じがたい結果となりました。99点、得点率で66%です。ちなみに、共通科目免除の場合の合格基準点は43点(67点満点)であり、こちらも6割を大きく上回る得点率でした。
社会福祉士の国家試験では、合格基準の目安を6割としています。難易度で多少の調整はあるとはいえ、ここまでの高い水準となったのは今までに例がありません。これを裏付けるのが、昨年(第29回)の介護福祉士の試験結果です。全体の合格率が72%と高い水準となっていましたが、合格基準点は75点(125点満点中)でした。これは得点率にすると60%ちょうどです。この介護福祉士の結果を考えますと、今回の社会福祉士の国家試験でも、合格基準点は90点あたりに落ち着くのではなかろうかと信じていました。
多くの方々が6割超えを目標に、日々試験勉強に取り組み国家試験に臨んでいます。今回の試験では、自己採点で良い点数が取れた、という声も多く聞かれました。また、受験された人の中には、今回こそは合格できると信じ、今日という日を迎えた人もいるはずです。しかしながら、問題が多少容易であったからといって合格基準点を大幅に引き上げたという試験結果に対し、強い疑念を感じずにはいられません。
ここ最近の合格者数を見ても、1万数千人で安定しています。合格者数を一定に保つために合格基準点を著しく変動させるようなことをするのであれば、上位何人であったり、上位何%というような基準を新たに明示しても良いのではないのでしょうか? 毎年の認定数=合格者数をあらかじめ明示していただく方法もあろうかと思われます。また、所管こそ違え、同様な福祉職である保育士試験の場合は、各科目(試験内容の難易差があっても)6割以上得点すれば必ず合格になりますが、難易差による損得が生じたとしても、合否という最も公正であるべき結果に対して疑念は生じません。6割を超える点数を取っても不合格となってしまう方が続出したことは残念で仕方ありません。
私ども赤マル福祉としましても、受験者全体のレベルの底上げ、願わくば合格率そのものの向上に寄与したいと思い、国家試験に受験される方々をご支援してきましたが、今回の試験のために努力を積み重ねてきた人たちの想いを踏みにじる試験結果であったと言わざるを得ません。
5年前の(今回とは逆に著しく合格基準点が低かった年の)試験結果講評でも申し上げましたが、受験者の皆さんの試験に備えて励まれた努力と福祉職を目指される社会的使命感が報われる試験制度であることを願うばかりです。
なお、国家試験終了直後に、赤マル福祉が発表した解答速報と、試験センターから正式に発表された正解の間には、一問の差異も生じませんでした。
結果講評
【共通科目】
共通科目の問題数は全83問で、科目別の問題数も例年通りであった。また、「2つ」選ぶ問題は2問(問題18、問題77)出題され、昨年より更に1問減少した。今までで一番少ない出題数であり、見落とさないよう注意が必要であった。なお、単文事例については全部で11問出題され、昨年より2問増加した。
問題内容については、昨年に引き続き、見慣れない語句や内容からの出題が少ない傾向であった。その一方、難易度の高い新傾向の問題が出題されるのも例年通りであった。これらの問題で多くの人が苦しめられると思うが、正答率が低いものが多く、合否を分ける問題であるとは考えにくい。これらの問題に振り回されることなく、確実に正解すべき頻出問題で取りこぼさないようにすることが、合格するためには必要不可欠である。
共通科目全体を概観すると、比較的よく出る語句や内容であっても、今までとは異なった視点からの出題がみられた。これらの問題に適応できたかが試されるものといえる傾向であり、難易度については例年並み~やや難化したものと思われる。
【専門科目】
専門科目についても、問題数は全67問で、科目別の問題数も例年通りであった。「2つ」選ぶ形式の問題については10問出題され、昨年より1問増加した。また、単文事例については全部で15問出題され、減少傾向にある。科目別にみて注目すべきは「更生保護制度」であり、第24回以来の出題であった。
出題内容については、例年の傾向を踏襲したものであり、大きな変化はみられなかった。共通科目と同様、見慣れない語句や内容からの出題が少ない傾向であった。また、専門科目については、テキストや過去問を通し、国家試験に合格するために必要な事項を身につけられたかを問うものが多くを占めていた。
長丁場の試験であり、集中力が途切れる状況の中での試験になると思われるが、そのような状況の中でも正解となる選択肢を見抜くためにも、過去問学習が欠かせないといえる出題内容であり、この点においても例年通りの傾向であった。
専門科目の問題を概観すると、専門科目全体を通しての難易度については、大きな変動はみられず例年並みであったものと思われる。