福祉の仕事人インタビュー
福祉の仕事人インタビュー5
社会福祉士 紫藤 千子さん
紫藤社会福祉士事務所 社会福祉士
●プロフィール
大学卒業後、乳児院で保育士として働き始める。高齢者福祉に関心が移り、特別養護老人ホーム、小規模多機能施設等で働きながら資格取得。日本社会福祉士会の独立型社会福祉士養成研修を受け、独立型社会福祉士として平成17年に社会福祉士事務所を開所し現在に至る。熊本県社会福祉士会の理事も務めている。
取得資格:社会福祉士/介護福祉士/介護支援専門員
社会福祉士事務所を開かれた動機と、どのようなお仕事をされているのか教えていただけますか?
地域の中に特養の相談室みたいなものがあってもいいんじゃないかって思ったんです。ちょうど地域包括のような考え方も出てきた時だったんですけど。誰でも思ったときに気軽に相談できる、ウチはここまでですとか業務の制限がなくて…特養の相談室なんかそうですよね。職員だって利用者さんだって、思った時に入って来られるからいつも扉を開けてます、っていうような感じで。だからご家族も来られて愚痴を言ったり…そういったものがあればいいなって思ったんです。
でも、よくどうやって食べているのか?って聞かれるんです。(笑) 最初は、地域の方も社会福祉士が何をやるのかがわからないようでしたし、半年くらいして、少しずつ依頼が入るようになりました。障害者・高齢者の方の相談から子育て相談まで、幅広い相談をお受けしました。丁度成年後見制度が広まってきてからは、成年後見の受任がだんだん増えてきました。それに、介護支援専門員の方々へとか、地域包括支援センターとか老人会のようないろんな所で、成年後見の話をするっていう依頼がとっても増えました。あと、勉強会やシンポジウム、そういったところでの講師としての講演や、学校の非常勤講師としての仕事、最近では文章を書くような機会も出てきました。熊本県下どこからでも、お声がかかれば動いていますよ。
独立型のメリットはどういうところにありますか?
誰も私を止めないってことですかね。(笑)利用者の方に関わろうと思ったら、納得がいくまで相談援助ができる。どうしても機関に所属している時は、やっぱりできないこともあるわけなんですよね。例えば利用者の方が病院に入院していると、亡くなることがあるんです。そういう時に一人で亡くなられるのが嫌だったんです。だからって、私が一晩中傍に着いていられるか、それはできないだろう?って上司と話したことがあるんですよね。私がそこまでしてるから、他の相談員もするかって…それは違いますよね。残業をいっぱいすることが良いとも思えない。だから葛藤があって、ここまでしかできないっていう線引きがあった。でも今は、線引きはないです。そこがやりがいでもあり、ちょっと困ってるところでもあるんです。現実的にできることとできないことがある。自分でそのバランスを取らないといけないと思ってます。
熊本県社会福祉士会の理事もなさっていらっしゃいますが、どのような取り組みをされているのですか?
社会福祉士会が提供できるものは、研修だと思ってるんです。新しい情報や、社会福祉士は活動の場が幅広いので、いろんな研修を提供して、質を上げなくてはならないと考えています。入会率が30%をきっているので、何とかして会員を増やしたいですね。参加したくなるような会を作らないとですね。
私は、熊本県社会福祉士会の中で、地域包括支援センターを担当してる理事なんです。高齢者虐待の問題に対応してるんですが、それに対して弁護士会と司法書士会と社会福祉士会とで対応専門職チームを組むっていう取り組みをやってます。きちんとした形にしたいと思ってます。私も、各地域包括支援センターから虐待の相談を受けるんですよ。社会福祉士会として、事務所として、っていう線引きが難しいんですけど…独立してるから所属がないわけでしょ、だからすぐ動ける、自由が利くっていうことはあります。でもそれじゃダメだと思ってるんです。皆が利用できるような、その(虐待対応の)システムを作りたいんです。
これから福祉の仕事をめざされる方へのアドバイスをお願いできますか?
学生の方は、本当にいろんなことを経験しておいてほしいと思います。勉強だけ、福祉だけの人にならないで欲しいなって思います。いろんな経験のすべてが、専門職としての糧になるので、積極的にいろんなことに関わってほしいなって思います。福祉の仕事は、一人ひとりの人生に関われる仕事なので、関わった人が笑顔になられると嬉しいし、思った方向に歩んでいかれるのをサポートできたって思えるのはすごく嬉しいので、沢山の人と関われる楽しい仕事ですよ!と思って頑張ってもらいたいですね。
(インタビュアー:ジェイシー教育研究所 堀 洋一)