精神保健福祉士国家試験情報第15回 精神保健福祉士国家試験 科目別分析【専門】
科目別分析【専門科目】
精神疾患とその治療
出題数は10問であり、昨年までの「精神医学」に対応する科目でした。正しいものを「2つ」選ぶ問題が3問出題されており、面食らった方も多かったのではないでしょうか。
出題内容を見てみますと、関連する領域について幅広く理解できていたかが問われるものでした。感覚失語(問題1)、心因が主たる原因とされる精神疾患(問題2)、シュナイダーの一級症状(問題5)などは、差がつきやすい問題となったと思われます。中でも、精神疾患の治療に関する問題が3問続き(問題6~8)、治療についての理解が重視される出題内容となりました。また、問題9のうつ病患者への対応については、確実に正解したい問題の1つです。問題10では、「医療観察法」についての問題が出題されました。この科目で出題されるのは予想外であり、正しいものを2つ選ぶ形式でしたが、過去問をしっかりと学習していれば正解できる内容でした。
全体的には、今までと出題傾向が変わったものも数問見受けられましたが、テキストの内容をしっかりとおさえていれば正解できる問題が多くを占めました。難易度は例年並みであったといえます。
分析: 赤マル福祉事務局
精神保健の課題と支援
出題数は10問であり、昨年までの「精神保健学」に対応する科目でした。出題内容としては、精神保健および関連する領域だけでなく、精神保健以外の領域からも出題されており、多岐にわたる内容でした。
特徴的な出題傾向として、統計データ問題が5問出題されています。出題内容としては、我が国の平均睡眠時間(問題11)、高齢者虐待(問題13)、自殺(問題15)、認知症の国際動向(問題19)、我が国の精神保健統計(問題20)でした。問題11や19は過去の出題実績が全くなく、正解を導くのは難しかったのではないでしょうか。問題13は社会福祉士の試験では出題されやすい内容の1つですが、精神保健福祉士にも高齢者虐待についての理解が必要、という出題意図が感じ取れるものでした。問題20については、過去問を通してしっかりと学習されたかで差がついたといえます。統計データ問題以外についても、問題12のビヨンドブルー、問題17の日本生産性本部など、見慣れない用語がかなり出題されたのも、今回の特徴といえます。
この科目全体を通してみると、過去問やテキストだけでは対応できない問題が多く、難易度はかなり高いものと思われます。
分析: 赤マル福祉事務局
精神保健福祉相談援助の基盤
この科目からは15問出題されました。また、3問1セットの事例が2セット(計6問)出題されています。
出題内容としましては、昨年までの「精神保健福祉援助技術」の一部に対応したものであり、精神保健福祉士の役割や精神化ソーシャルワーカーの歴史、ノーマライゼーション、権利擁護、他職種連携など、相談援助の基盤となる内容が問われました。中でも、IFSWのソーシャルワークの定義(問題22)や「4つの倫理原則」(問題28)など、ソーシャルワーカーとして確実に理解すべき内容なのですが、細かなところまで理解していなければ正解を得ることが難しい問題でした。
また、3問1セットの事例問題では、活用すべき社会資源や、援助技術に関する用語の理解が問われました。問題33では入院形態について問われていますが、事例文の内容をきちんと理解した上で回答する必要があり、総合力が問われました。
精神保健福祉士として確実に理解すべき内容が大半を占めてはいるものの、正確な理解を必要とするものや、細かな理解を必要とするものも多く、例年よりも難易度が高くなっているものと思われます。
分析: 赤マル福祉事務局
精神保健福祉の理論と相談援助の展開
この科目からは25問出題されました。また、3問1セットの事例が4セット(計12問)出題されました。この科目でも、事例問題を通し、相談援助を実践する上での資質が求められました。
出題内容は、精神保健福祉に関する歴史、精神障害者の定義、精神科リハビリテーションや精神科専門療法、精神科チーム医療、インテーク、様々なアプローチ、グループワーク等でした。昨年までの「精神保健福祉援助技術」と「精神科リハビリテーション学」が合わさった出題内容となっており、広い範囲から出題されました。
事例問題では、クライエントへの適切な対応方法についてはもちろんのこと、適切に社会資源を活用したり、家族支援についても問われ、バリエーションに富んだ出題内容でした。また、精神保健福祉士の視点からの提案(問題51や58)、電話での対応(問題53)、ボランティアに対する期待(問題60)なども出題されており、これらは実務に即した内容であったといえます。
この科目全体を通してみると、過去問やテキストの内容をしっかり理解できていれば対応できる問題も多く、難易度は例年並みであったものと思われます。
分析: 赤マル福祉事務局
精神保健福祉に関する制度とサービス
この科目からは12問出題され、3問1セットの事例が1セット(計3問)出題されました。
昨年までの「精神保健福祉論」に対応する内容であり、実際に相談援助業務を行うにあたり、理解していなければならない事項を中心に問われました。
問題61の精神医療審査会、問題62の精神科病院に入院している精神障害者の通院・面会など、例年よく出題された内容がかなり見られました。問題63では、平成23年に改正された障害者基本法について問われましたが、改正内容をチェックできていたかで差がつく問題になったと思われます。また、問題67から69では更生保護制度に関する問題が3問出題されたことも注目すべき点の1つであり、保護司や精神保健参与員などについてもきちんと学習できていたかが問われました。また、事例問題では3問すべて社会資源についての理解が問われており、関連する制度や施策などについての理解が求められました。
この科目全体を通してみると、昨年までの「精神保健福祉論」を踏襲した内容が大半を占めており、過去問やテキストをきちんと学習していれば対応できる問題も多く、難易度は例年並みであったものと思われます。
分析: 赤マル福祉事務局
精神障害者の生活支援システム
この科目からは8問出題され、3問1セットの事例が1セット(計3問)出題されました。
出題内容としては、精神障害者の現状や就労支援などが中心となりました。新カリキュラム対策が最も困難な科目と感じていらっしゃる方も多かったのではないでしょうか。実際の問題を見ても、問題74の統計データ問題、問題75の精神障害者の入居施設及び居住支援の歴史、問題77の精神保健福祉業務など、難易度の高い問題が多くみられました。また、事例問題は就労支援サービスについての内容で、就労支援にかかわる機関や職員、関連する事業や制度をきちんと理解できているかが問われました。
この科目に限らず、今回の国家試験では、精神障害者を実際に援助する場合にどうするか、といった視点からの出題が多かったように思います。幅広い知識と実践力を兼ね備えた総合力が必要とされました。
この科目全体を通してみると、例年までの出題傾向とは異なった内容が多く、戸惑った方も多かったと思われます。問題の難易度が高いことに加え、問題数が8問と少ないので、0点を取らないよう注意が必要な科目でした。
分析: 赤マル福祉事務局