社会福祉士国家試験情報第26回 社会福祉士国家試験 結果速報・分析
正答と合格基準について
新カリキュラムとなって、5回目の国家試験となりました。今回の試験結果の概要は次のようになります。
受験者 | 45,578人 |
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合格者 | 12,540人 |
合格率 | 27.5% |
合格基準点 | 84点(150点満点中) |
不適切問題 | なし |
第26回 社会福祉士国家試験 |
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国家試験正解一覧 (PDF) |
合格基準点・合格者数など (PDF) |
合格基準点については、一昨年までのような、例年通りの水準となりました。合格基準点の推移を見ても、前回の結果が異例であったことがうかがえる結果でした。また、受験者、合格者ともに大幅に増加していますが、これは、前回の合格者数が減ったことが大きな要因の一つと考えられます。
試験問題の難易度をみても、昨年のような難問・奇問が大幅に減り、一昨年までの、いわゆる例年並みの難易度に戻りました。試験委員の諸先生方には、問題内容を改善していただいたことには敬意を表します。きちんと学習を積み重ねた方が高得点を取れる試験であったといえます。
問題の内容をみると、社会福祉士として必要な知識や技術などを問うものが多く出題されました。その一方、例年のこととはいえ、一部に難問・奇問があったり、正解速報で見解の分かれてしまう問題もあったりします。しかしながら、確実に正解すべき問題で点数を積み重ねることが何より重要です。このためにも、過去問での問題演習とテキスト等での復習を通し、点数を積み重ねるトレーニングをしっかりと行ったか否かが勝敗を分けたといえます。試験の難易度によらず、国家試験に合格するための学習法は不変である、といえる試験結果でした。
正解と赤マル福祉自動採点で見解が異なったものについて
【共通科目】
・問題32
速報では、正解を1としていました。ロスの地域組織化説なのかニューステッターのインターグループワーク説なのか、選択肢文の記述からは非常に迷いました。また、選択肢3の「継ぎ目のないサービス」という記述が正しいか否かを判断することが難しく、判断を誤ってしまいました。
正確に知識を理解できているかが問われました。
・問題40
地域福祉におけるニーズ把握について、「より適切なもの」を「2つ」選ぶ問題でした。選択肢文を読んでも○×の判断が難しいものが含まれていました。
選択肢1が適切なことは明らかなのですが、選択肢2と選択肢4の判断は難しかったといえます。
選択肢2ですが、「一部の回答者のニーズが強調され」すぎないように注意することは適切といえます。その一方、「聞き取り調査は避けて」という内容は適切とはいえません。
一方、選択肢4ですが、「在宅で暮らす高齢者の潜在的なニーズを把握」するには、ふれあい・いきいきサロン活動に参加「していない」方々の状況も把握する必要があると思われます。
どちらが「より適切」であるかを判断するのは難しいのですが、この問題の意図としては、「聞き取り調査は避けて」という記述が不適切であることを見極められたかが問われたものと思われます。選択肢文を吟味するとともに、出題者の意図をくみ取る力も求められました。
【専門科目】
・問題95
中国人のMさんへの初回面接における対応についての事例問題でした。
選択肢1が適切なことは明らかなのですが、選択肢2と選択肢5の判断は難しかったといえます。
事例文より「Mさんは最近家に閉じこもりがち」とあることより、孤立の解消が必要と考えられます。選択肢2ですが、初回面接において日本語教室への参加を勧めることが適切とはいいにくいですが、正解速報の時点では、簡単な日本語を身につけ、近所との交流を図れるようにする方がより適切、と判断してしまいました。
一方、選択肢5ですが、「月に2回」という頻度が適切か否かの判断は難しいと思いますが、「中国帰国者たちが集うサロン活動を紹介」する方がより適切といえる内容でした。
この事例文中の説明だけでは正解を見つけ出すのは難しい内容といえます。
・問題116
選択肢1、選択肢2、選択肢4で判断に迷いました。
与えられた問題文から、援助者であるN医療ソーシャルワーカーの視点からAさんに対して行った援助内容をポイントごとに整理したものである、と見極める力が問われました。与えられた問題文だけでは判断が難しいかもしれませんが、出題者の意図をきちんとくみ取る必要がありました。
・問題139
正解速報の際にも選択肢1と選択肢3で迷いました。
出題意図としては、児童発達支援センターの利用を希望する場合の申請先が市長村である、ということを理解できていたかを問うものであったといえます。事例文中の記述からも、受験者ひとり一人がもっている価値観によって左右されてしまうような内容であり、判断に迷ってしまったものと思われます。
結果講評
【共通科目】
今回の試験は、昨年の形式を踏襲したものであった。共通科目の問題数は、昨年と同様83問であった。昨年に引き続き、正しいものを「2つ」選ぶ問題が出題された。昨年は4問であったが、今回の国家試験では7問に増加している。また、例年と同様、単文事例も出題された。問題数については、「低所得者に対する支援と生活保護制度」で昨年より1問減ったものの、他の科目は昨年と同様であり、全部で12問出題された。
出題内容については、毎年出題されるような頻出問題だけでなく、テキストや過去問で見たことのない、難易度の高い問題もかなり出題された。これらの難問・奇問は正答率が低くなることが予想される。難易度の高い問題が多く出題されてしまう傾向についても、ある意味、昨年の傾向を踏襲したものといえるだろう。
合格する上では、社会福祉士になる上で確実に理解すべき内容をしっかりとおさえ、毎年出題されるような問題については、過去問やテキストでの学習を通し、確実に正解すべき問題でミスをしないことが勝敗を分けることには変わりはない。とはいえ、受験をされた方々にとっては難しく感じるといった状況は例年通りといえるだろう。
【専門科目】
専門科目についても、問題の出題数や出題形式については昨年と同じであった。また、昨年と同様、正しいものを「2つ」選ぶ問題が9問出題され、昨年よりも1問増加した。共通科目でも「2つ」選ぶ問題が昨年よりも増加しているので、今後の対策が必要といえる。また、単文事例問題は全部で19問出題されたが「児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度」で昨年よりも1問減少した。 出題内容については、昨年のような見慣れない語句や出題内容については大幅に減少し、毎年出題されるような頻出問題が増加した。昨年のような難問・奇問が勢揃いしたことへの反省を踏まえ、改善された結果といえるものであった。 専門科目全体としては、共通科目よりも取り組みやすい内容であり、午前の共通科目で失敗してしまったとしても挽回できた人も多かったのではないだろうか。過去問やテキストをしっかり学習された方にとっては、かなりの得点が期待できるものと思われる。